日本×南ア戦 生観戦後の感想。Facebookから転載。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

日本×南ア 生で観た状態での感想、分析。今から録画を見直す前に。

 ここまで日本戦は、対ロシア戦だけテレビ観戦、グループーリーグあとの三試合、アイルランド、サモア、スコットランド戦は、スタジアムの二階、三階席の上の方から観たので、密集の細かなところは分からなかったが、全体として起きていることはよく把握できた。

 ところが、なぜか、今日だけは、ゴールエリア脇の、一階席のかなり前の方の席。選手の顔までよくわかるかわりに、試合場全体で起きていることが把握しにくい席だった。
 子供の高校の試合を、観客席の無いどこかの高校のグランドで見る、全体が見通せない、そんなことを思い出させる視界、視野だった。そんな状態で見た印象、感想と分析。

 ティア1国のグループステージ、対ティア2戦というのは、相手の分析・対策よりも、自分の国の戦力の調子を見る戦い方をする。
 特にレギュラー以外の選手で、調子の良さそうな選手をチェックして、決勝トーナメントへの準備にする、という意識が強い。前回大会、日本が南アに勝てたのは、南アがそういう戦い方をしたからだ。
 主力を起用する場合も、相手対策の細かな戦術を駆使するというより、自国の得意とする正攻法、正常運転をして調子を上げていくという意識が強い。今大会、アイルランドに勝てたのは、アイルランドが、そういう、素直な正攻法の戦い方をしてくれたからだと思う。

 スコットランド戦が素晴らしかったのは、その勝利に価値があると思うのは、スコットランドが日本を徹底的に分析し、本気で勝ちに来たのに対して、日本が、本当に素晴らしいラグビーをして、勝ち切ったからだ。

 今日の南アフリカは、日本の強みを消す、日本の弱点を突く、本気の、決勝トーナメントの戦い方をしてきた。

 「日本の強みと弱点」。南アは、どうついたか。

①田村を狙う。これは、前大会の南ア戦で、日本が、南アのスタンドオフ(天才肌だが体が小さい)パトリック・ランビーを、徹底的に狙ったのと同じことを、田村に対してされた。田村が球を持ったらきつく当たる。攻撃のときは田村に向かってアタックしていく。

結果として、田村は前半でかなり傷んでいて、これまでのようなパフォーマンスを出せなかった。

②田村の、日本のパスのクセを分析して狙う。これは細かなことはもうすこしいろいろな試合を見直さないと分からないが、流→田村→後ろを回して、その外に長いパス、というここを狙って詰めてくる。

②-1だから、グラウンドの端のセットプレーから始まったプレーの場合、グラウンド左右の真ん中まで展開したところで、がっつりと捕まる、攻めが止まってターンオーバーされる。

②-グランド中央あたりから始まった攻めの場合、グラウンドの端、ウイングのところでインターセプトされて
鋭く逆襲される。

③モールを多用する。モールは同人数では反則なしでは止められないくらい強さに差がある。反則したら、タッチキックで前進して、ラインアウトでまたモールの繰り返し。
(スクラムも同様。スクラムで圧力をかけ、反則を誘う。)

③-2 日本はモールで反則しないで止めるためには、バックスも入らないと止まらない。入ると、外側が人数不足。モールで攻める、日本をモールに人数かけさせてから、外に回すと、最後のウイングのところで数的優位に必ずなる。

ウイングの能力、速さでは互角でも、からだの強さのところで、福岡側なら南アが優位に立てる。松島側であっても、数的優位があれば、トライまでいける。

④地面に置かれた球の攻防では、体格と当たりの強さで、日本より南アがかなり強い。そこに集中する。日本選手全員とは言わないが、タックルされてから、ボールを置く、それをすぐに他の選手がフォローする、という一連の流れに弱点をみせることがある。そこを徹底的に狙う。
ただし、前回ワールドカップで敗因となった、地面の球の攻防で反則をしない。その規律を守る。

前半のムタワリアがシンビンの時は、作戦をうまく遂行できなかったが、15人対15人の時間帯は、こうした作戦を完璧に遂行した。

もうひとつ、松島、福岡、山中にハイパント、キックを蹴ってそこを狙う、という作戦もあったが、これは、日本の三人のキャッチ能力が高かったために、そこから大きく崩されることは無かった。とはいえ、松島、福岡の守備負担が重くすることで、攻撃のための体力、瞬発力を削る、という意味で、これも意識して使っていた。

日本は、前半のうちは、なんとか耐えて、ロースコアの戦いに持ち込んだが、こうした南アの作戦は、日本選手一人一人に、かなり大きなダメージを与えたため、後半は、ついに、南アの攻撃に耐えられなくなってしまったのだった。

 日本は、世界の強豪国ティア1上位国が本気で対策をしてきたとき、強みをつぶし弱点を徹底的に突かれたときには、まだ、互角には戦えない、ということがはっきりした。(まあ、アイルランドでも、NZとはそうなっちゃったのだから、恥じることは無い。)
 前回大会では、「世界の強豪国が、全く対策をしないくらい舐められているので、そういう油断してくれたときには勝てる国」だった。
そこから、「世界の強豪国でも、本気で準備対策をしないと勝てない国」になった、という意味で、驚くべき大進歩だった。
 シックスネーションズの中の、スコットランドの位置づけを考えれば、「ティア1の中の下位の国とは全く互角の国」という位置づけを日本は得た。しかし、ティア1の中のさらに上位の国が、本気モードになったときには、まだちょと差があることも明らかになった。

 ここから先のワールドカップは、ティア1上位の国が、本当の本気になったとき。、ラグビーはどれくらいすごいことになるか、をこの目で見る、そういう楽しみが待っています。日本が負けてもワールドカップは続くのです。

追加コメント
東京スタジアムから、狛江駅に向かうシャトルバスの中で、妻と、「五番目男子の、高校最後の試合の後の気持ちに似てるかな、(ハンドボールで、惨敗で終わった)。二番目の時とは、ちょっと違うよね、(ラグビーで:県のシードになっていて、もうひとつ勝てば松島幸太郎のいた桐蔭とあたるところで負けちゃった。)。長男の最後の試合は(ラグビー)、三男の最後の試合は(柔道)と、なぜか、子供たちのラストゲームを見た後の感想と較べながら帰ってきました。そういう自分の子供の試合でさえ、「どう勝つか、なぜ負けたか、どうしたらいいか、これからどうするのか」、そういうことをずっと考えてきたから。スポーツの感動というのは、そういうことと真剣に向き合うところにしかない、と思うから。「感動を与えるため」ではなく、「勝つ」ために、「強くなる」ために、選手はやっていると思うから。「感動をありがとう」みたいなことを書く前に、まず、試合の中身、分析、考察をしたいと思ってしまうのが、僕の変なところだと思う。



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