ワールドカップ準決勝NZ×イングランド、生観戦直後、帰りの電車での備忘録的試合内容分析。Facebookから転載。

帰りの横浜線に乗車。生観戦後感想。エディさんの二枚司令塔作戦、立ち上がりから炸裂。イングランドのフォワードの体格と強さと走るスピードとタックルが、みたことのない強さ。3番シンクラー、4番イトジェ、ブニポラ兄弟、。何より、若いフランカ-コンビの、カリー21歳、アンダーヒル23歳。ビッグタックル、ジャッカル、圧倒的でした。スクラムもモールも、ラインアウトもイングランド優勢。オールブラックスのチャンスは、球があっちこっちとターンオーバーが連続してカオスになった瞬間だけ。だが、そうなってもタッチライン際まで回されたときまでに、なんとか人数が足りているイングランドのディフェンス、すごい。ジョニーメイ、ワトソンの両ウイングは、今日は守備の貢献が素晴らしかった。タッチライン外に弾き出すタックル連発。そこからのラインアウトが強いから、イングランド優勢の流れが止まらない。何度もTMOでトライを取り消されても流れを渡さなかったのもすごい。先発に30歳を越えた選手がほとんどいない若いチームなのに、エディさんの意識づけ、危機管理完璧でした。後半、両チームとも交代大量にすると、イングランドはベテランがどんどん入ってきて、ゲームの流れをコントロールするのに対し、オールブラックスは、戦力ダウン、戦術的意思統一が低下するので、可能性がどんどん減っていく。イングランドの完勝でした。

ここまで言及しなかったトゥイランギも素晴らしかった。

電車ついたので、ここまで
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準決勝 イングランド×NZ観戦記録、試合内容分析じゃなくて、ワールドカップ夫婦で体験日記。

試合の中身じゃない、ワールドカップ体験としての、今日のいろいろ備忘録。前夜、イングランド×オーストラリアを見直しながら選手チェックしていて、イングランドの3番シンクラーが、顔と言い、試合中の仕草といい、長男にすごく似ていることを発見した。(長男は2番だったからポジションは違うのだが)。
 
 妻はどちらかというとオールブラックスを応援するつもりで、全身黒ずくめで出陣。(といってもレプリカジャージとかじゃないから、「法事?」というか「昔のDCブランドのおしゃれ?」っていうか、とにかく黒ずくめ。)
イングランド×フランスが中止になったので、まだ生イングランドは見ていないし、妻はTVではそんなに真面目に見ていないので、「なじみがあるのは、オールブラックス」くらいの理由でのNZ応援モード。
 
 僕は、エディさん応援もあるし、今回のNZにはそれほど強い思い入れも無いので、「イングランド応援」モード。
 行きの電車の中で「イングランドの3番、あっくん(長男の我が家での呼び名)に似てるんだよ。」と教えてあげる。
 会場の近くで、鎖帷子に身を包んだ「円卓の騎士」コスチュームの三人組発見。日本人がちょんまげとか鎧兜で応援する感じなのだと思う。妻がスマホで写真撮ってた。
 
 席に着くと、隣はオーストラリア人のご夫婦。60代くらいかな、ぼくらよりちょっと年上かなあ。奥さんは、うちの奥さんよりもさらに恰幅が良い。ご夫婦でビールがんがん飲んでいたので、妻は「カルビー枝豆スナック」を一袋まるごと進呈。「おいしい」と喜んでいました。「ラグビーは好きなの?」と聞かれれ「ええ、うちの息子がラグビープレーヤーだったので。オーストラリア×ウェールズも見ましたよ」と言ったら「私たちは、オーストラリア×フランスを見てきたの」と答えてくれたけれど、どちらもオーストラリアが負けた試合だったので、話がうまく続きませんでした。しょぼん。妻は、とにかく持ってきたお菓子を渡しては、友好を深めていた。やはり妻の方がコミュニケーション力は高いなあ。
 
 オーストラリア人ご夫婦、国歌斉唱の時、イングランド国家を、ご夫婦そろって、でっかい声で歌っていた。英連邦の国の人たち(国旗にユニオンジャックついてる国の人)は、英国国家を自分の国の国家みたいに歌うんだあ。でも、NZ国家は歌っていなかった。じゃあ、どっちを応援するのかなあ、イングランドかなあ、と思って、ちらちら試合中、様子をうかがっていたら、どちらかというと、ニュージーランドを応援していた模様。しかし、本気で喜んだり落胆したり、というより、試合としてラグビー大好き、という感じのご夫婦でした。試合が終わった時には、奥さん、自分の分だけで6個もビールのプラスチックを重ねて持ってた。すごいなあ。

 僕らの席とグランドをつなぐ視線の先、通路を挟んだ5mくらい先に、イングランドの白いジャージを着た、これも60歳くらいの上品そうな男性がいたのだが、チャンスになるたび、立ち上がっては、とても大きなジャスチャーで喜びを表現する。手を、思いきりピンと伸ばして、万歳、飛び切りの笑顔で、周りの人とハイタッチ。トライとか得点のシーンだけじゃなく、ナイスタックルとか、ピンチで守備ががんばってペナルティを取るとか、ラグビーの大切なシーンで、イングランドが頑張る、イングランドに有利な判定になると、大きく反応する。ので、微妙な状況の時でも、このおじさんの反応を見ていれば、イングランドに有利になったことが、すぐわかる。妻も「かわいいね」「好感が持てるね」と注目して見ていました。

 今日のひとつの見どころは、ハカを、イングランドの選手たちが矢印陣形になって取り囲んだところ。アイルランドファンの歌でハカの声が聞こえなかった事件への反省からか、今日はマイクで拾ったペルナラの声が、会場中に響き渡るが、イングランドファンも、何か声を出して対抗。何よりイングランド選手の取り囲み作戦がなんか、うまくハカの圧をそらした感があり、「新しいハカとの対峙の仕方」という意味で、歴史に残るのではないかと思います、

試合立ち上がりからイングランドの圧倒的攻勢、妻は、NZ応援モードは維持しつつも、トライをしたトゥイランギがイケメンだったので、「なんか、イングランドの田村っぽくない」とか言ってる。
 シンクラーが活躍して大型ビジョンに映ると、「あれがあっくんだね。似てる、仕草も似てるねー」と、シンクラーに注目しているうちに、イングランドにも親近感がわいてきた模様。
 それに、妻はエディさんファンではあるので、ときどき大型ビジョンに映るエディさんの、立ちっぱなしで、してやったりだったり、ピンチになると紅潮して怖い顔になったりという一挙手一投足をかわいい、かわいいと言って、果ては「エディさん、日本に戻ってこない?」なんて言っている。
 
 そこで、もうすこしイングランド応援モードにしようと「あの6番のフランカーは21歳。こっちのは23歳。エディさんが抜擢したフランカーコンビなんだよ。」「あの黒いヘッドキャップ付けた4番は、イトジェっていって、スーパーマンなんだよ」と少しずつ選手情報を入れて、イングランド応援モードに引き入れる作戦を僕は展開。

 グラウンドを挟んで、スタンドの真向かいに、NZファンだけが固まっているかなり大きなエリアがあって、あまりに真黒なので、初めは空席?と思ったけれど、やはり、NZのツアーのお客さんが固まっていたエリア。試合が前半からNZいいところがほとんどなかったため、動かない。暗黒のダークゾーンと化していた。妻はときどき「あそこ、固まったまんまだね。かわいそう」と気にしている。イングランド人は、どんどん元気になって、スイングローとか、あとよく知らない応援歌をときどき歌っては、みんなご機嫌。
 きっと、あのNZからのツアーの人たち、決勝戦のチケットも持っているのだと思うなあ。三位決定戦のチケットと交換会、みたいな企画があるのかなあ。他人事ながら気になりました。

 妻は試合終盤、最後の`PGをイングランドが決めた時に「もう点とるなー。NZが可哀そう。がんばれ、もうひとつトライ取れー」と、僕のイングランドファン化計画にも拘わらず、やっぱり最後まで、NZ応援モードでした。

 試合の後、スイングローを歌いながらトイレに集団で行くイングランド人と一緒になりました。「歴史的な試合だ」と興奮していました。イングランド人のみなさん、本当に幸せそうでよかったね。
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ニュージーランド×アイルランド戦 生観戦後の感想 Facebookから転載


10月20日 1:23 ·
ニュージーランド×アイルランド。

家に帰って、録画見直す前の、生で観た感想。いやー、おそろしいものを見た。

グループリーグの南ア×NZ戦も見ていて、あのときは、「まずまず調子を見ながらだんだん回転数を上げていって、チャンスで一気に決める」ニュージーランドだったので、「すごいなあ」は、試合の中の2割くらいの時間だったのだが。

今日は、まるで、世界のメディアが、日本のことを「NZのようなラグビーをする」などとほめたことに対して、「本物はこんなだよ」というような、異次元のラグビーを見せてくれました。とにかく、決勝トーナメントに入るとテンションが変わる、ということを、これほど強烈に見せられると、びっくり。

アイルランド(応援観客)の見せ場は、NZのハカに対抗して、アイルランド人観客が、応援歌でハカを圧倒しようとしたシーンだったのだが、それへの報復のように、今日のNZは、立ち上がりから、尋常でないテンションとスピードでアイルランドに襲い掛かった。

何より、ポイント密集ができたかな、と思ったところから、ボールが出てくる速度が速い。速いなんてものではない。

これまでこのワールドカップを見てきて、僕のからだにしみついた「あ、ポイントができた。一呼吸、次の展開を待つ、攻撃始まる」というリズムで見ていると、「一呼吸」の間に、もうボールがどこにあるのかわからなくなる。

スクラムハーフ、アーロンスミスのパスが矢のようなのは当然として、そこからつながる全部のキャッチ、パスが全部、速い。正確。パスのつながりの間にはフォワードも挟まっているのに、キャッチ、パスの精度、速度が全く落ちない。

日本もときどき、深く下げて回したり角度を変えて走りこんだりという攻撃を見せるが、あれは、わりとデザインされたプレーとして出てくる感じがするのだが、NZの場合、アンストラクチャーな状態になってから、そういう、深さや角度が複雑に組み合わされた攻撃が次々繰り出される。

アイルランドが鋭いタックルで押し返しても、チーム全体が軟体動物のように、ぐにゃりと対応して、押し戻されても攻めの形が全く崩れない。

アイルランドボールになっても、攻めが全然前に進まない。アイルランドが苦しくなってキックを蹴っても、ハイパントは全部クリーンキャッチされて鋭いカウンターになるし、ペナルティーをもらってのタッチを狙ったキックも、タップしてノータッチにされてカウンターを食う。それが怖くてその後はタッチに出す位置が浅くなって、なかなか敵陣の深くまで攻め込めない。後半の立ち上がりから半ばを過ぎるまで等、自陣を全く脱出できない時間が続いた。

あまりのことに、ものすごくたくさんいるアイルランドファンの緑のかたまりが、全然動かなくなる。

後ろの席にいるアイルランド人お兄さんが、一人、「アーイラン アーイラン」と応援の声をあげるが、唱和する人もいない。かわいそうになって、妻が、か細い小さな声で「アーイラン」と唱和しているが、アイルランドは自陣深くに押し込められて、全く敵陣に入っていけない。

妻は「ロッドマンみたい、ロッドマンみたい」と謎の感想をつぶやいている。後で意味を尋ねたところ、シカゴブルズ最強だった、ロッドマンのいた時代(ジョーダン、ピッペンの、二回目3連覇の時期)を思い出したよう。攻めても守っても、とにかくロッドマンがいて、全部リバウンドを取ってしまうように、アイルランドが何をしても、全部ニュージーランドに回収されてしまう感じが、あの最強だった、ロッドマンいたシカゴブルズを思い出させたらしい。

選手交代が大量にあった最終盤には、ニュージーランドの守りにも穴が出来て、ゴール前の粘り強い攻めで、いくつかトライを返したものの、その直後にまた、目の覚めるような圧倒的な攻撃をし返される。

ニュージーランドの全選手の、ボールハンドリングの正確さは、群を抜いていると思う。キャッチ、パス。だけでなく、タックルをするときの、相手のボールに働きかけるタックルの仕方とか、密集での球の取り方とか。あるいは、キック、ドリブルでとか。

そういう基本のレベルの違いと、集団全体が生き物のように動く感じ。攻めるときも、守るときも、並んでいるその隊列のスキのなさ、美しさ。

いやー、ほんとうに、いいものを見ました。アイルランドのみなさん、帰りの駅までの道では、静かに、おとなしくビールを飲んでいました。ちょっとかわいそうでした。

コメント欄、中学同級生、友人志村君とのやりとり。志村君は保善高校NO8だった。


志村 浩二
志村 浩二 アーロンスミスは15年大会以降からさらに、飛躍的にパスがうまくなってますよね。車の運転の上手い人を「自分の体のように」ってよく言うけど、アーロンスミスはボールを拾ってパスして、そのパスする先までが体の一部のように見えてしまいます。

原 正樹 いやもう、アーロンスミスのパスだけで何回叫んだことか。あと、ボーデンバレットのハイボールキャッチ。名人芸というか、超人技というか。

原 正樹 前回の影のMVPは、コンラッドスミスとノヌーのセンターコンビだと思うのだが、昨日のウイングの二人は、キャラとプレーが対照的で、コンラッドスミス&ノヌーのコンビに重なった。

志村 浩二 ボーデンバレットはラグビーセンスの塊ですね。マッケンジーの怪我とクルセイダースのバックス陣の絶好調ぶりがあって、今のブラックスのバックスの陣形が出来てきたんだと思いますが、ボーデンバレットをFBとして外に置いたら、あの足の速さも俄然生きてくるし、もうヤバいですね。
なるほど、コンラッドスミスとノヌーのコンビと、昨日のウィングの二人、同じようにキャラとプレーが対照的ですね。11番のジョージブリッジは、早くて強くて上手くてバランス良くて、真面目そうな古風なラガーマンって感じで、ファンになりました。


原 正樹 ジョージブリッジ、僕もお気に入りになりました。


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日本×南ア戦 生観戦後の感想。Facebookから転載。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

日本×南ア 生で観た状態での感想、分析。今から録画を見直す前に。

 ここまで日本戦は、対ロシア戦だけテレビ観戦、グループーリーグあとの三試合、アイルランド、サモア、スコットランド戦は、スタジアムの二階、三階席の上の方から観たので、密集の細かなところは分からなかったが、全体として起きていることはよく把握できた。

 ところが、なぜか、今日だけは、ゴールエリア脇の、一階席のかなり前の方の席。選手の顔までよくわかるかわりに、試合場全体で起きていることが把握しにくい席だった。
 子供の高校の試合を、観客席の無いどこかの高校のグランドで見る、全体が見通せない、そんなことを思い出させる視界、視野だった。そんな状態で見た印象、感想と分析。

 ティア1国のグループステージ、対ティア2戦というのは、相手の分析・対策よりも、自分の国の戦力の調子を見る戦い方をする。
 特にレギュラー以外の選手で、調子の良さそうな選手をチェックして、決勝トーナメントへの準備にする、という意識が強い。前回大会、日本が南アに勝てたのは、南アがそういう戦い方をしたからだ。
 主力を起用する場合も、相手対策の細かな戦術を駆使するというより、自国の得意とする正攻法、正常運転をして調子を上げていくという意識が強い。今大会、アイルランドに勝てたのは、アイルランドが、そういう、素直な正攻法の戦い方をしてくれたからだと思う。

 スコットランド戦が素晴らしかったのは、その勝利に価値があると思うのは、スコットランドが日本を徹底的に分析し、本気で勝ちに来たのに対して、日本が、本当に素晴らしいラグビーをして、勝ち切ったからだ。

 今日の南アフリカは、日本の強みを消す、日本の弱点を突く、本気の、決勝トーナメントの戦い方をしてきた。

 「日本の強みと弱点」。南アは、どうついたか。

①田村を狙う。これは、前大会の南ア戦で、日本が、南アのスタンドオフ(天才肌だが体が小さい)パトリック・ランビーを、徹底的に狙ったのと同じことを、田村に対してされた。田村が球を持ったらきつく当たる。攻撃のときは田村に向かってアタックしていく。

結果として、田村は前半でかなり傷んでいて、これまでのようなパフォーマンスを出せなかった。

②田村の、日本のパスのクセを分析して狙う。これは細かなことはもうすこしいろいろな試合を見直さないと分からないが、流→田村→後ろを回して、その外に長いパス、というここを狙って詰めてくる。

②-1だから、グラウンドの端のセットプレーから始まったプレーの場合、グラウンド左右の真ん中まで展開したところで、がっつりと捕まる、攻めが止まってターンオーバーされる。

②-グランド中央あたりから始まった攻めの場合、グラウンドの端、ウイングのところでインターセプトされて
鋭く逆襲される。

③モールを多用する。モールは同人数では反則なしでは止められないくらい強さに差がある。反則したら、タッチキックで前進して、ラインアウトでまたモールの繰り返し。
(スクラムも同様。スクラムで圧力をかけ、反則を誘う。)

③-2 日本はモールで反則しないで止めるためには、バックスも入らないと止まらない。入ると、外側が人数不足。モールで攻める、日本をモールに人数かけさせてから、外に回すと、最後のウイングのところで数的優位に必ずなる。

ウイングの能力、速さでは互角でも、からだの強さのところで、福岡側なら南アが優位に立てる。松島側であっても、数的優位があれば、トライまでいける。

④地面に置かれた球の攻防では、体格と当たりの強さで、日本より南アがかなり強い。そこに集中する。日本選手全員とは言わないが、タックルされてから、ボールを置く、それをすぐに他の選手がフォローする、という一連の流れに弱点をみせることがある。そこを徹底的に狙う。
ただし、前回ワールドカップで敗因となった、地面の球の攻防で反則をしない。その規律を守る。

前半のムタワリアがシンビンの時は、作戦をうまく遂行できなかったが、15人対15人の時間帯は、こうした作戦を完璧に遂行した。

もうひとつ、松島、福岡、山中にハイパント、キックを蹴ってそこを狙う、という作戦もあったが、これは、日本の三人のキャッチ能力が高かったために、そこから大きく崩されることは無かった。とはいえ、松島、福岡の守備負担が重くすることで、攻撃のための体力、瞬発力を削る、という意味で、これも意識して使っていた。

日本は、前半のうちは、なんとか耐えて、ロースコアの戦いに持ち込んだが、こうした南アの作戦は、日本選手一人一人に、かなり大きなダメージを与えたため、後半は、ついに、南アの攻撃に耐えられなくなってしまったのだった。

 日本は、世界の強豪国ティア1上位国が本気で対策をしてきたとき、強みをつぶし弱点を徹底的に突かれたときには、まだ、互角には戦えない、ということがはっきりした。(まあ、アイルランドでも、NZとはそうなっちゃったのだから、恥じることは無い。)
 前回大会では、「世界の強豪国が、全く対策をしないくらい舐められているので、そういう油断してくれたときには勝てる国」だった。
そこから、「世界の強豪国でも、本気で準備対策をしないと勝てない国」になった、という意味で、驚くべき大進歩だった。
 シックスネーションズの中の、スコットランドの位置づけを考えれば、「ティア1の中の下位の国とは全く互角の国」という位置づけを日本は得た。しかし、ティア1の中のさらに上位の国が、本気モードになったときには、まだちょと差があることも明らかになった。

 ここから先のワールドカップは、ティア1上位の国が、本当の本気になったとき。、ラグビーはどれくらいすごいことになるか、をこの目で見る、そういう楽しみが待っています。日本が負けてもワールドカップは続くのです。

追加コメント
東京スタジアムから、狛江駅に向かうシャトルバスの中で、妻と、「五番目男子の、高校最後の試合の後の気持ちに似てるかな、(ハンドボールで、惨敗で終わった)。二番目の時とは、ちょっと違うよね、(ラグビーで:県のシードになっていて、もうひとつ勝てば松島幸太郎のいた桐蔭とあたるところで負けちゃった。)。長男の最後の試合は(ラグビー)、三男の最後の試合は(柔道)と、なぜか、子供たちのラストゲームを見た後の感想と較べながら帰ってきました。そういう自分の子供の試合でさえ、「どう勝つか、なぜ負けたか、どうしたらいいか、これからどうするのか」、そういうことをずっと考えてきたから。スポーツの感動というのは、そういうことと真剣に向き合うところにしかない、と思うから。「感動を与えるため」ではなく、「勝つ」ために、「強くなる」ために、選手はやっていると思うから。「感動をありがとう」みたいなことを書く前に、まず、試合の中身、分析、考察をしたいと思ってしまうのが、僕の変なところだと思う。



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結果は素晴らしかった。が、それでも、やはり、選んでおいた方が良かったのでは、という選手と、その理由。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

Facebookのラグビーコミュニティで、「これだけ成績良かったんだから、事前にジェイミーの選手選択に文句垂れていた人は、総括すべし。」という意見が書かれていたので、書きます。投稿された方も、「そういう議論を理論的にきちんとすることで、初心者も、ラグビーを見る見方が豊かになるし、トップリーグを見るときに、今大会の代表だけでない、いろいろな選手がいることを知る機会にもなるから、という建設的な意図で書かれているので、それにこたえようとしたら、とんでもなく長くなったので、ブログに掲載します。



まずは自己紹介。私自身はラグビー未経験。単なる観戦ファン。
①神奈川在住、子供二人が桐蔭学園出身(本ちゃんのラグビー部ではない。一人は柔道部。もうひとりは桐蔭学園兄弟校 桐蔭中等教育学校のラグビー部出身)、次男は、県内の別の中高ラグビー部。中学時代はスクール選抜候補、高校では関東新人戦に出ている。花園はここ15年ほど、毎年、Jスポーツで1回戦から、全グラウンド全試合テレビ観戦している高校ラグビーファン。桐蔭出身の選手には、やはり特別な思い入れがある。しかし、花園で、そのほかの学校でも、いい選手を見つけるのが楽しみ。松島幸太郎のことは高校一年の神奈川県予選の初戦から、ビデオで撮影して分析している。(次男と対戦の可能性があったから。)。山中のことは東海大仰星のときからファン。

②大学ラグビーは、特にどこのファンということはないが、判官びいきで、ここ最近の帝京全盛期には、「アンチ帝京」、帝京に立ち向かう大学を応援していた。高校ラグビーで気に入った選手が活躍するのを楽しみにいろいろな大学を応援していた。対抗戦中心に見て、リーグ戦は東海の試合は欠かさずチェック、関西の試合まではなかなか手が回らない。ということで、好きな選手は関東の有力校の選手に偏りがある。アンチ帝京の気分がちょっと入ってしまう。

③トップリーグでは、トニーブラウン現役時代からのサンヨーファン→現在もパナソニックファン。ダン・カーターが来てからは、流石に神戸製鋼の試合も、欠かさず見るように。なんとなく、パナソニックを応援するということは、「アンチ・サントリー」な気分で見ていることが多い。

④スーパーラグビーもここ10年ほど、NZのチームを中心に、オンエアされる試合の半分くらいは観ている。北半球ハイネケンカップよりスーパーラグビーが好き。
⑤シックスネーションズとトライネーションズ→チャンピォンシップはずっと欠かさず全試合見ている。それ以外の主要国テストマッチも、Jスポーツ、DAZNで視聴可能なものはほぼ全試合見ている。

という感じで、年間200~300試合くらいをTVで見ている、TV観戦中心のラグビーファンです。好きなチーム、アンチなチームがあるので、当然、ジャパンに選びたい選手も、「好み、バイアス」がかかっています。が、単なる感情論でない理由を説明して、というご要望なので、説明します。

ちなみに、今大会、日本戦は、開幕戦ロシア戦以外、アイルランド戦、サモア戦、スコットランド戦、南ア戦、、スタジアムで観戦しています。


大会前から、私はジェイミーの選手選択にはいくつか不満があって、

山田か(藤田)、立川、山澤(か小倉順平)をスコッドに入れておいてほしかった。松田は大好きだけれど、センター、フルバックで起用するのは良いが、スタンドオフの二番手という起用は疑問。というのが、大会前の僕の希望、主張でした。Facebook個人ページではずっとそう主張していました。遡って読んでもらえれば、出てくると思います。

理由をちゃんと説明せよ、というのがご要望なので、説明します。

ウイング 山田 問題。
前回大会スコットランドに苦杯をなめさせられ、今回もグループリーグ最終戦がスコットランド。ここに勝負がかかることが予想された。
レイドローからウイングへのキックで徹底的に攻められた前回のことを考えると、今大会は、ウイングのハイパント、キックキャッチ・処理能力が絶対条件。アイルランド戦も同様の課題が出ることは必至。福岡、山田は、明らかに前回大会の悔しさから、この4年間、その能力を磨いてきた。藤田はそもそも身長もある。かつ、大舞台に強い。レメキは、攻める走力、前に向かう守備力は高いが、後ろに戻っての守備、ハイボール、キック処理はあまり強くない。レメキを外せとは言わないが、大会前に急遽数試合、試しただけのモエアキオラをスコッドに入れるなら、山田を入れておくべき。モエアキオラはたしかに今季チーフスで活躍したし、身長は高い(185cm)が、代表としての経験不足だし、ハイボールキャッチも不安定。ジェイミーの「体格優先、外人優先」選択癖としか思えない。(キックキャッチ能力が身長の問題でないのは、福岡、松島を見れば分かる通り。)結果論だが、結局モエアキオラは本番では「やぱり使えない」判断になった。山田がいれば、福岡、山田をウイングにして松島フルバック、という布陣で戦える時間が作れたはず。松島フルバックで福岡と距離が近い状態になった時が、ジャパンの得点力は最も高まる。

スタンドオフ二番手としての「山澤or小倉順平」選んでおくべき問題。
田村がスタンドオフの絶対的存在なのは、直前のテストマッチでもPNCでも明らかなので、それは問題ない。文句なし。しかし、スクラムハーフ3人に対し、純粋なスタンドオフが一人だけ、という選手選択は明らかにアンバランス。松田を、スタンドオフもセンターもフルバックもできるユーティリティプレーヤーとして置いてあるから大丈夫かというと、スタンドオフとしては、苦しいのでは。パナソニックでも、最近はほぼフルバックとしてしか出ていない。パナソニック内序列として、山澤の方がスタンドオフとしては上だったはず。昨シーズントップリーグ順位決定最終戦、山澤が怪我で不出場、松田がスタンドをして敗れた試合もしっかり見たが、スタンドオフとしての創造性、ゲームメイク力が、国内のトップリーグの試合でも、松田はしんどかった。トニー・ブラウンコーチもそのことは分かっていたのではないか。(松田はナイスガイだし、リーダーシップもあるし、チームに必要なことに異論はない。)
ワールドカップ本戦、ジャパンが大きくリードをしていての、終盤、守備力強化のために、タックルの強い松田を田村に替える、というのはありだが、リードされていて追いつかなければいけないときに、田村→松田の交代では、攻めの形が単純になり、戦えない。逆転に持ち込める可能性が低下する。
 田村が疲労やケガの場合の試合終盤の「攻撃のバリエーション、創造性」アップを考えると、山澤、または小倉順平という、サンウルブズで世界の強豪相手にも試してみた「天才型」のスタンドオフを、スコッドには入れておくべきだったと思う。たしかに彼らは体も小さいし、タックルも松田よりは弱いが、攻めに変化をつける能力は、田村と互角だと思う。今回の南ア戦、田村が引っ込んだ後、スタンドオフができるのが松田だけ、というのは、やはり苦しかったのではないか。

インサイドセンター 立川問題
立川を入れておいた方が、というのも、タックル、突破の強さだけでなく、(その能力であれば、中村亮土は、現在の田村よりも強力だと思うので、その選択は間違いではないと思う。)しかし、田村からの攻撃が抑えられたとき、インサイドセンターとして、自らの突破力だけでなく、パスのスキルが高いことから、「田村がダメだった時の攻めのバリエーション」を増やす、ウイングを活かすところまでのパススキルということで、立川は必要だったのではないか。

9番10番どちらかが、攻めの創造性が高くないと、攻めは形にならない。今回のジャパンは田村にその点を大きく依存していた。田村が徹底的に狙われる、壊されるという事態になったときのオプションとして、山澤、小倉順平、立川というのは必要な選手だったと思う。(サントリーファンの私の友人は、その機能として、「小野晃征!!」とずっと言っていた。やはり、最終的には、ファンとしての、好み、感情論になるのです。)



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スコットランド戦に対して、悲観的な理由。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

ラグビーワールドカップ、すでに日本が8強進出をほぼ決めたかのようにテレビが騒いでいますが、我が家ではかなり悲観的。よくて五分五分くらい、スコットランドとの相性を考えると決勝トーナメントに進める確率は3~4割くらいだろうと、妻とは話しています。
行けると思って、ダメだと、すごくがっかりするけれど、まだまだ全く油断できないと覚悟しておいて、行けたら、超うれしいでしょう。だから悲観的に考えることにしています。

2015年大会と今大会の勝敗と得点を見てみましょう。

2015年大会
スコットランド 39 – 16  米国   18-28 日本
スコットランド 16 – 34 南アフリカ 32-34 日本
スコットランド 36 – 33  サモア   5-26 日本
スコットランド 45     –      10 日本

決勝トーナメント
スコットランド 34-35オーストラリア

2019年大会
スコットランド ? – ?  ロシア    10-30 日本
スコットランド  3 – 27 アイルランド 12-19 日本
スコットランド 32 – 0   サモア    19-38 日本
スコットランド   ?    –      ?  日本

日本、スコットランド、両方から見て格上チームは2015が南ア、今大会がアイルランド。
日本は格上に両大会で勝ち、スコットランドは格上には両大会とも素直に負けている。

スコットランドから見ると格下、日本とはほぼ同格のチームが前大会はアメリカ、サモア。今大会はロシア、サモア。サモアは、試合によってムラが大きいので点差が大きくぶれているが、「格下、同格」相手には、スコットランド、日本はすべて勝っている。

ちなみに2015年決勝トーナメント、スコットランドはオーストラリアに一点差で負けているが、これは後に審判の誤審と問題になったPGでオーストラリアが終了間際に逆転したもので、内容的にはスコットランドの勝ちだった。

なんというか、スコットランドは、格上チームには分相応に負けてしまうが、その代わり、格下チームには絶対負けないぞ、という気構えが強いチームなのだ。

日本は、すこしでも緊張しすぎたり、慢心油断があれば、今大会ロシア戦前半、サモア戦前半のように、「負けるかも」という展開になってしまうチームなのだが。スコットランドは、格上に対しては、たまーにしか勝たないが、格下には、めったなことでは負けないのである。
(シックスネーションズで、イタリアにだけは絶対負けない、という気持ちでやっていることが、チームとしての固定した性格になってしまっているのでは、と思う。) 妻は、この感じを(スコットランド人が、という意味ではなくて、スコットランドというラグビーのチームとして)、スコットランドは性格が悪いからなあ、と言っている。

今大会、日本がアイルランドに勝っていて、スコットランドはアイルランドに負けているからと言って、そのことは、日本のスコットランドに対する優位を全く意味していない。それは前大会の南アとの関係を見ても明らか。格下には負けないプライド・気概の強いスコットランドは、日本にとっては、ひどく相性の悪い、やりにくいチームなのである。

もっと詳細に、戦力と戦術を分析しても、スコットランドは、日本にとって相性の悪い、戦いにくいチームなのは、何度か書いた通り。キック戦術の巧みさで、ハイボールキャッチが苦手な日本のバックを攻めてくる。漠然とではなく、そのとき出ているハイボールキャッチの苦手なバックスを集中的に狙って蹴ってくる。それを、9番、10番、15番、全員が正確に蹴れる。レメキは前に出るときはディフェンスも攻撃も圧倒的に強いが、背走してのディフェンスとハイボールキャッチはやや苦手。ラファエレ、山中は、ハイボールキャッチがときどき不安定。松島だけが安心できるが、そこは狙ってこない。

反対に、日本が多用するキック戦術は、ホッグと両ウイングの強烈なカウンターを誘発するリスクが高い。

サモア15番 ナナイウィリアムスや、ロシアの10番15番など、キックがうまいバックスがいると、日本は苦戦するのである。

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ラグビー「代表に外国人が多い」について、いろいろ考えたこと。

Facebook投稿その①

盛り上がっているから、あんまり表立っていう人もいなくなってきたけれど、ツイッターでは「ジャパンには外国人がたくさんいるけれど、ラグビー強豪国は自国選手ばかりなんでしょ」という人もいるので、「いや、強豪国の中心選手も、外国人がたくさんいる、それがラグビー」ということを書いておきます。

帰化して国籍を変えなくても、3年以上居住してその国のチームでプレーしていれば、代表になれる。それがラグビーなので、日本だけじゃないです、外国人が中心選手、チームに不可欠な存在になっているのは。

いやいや、NZのオールブラックスは、ニュージーランド人だけなんじゃない?って思っていませんか。
 NZの国自体が、白人と原住民マオリのほかに、サモア、トンガ、フィジーの移民がたくさんいる国なので、実は代表もその人たちの混合混成です。たとえば、南ア戦で10番のモウンガ。まさに司令塔なのですが、お父さんとお母さんが、それぞれトンガとサモアの出身です。

「イオアネ」という名前の選手、オーストラリアのかつての名ウイングや、今回は惜しくも選ばれなかったNZのウイング リコ・イオアネなど、いろんな国のチームにいますが、イオアネはサモアの名前。サモア出身だったり、サモア移民の子供だったりします。

欧州の強豪国は、というと、イングランドのプロップとナンバー8のヴニポラ二人は、トンガ系。生まれはそれぞれ豪州とNZ。センターのトゥイランギはサモアのラグビー一家の出身。中心メンバーにトンガやサモア系がガッツリいます。

そもそも監督のエディさんもオーストラリア人だしね。

オーストラリアの中心、大黒柱、9番のゲニアは、パプアニューギニア出身。彼とかつてコンビを組んだクーパーはなんとNZ出身。今回のセンター、ケレビはフィジー出身。オーストラリアも、結構、外国人と外国系がたくさんいます。

昨日のスコットランド、一見、白人ばっかりだから、自国民だけ?かというと、マイトランドはNZ出身。

NZ出身や、南ア出身の白人が、欧州の強豪国代表にも結構います。

居住し、プレーしている国の代表になるか、母国の代表になるか、いろいろな選択肢の中で、それぞれが選んで、決めたからには、その国の代表として全力を尽くす。それがラグビーの文化なのです。

「日本だけが外国人だらけ」ではなく、どの国も結構、外国人だらけ。(そうでないアルゼンチンなんかが珍しい方。)

知らなかったり、見分けがつかなかったりするだけ。
日本人には、NZのマオリ系の人と、トンガ人とサモア人とフィジー人、見分けがつかないでしょう。(実はフィジーだけ、ちょっと民族的に別系統なのだけど。)
欧州強豪国の代表に、NZや南ア出身の白人が混ざっていても、見分けられないでしょう。

日本で普段からプレーしてくれて、日本の代表になりたいという外国人の人がたくさん出てきたっていうこと自体が、日本のラグビーが世界ラグビー文化の中で認められてきた証明なの。だから、「外国人がたくさんいるから、日本が強いって言っていいの?」に対しては、胸を張って、日本のラグビーが強くなったんだって、言っていいんです。

それにつけても、人口がたった10万人しかいないトンガ、30万人のサモア、80万人のフィジーが、世界中の強豪国の中心選手に何人も選手を出しちゃっているの、気前がいいよなあ、と思いませんか。

トンガなんて、日本代表とイングランド代表とNZ代表から代表選手を引き上げてひとつのチームにしたら、世界一だって狙えそうなのにね。




Facebook投稿その②、上の投稿の続きで考えたこと・
どなたかの投稿で読んだのだけれど、元投稿が見つからないので、うろ覚え引用。さとなおくんかな。無断引用になっていたら、ごめん。

観客席で出会った、元プレーヤーだった海外のラグビーファンから、「ラグビーをやっている仲間は、世界中でひとつのラグビーファミリー。だから、試合が終わればノーサイド。」なるほどなと思った。

 ここから僕の感想と思ったこと。そもそもひとつのファミリーなんだから、「今、近くにいるファミリーでチームを作るのが自然。」それが国の代表の要件に、国籍が入っていない、根本精神なんだろうなと思う。国の代表というより、「今住んでいる地域の代表」。
 アイルランド代表が、ラグビーだけ「北アイルランド(UK、イギリスの一部)とアイルランド共和国の共同チームであり、試合の前に歌われるのも、共和国の国歌ではなく、ラグビー代表アンセム「アイルランド コール」なのもそういうこと。
 国じゃない。その地域にたまたま一緒にいるラグビーファミリーが地域代表として戦うのが、ラグビー。ワールドカップもその延長。

ファンだって、ラグビーを愛するひとつの家族だから、客席は両国のファンがごちゃまぜになって応援する。

 もちろん、ラグビーにだって、「国と国の、プライドをかけた激突」という側面はあるのだけれど、それと同時に「同じラグビーを愛する仲間」としての気持ちがある。むしろ後者が相対的に強い。後者をより、意図的に尊重する文化なのだ。

 僕の中にもスポーツを見るとき、応援するときに、「自国とか、ひいきのチームを応援する」というのと、「そのスポーツが好きだから見る、応援する」と気持ちが両方ある。
日本代表を応援していると、「自国応援」その気持ちに100%飲み込まれる、ということは、よくある。

 しかし、「日本代表を応援する」っていう気持ちしか無かったら、日本代表が敗退したら、その大会への興味はなくなってしまうけれど、ラグビーという競技が好き、ラグビーファミリーの一員になれば、日本代表が負けた後も、大会全部を楽しめる。

 入り口は、「日本代表を応援する」「自国チームが活躍している」でないと、普通の人は入ってこないけれど、そうやって興味を持った人の何割かが、「ラグビーを愛するひとつのファミリーの一員」になってくれると嬉しいなあと思うのである。

 話がぽんと飛んで、柔道の話。NHKスペシャルで阿部一二三、詩兄妹を取り上げて、うっちゃんなんちゃんが司会で、という番組が一月ほど前にあった。】
 なんちゃんは(おそらくは台本、演出での役割として振られていたのだと思うが)、「日本柔道は一本を取る柔道、外国のJUDOは、力で、技をかけさせない、反則を狙うJUDO」という、ふたつを対立させて理解するような意見を繰り返し言うのだ。今どき古臭いステロタイプな意見を言うなあ、と不満に思いながら見ていたところ、解説役で出てきた野村忠宏さんが、「外国の人も、きれいな一本を取りたい、美しい技をきめたいという気持ちで柔道をやっている、それへのあこがれはある」ということを、きちんと発言していて、胸のつかえがおりた気がした。
 嘉納治五郎先生だって、今、海外で柔道を広めている日本人コーチの人たちだって、みんな、美しい柔道、柔道の本質を広めようと努力している。いったんはその土地その国の伝統格闘技と融合して、さまざまなスタイルの柔道が世界に根を下ろした。そして今、youtubeなどで、世界中の柔道家が、美しい技のイメージを共有し、研究できる時代になった。
 最近の柔道の国際大会を、日本人の試合だけでなく、外国人選手の試合もきちんと見れば、びっくりするほど美しい技の柔道をする柔道家が、世界中に登場して活躍していることがわかる。
 柔道だから、日本ガンバレ、日本人が金メダル取れ、だけではない。世界中の柔道仲間が、素晴らしい、美しい、そして多様な形で進化させた柔道をしていること。嘉納先生が生きていて、その様子を見たならば、きっと喜ばれると思う。
 いや、しかし、あの、いだてんの嘉納先生(役所広司演じる)だと「日本柔道はそれでも勝て。負けちゃいかん」というかな。でも、「自分が創始した柔道が、世界中でこれだけ愛され発展していることがうれしい」どっちが強いかなあ。

 ラグビーも、柔道も、直接、相手の体に、攻撃的に働きかけることが競技の根幹をなしている。競技特性がそうであるからこそ、相手を尊重し、尊敬し、敵ではなく、ひとつの競技、武道を愛する仲間だという意識を優先していく文化が必要なのである。相手がいないと、競技はおろか、練習だってできない。ものすごく強く攻撃的であると同時に、相手に怪我をさせない、正しい動作を常に行い、理性的に気持ちをコントロールする。
 戦う相手すら、「敵」であるよりも「仲間である」と考える文化。その考え方は、どんなスポーツ、競技にも存在するが、最も激しく直接的に攻撃的であるがゆえに、最も強く「対戦相手も仲間であること」を優先させようとする文化。ラグビーと柔道に共通するもの、私がこれら競技を愛する理由。
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