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佐藤琢磨 インディ500 2度目の優勝 感想、記録 [スポーツ理論・スポーツ批評]

インディ500、アメリカのインディカーレースはオーバル(楕円)ぐるぐるなので、どちらかというとF1を見慣れているので、どこを楽しむのか難しいのだが、
そんな僕でも、今回のレースは、展開として、ドラマチックで面白かった。

 今季、インディカーシリーズランキング、ぶっちぎりトップのディクソンが先行し、ロッシがピット五回作戦がハマればロッシが有利か。このディクソンとロッシが、燃費など気にして、二人で一位二位を毎周回ごとに交代する(わざと)という展開が続き、琢磨はそのすぐ後ろ、三位で最終ピット後最後30周の勝負に備える、という中盤の展開。

 と思ったら、イエローフラッグで、120週目、ピットにみんな入ったときに、ロッシがピットアウトで琢磨を邪魔して接触、ペナルティで最後尾に脱落。

 最終ピット終了後の残り30周、あとはガチでディクソンと琢磨の一騎打ち、最終ピット両者終了時点ではディクソンがリードするが、残り27周で琢磨がディクソンをぶち抜く。このままリードを保ってくれー、と実況アナも解説中野さんも声が出なくなる。リードを何もトラブルなく保ち続けるには、残り周回、ちょっと長すぎる。

 チームメイト、レイホールも速くて、三位。最後、ディクソンをレイホールがかわせば、チームメイト同士の勝負になるかも。周回遅れ三台が間に挟まりながら、佐藤とディクソンも、タイヤが苦しいのか、どちらも苦しそう。もう見ている方も緊張も限界、という残り五周、

 後ろの方で、スペンサーピゴットが大クラッシュ、イエローフラッグで追い越し禁止のまま周回は進むことになり、そのまま琢磨優勝。最後、ちゃんとレースが継続展開したままで勝利、と終わればなお良かったが。

 もし。、このクラッシュでレッドフラッグがでていれば、一旦、そこでラップを数えるのは中断。(そのまま終了の可能性もあり、逆に、残り周回五周で再開の可能性もあった。)

 ライバルのディクソンは、勝った佐藤を讃えつつも、「レッドフラッグが出ると思った。最後の五周、再開して勝負したかった」という意味のことをインタビューで答えていて、その気持ちもわかる。レース中、ほとんどの周回、ディクソンがトップを走っていたのだし。今季ずっと好調だったし。

 しかしまあ、インディで二回優勝というのは、テニスのグランドスラム、全米オープンとか、アメリカで行われるゴルフのメジャー大会どれかに二回、勝つようなもの。メジャーな個人スポーツで、ここまでの偉業を成し遂げた日本人はいない。F1と較べると日本では扱いが小さいし、どう比較していいのか難しいのは確かだが。少なくとも、アメリカでレジェンドになったこと間違いない。
 
追記
 モータースポーツって、まずチームがどういうマシンを仕上げるか(予選向けと、本番用に)、レースに対して、タイヤ、燃費、ピット戦略をどう立てるか、必ずレース中起きるイエローフラッグ、レッドフラッグにどう対応するかという、チームとしての知的戦略スポーツで、ドライバーは超高速の、相手ドライバーとの駆け引きレースと共に、そういう高度な戦略駆け引きを実践実行する、という役割を担って戦っている。その全体を楽しむ、という意味では、「必ずクラッシュが起きて非常事態が何度か起きる」オーバル超高速レースが、F1より単調かというと、決してそういうことではないのだよなあ、ということを認識しながら見ていました
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野村克也さんの、打者としての、身体動作上の凄さはどこにあったのかを研究する。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

※私は野球は完全な素人。小学校草野球以降、全くプレーしたこともない。他のスポーツ武道を通じて、身体動作について考察するのが好きな、ただのアマチュア。今回、野村さんがお亡くなりにあった後の、テレビなどでの取り上げられ方に不満があり、いろいろ考察してみた。

前半 Facebookへの、問題提起投稿

野村克也氏について、監督として、指導者として、とても優秀だった、という話がものすごくされるために、現役時代、名選手だったのも、そういう「頭脳派」だったから、というバイアスがかかって理解されてしまうのだけれど、それだけじゃないだろう、という話。(本人も、そういう言い方をするようなところがあるけれど)。

単純にアスリートとして、突出して、異常な能力があったんだと思う。そのことが、語られない、振り返って分析、評価されないのは、なんか、不満。

だって、本塁打、657本。歴代2位。長くやっていたとはいえ、同じく長くやっていた門田567本より100本近く多く、清原525本や落合510本より、150本前後多く打っているんだよ。王さんの868本が異常値だけれど、600本超えているのは、王さん野村さんだけ。

安打数で言うと、張本さんの3085本が異常値で、その次が野村さんの2901本、三位が王さんで2786本。王さんより100本以上多く打っている。

「頭脳派」というと、「劣っている肉体的能力を、頭脳で補う」というように、普通の人はイメージしがち。野村さん本人も、自分のことを、そういう風に語った。たしかに身長も170センチそこそこだったから、「でかい肉体派」ではなかった。

でもね、硬球を、木のバットで、ホームラン打つのって、異常な能力が、そもそも必要。ジャニーズ、亀梨君とか芸能人が、ホームランに挑戦、みたいな番組、一年以上かけてプロにみっちり鍛えてもらっても、スタンドまでボールは飛びませんでした。

力自慢で巨体の清原や門田よりもずっと多くのホームランを、野村さんが打ってきたことの理由が「頭脳」だけっていうのは、どうしても、納得できません。(当時は球場が狭かっただののくだらない理由は却下。同じく狭い球場で同時代の選手たちは戦ったのだから。門田のは野村と同じ南海球場が長い、落合の川崎、いずれも狭かったでしょう。)

「頭脳」でも「筋力」でもない、何か、身体操作上の「極意」を、野村さんは会得していたんではないのかなあ、というのが、僕が知りたいこと。

そういえば、王さんも、プロ野球選手の中では、カラダが大きくはない。かつて、名球会OB戦、みたいな試合で、50歳を過ぎた王さんが、軽々とホームランを打っていたのに対し、力自慢だった選手たちは、年を取るとホームランが打てなくなっていた。王さんの、あの一本足打法は、わかりやすく、武道の形のように、身体操作の合理性の完成度でホームランが出るのだなあ、というのを納得したことがある。

野村さんの異常な打撃成績の裏には、本人が「頭脳で」と語った以外の、何か、身体操作上の極意、特殊な何かが、あったと思うのだけれど、誰もそれを語らず、分析せず、のまま、野村さんが亡くなられてしまったのが、残念です。

野球ファンの人、元野球選手の人で、野村さんの、巷で語られる「頭脳」ではなく、身体操作上の、打撃の特徴、秘密を知っている人がいたら、ぜひ教えてください。



そして、YouTubeで、この動画を発見。

バッティング講座③~野村克也の真髄~
https://www.youtube.com/watch?v=YtYPy_E4ZDs&fbclid=IwAR0BVu_wBje47DrTQC1M8dEqfrRxZ6SraWFukIeaYSOfqjMr7r46gTa8L8g



後半 分析篇

野村克也さんの、バッターとしてのすごさはどこにあるのか。巷で一般に語られる「肉体的に恵まれていなかったので、頭脳で」というようなイメージは、間違いとは言わないが、不完全なのではないか。頭脳だけで打つには、打撃成績が突出してスゴすぎる。門田や清原や落合よりも100本以上も本塁打を打っているというのは、何か、もっと秘密があるに違いない。
という疑問を抱いて、Facebook友人に質問、かつYouTube動画を各種見ていて、分かったこと。

まず、従来は
①野村さんの打撃理論は「上から叩く」「最短距離でバットを出す」など、わりと古くからある、昭和の打撃理論と思われてきた。その理論を否定批判する形で、平成期の一流打者は打撃理論を語ってきた。批判される古典だった。
(とはいえ、野村さんの現役時代には、上から叩く、も、かなり画期的な理論だったのだと思う。)
②このため、YouTubeの素人さんコメントも、「野村の打撃フォームには別にみるべきところはない」などと言われてきた。

また、
③野村さん自身も、言い方としては、そう見られても仕方がない言い方をしてきた。

今回、ウッチャンに打撃指導する番組の動画と、過去の野村さんの打撃画像を見て分かったこと。

①野村さんは、自分の打撃フォームが「見た目」が不細工であることを自覚していた。おそらく、王さんの、完成されて個性的な一本足打法や、ヘルメットの飛ばし方まで研究したという、長嶋さんの「見た目も華麗で魅力的」なフォームに対し、コンプレックスを抱いていたようである。

②野村さんが63歳時点で、自分の打撃フォーム以外に「天才」として例を引くのは、若松、イチローであった。それらは後ろ足から前足への体重移動をしながら、「前でさばいて動きながらバットを振る」タイプの打撃フォームであった。

③野村さんの打撃フォームは、当然のことながら、現役時代のものも、63歳時点での素振りも、共通のものであった。

④川上哲治さんの、「構えたら不動」「呼吸法の使い方」「呼吸法による重心を鎮める」「親指で立ち、親指で体重移動する」など、相撲や武道などに通じるいくつかの「意識すること」がある。

⑤捉えるポイントはヘソの前にバットを構え(体と垂直にバットを出し)、腰を切ったところ。

⑥腰を切るときは、カラダの左半身(ピッチャーに近い側)の力は抜いて、右半身だけに力を入れると、するどく腰が切れる。

以上のことと、映像を見て、野村さんの打撃の特徴(野村さんか言語化していないことも含め)を分析考察してみる。

打撃の際の軸については、「後ろ足から前足に重心を移す」ことに異論のある人はいないが、その際、前足を「ストッパー」として使って、回転軸を後ろ脚よりに残すように意識する(実際はその中間に重心はある)タイプのフォームと、踏み込んだ前足側の上に回転軸を作る打撃フォームがある。前者は、松井や清原など、体格の大きなパワーヒッターに多く、後者はイチローや若松などに多い。後者はいわゆる「走りながら打つ」打法である。

野村さんの打法は、重心移動に関しては、若松・イチロータイプである。しかし、その移動した瞬間に腰を切る意識が強いため、前足側軸上で強いタメが一瞬生まれる。これが、若松やイチローよりも、ホームランを量産した理由だと思われる。

その状態で強く腰を切るのは、身体動作的にきわめて難易度が高く、カラダを右半身左半身に分けて、それぞれに独立して力のヌキとイレを行うという高度な身体動作である。野村さんの「達人性」「固有性」のひとつは、この点にある。

もうひとつの固有性は、「腰の切り」の瞬間に「上から叩く」意識が加わることで、一種、上体の強いうねり動作が生まれる点である。
63歳時点での素振り一回目、やりそこねた時に、インパクト瞬間に、上体が激しく「くの字」に曲がった。あそこが、野村スウィングの特徴が、失敗したがゆえに強く表れた瞬間だと思う。体格に恵まれていないのに、異常なほど(門田や清原といった体格体力に恵まれたバッターより)ホームランを打てたのは、この「体重移動」「腰の切り」に加え、「上体のうねり」が加わったためではないか。インパクトからフォロースルーの動作が、軟式テニスのフォアハンドのように見えるのは。この特徴的動作による。一般には、このような不安定さをスウィング動作に加えることは、忌避される動作だと思うが、あえて、それを活かした。
「当たるまでが大事。当たった後は崩していい。、当たった後はケセラセラ」とウッチャンに教えている通り、体重移動をして前足に軸を作って腰を切り、上からかぶせた後は、美しい姿勢は保持できないことが自分でも分かっていたのだと思う。

誰よりも深く打撃理論を突き詰めたのに、その見た目が「王、長嶋ほど美しくない」ということについてコンプレックスを抱いていたこと、自分の打撃理論の先に、若松、そしてイチローという天才が生まれたことを、実は誇りに思っていたのではないか。そんなことも垣間見えて面白かった。

さらにいえば、体格にすぐれない打者が、イチローや若松のような「安打数・打率型」にいくのではなく、ホームランバッターになるための「奥義」のようなものを、開発・会得していた。その点については、野球の専門家のみなさんの分析・意見を期待しして、素人の分析、おしまい。
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井上×ドネア 見た後すぐの感想、分析。井上尚弥の大ファンだけど、勝ったとしても判定2-1に割れていて妥当。ドローでも不思議はない。フィリピンで試合していたら、ドネアの勝ちという判定が出ていた。それくらいドネアがすごかった。それでも勝った井上がすごかった。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

いやー、ドネア強かったなあ。
第1ラウンド、始まった瞬間から、「なんじゃ、このフットワーク」というくらい、ぜんぜんぴょこぴょこしないで、滑るように必要な距離だけ素速く前後左右に動く。超達人の動き。派手なフットワークではないけれど、おそるべき技。ディフェンスの動作もそう。足と上半身の小さな動きで、かわす、パンチを殺して受ける。そしてなによりパンチの打ち方。手のある位置から、相手の自然な予測から、ちょっとだけ間を外して、すっとパンチが出てくる。それは、もちろんはじめのうちは井上も警戒していて喰わないけれど、少しでも油断すると、早いというより、間を外して、パンチを当てられてしまう、という、いやーな感覚を、井上は持ったと思う。ジャブ、ストレートだけではなく、アッパーも突然、飛んでくる。スポーツ的動作というより、武道の達人の動きである。

第2ラウンド立ち上がり、何発か井上のパンチがクリーンヒットではないが、ドネアのガードを外して顔面に当たると、ドネアの顔色が変わる。井上がモンスターと言われるパンチ力が、体感されて、ドネアも警戒の色を強める。パンチの決めの強さ、一発の威力は、井上が勝っていた。しかし、クリーンヒットしなければ、それも意味をなさない。ドネアは滑らかなフットワークから前に出て、鋭いジャブ、ワンツーを繰りだす。ロープにつまり気味になるのは井上の方。それでもまだ両者、調子を見ているかと思いきや、ラウンド中盤、井上のいいパンチが軽く一発ドネアを捉える。よいボクサーは、打たれたら、前に出る。打たれたら、手を出す。細かなポイントの積み重ねが勝負を分けるある以上、「あ、打たれたな」という印象を残してラウンドを終わらせない。なので、ドネアは圧力を強め、前に出る。そして井上をロープ際まで追い詰めてのパンチの応酬、すこしかがんだ姿勢の低い位置から、左のショートフックを、全く引きの動作なく、低い位置にあった腕を、高い位置に上げ、(つまり、引きの動作は全く入っていない)そこから強烈なショートフックを、井上の右半分の顔面、眼を中心にしたど真ん中に打ちんだ。(中国拳法や空手の寸勁、ゼロインチパンチの打ち方である。やっぱりドネア、達人としか言いようがない。)
井上の眉の下がばっくり切れたのはこのパンチ。頬骨から目からそのあたり一帯に強烈なダメージを食ったと思う。出血に目が行くが、頬骨、眼球、そのあたりに強烈にパンチを食っている。その後の試合を通しての井上の右目の目つきが、眼底骨折をしちゃって、眼がうまく動かなくなった人の眼の状態のように見えて、僕は出血より、そっちが心配でずっと見ていた。(みんな、顔面の目の周り、思いっきりぶん殴られたこと、ない人の方が多いでしょう。目の軸がね、ズレちゃうの。そのあとしばらくずっと、ものがふたつに見えて、全然、試合どころじゃなくなるのですよ。おそらく、井上はその状態になっていた。)

 打たれた直後はよくわからなかったが、ラウンド間にコーナーに戻ると、激しい出血で顔右半分は血だらけ。アドレナリンを傷口に押し当て、ワセリンを塗りこんで止血するが、もし同じ場所を打たれたら、すぐに大出血になる。

 次のラウンドからしばらく、井上は、右グローブを高く上げて、傷をしっかり覆うようにディフェンスしながら、慎重に戦った。傷をもう一度殴られたら、大出血で試合が止まるかも、という出血への不安なのか、眼の軸がぶれて、視野がうまく定まらないというダメージなのか、かなり危機的状況にあるように見えた。その他の、いわゆる足に来るとかいう身体的ダメージはなさそうで、ダウンしそう、というような類のピンチではなく、出血と眼のブレという、「まともにボクシングがしづらい」というピンチ。ここをドネアは上手に攻めて、毎回数発のクリーンヒットを決め、井上の強打は食わないようにして、確実にポイントを積み重ねる。後で採点を見ないと分からないが、2ラウンドから4ラウンドまではドネアがはっきりと取っていると思う。
5ラウンドに入って、そろそろいかないとポイント的にもマズイ、ということで、井上が右のグローブを、「目の周りガード用」から攻撃用に切り替えて、右の強打を繰り出すと、何発かクリーンヒットして、ドネアが明らかに効いた、逃げようという態度に出る。
ここは井上がワンポイント、取り返す。
6ラウンドもここのペースを維持するかと思いきや、ドネアが巧妙に、距離を保ち、前ラウンドの勢いをいったん切るが、ドネアが反撃するわけでもない。あいまいなラウンド。
7ラウンドには井上が左フックをいれ、左右の連打を繰り出すシーンが見られ、井上がやや優勢に試合を進め、流れをつかんだかと思えた。
しかし、8ラウンド、ここで反撃しないと前半のリードを失うとばかりに、ドネアが攻勢に出る。再び間合いをうまく外したパンチを井上の顔面にあて、井上が再び激しく出血する。
出血の印象もあり、明らかにドネアのラウンド。
9ラウンドはそのドネアの勢いが加速し、何度もクリーンヒットをし、井上の足が泳ぐ。このままではダウンも必至、判定でも不利だなあ、という空気が会場を支配する。
10ラウンドも流れは変わらないように見えるが、ドネアの顔面が腫れはじめ、井上のパンチが次第にタイミングがあって強く当たり始めたことがわかる。体力的にも、ドネアは少し苦しくなってきたよう。とはいえ、ときどきドネアもクリーンヒットをきめるため、明確に井上が取った、とも言いにくい。


ここまで、僕の採点は、明確にドネアは23489、明確に井上は57 あいまいなのが1、6、10。曖昧なラウンドを全部井上に入れてくれる日本びいきジャッジ一人はここまでおそらく互角のはず。中立のジャッジは2ポイントくらい、ドネアがリードしているはず。もしドネアびいきのジャッジがいるなら、4ポイントくらい、ドネアがリードしていてもおかしくない。つまり、判定では井上が負けている、というのが僕の予想だった。

ジャッジ日本びいき Aさん、95-95 。中立 Bさん 94-96。 ドネアびいき Cさん 92-98
この流れのままグズグズと12ラウンドまで行ったら、2-1と2-0、一人引き分けとか、そんな感じでドネアの勝ちになるのでは。ボクシングマニアの人たちは、きっとそれくらいの見方をしていたと思う。
(実際のスコアシートは後で出すのでお楽しみに。)

 そう思った11ラウンドに、みなさんご存じのとおり、必殺の左レバーブロー炸裂。ここで10-8はルール通り全ジャッジがつける。このレバーブロウは、本当に、一発で試合が終わっておかしくなかったところ。ドネアは立っていられなかった、(例のディレイド・リアクションで、打たれた一秒後に激痛、走って逃げて、立っていたらもっと打たれると、しゃがみこんだ。しゃがみこんだ後、さらに激痛苦悶。このままカウントアウトした、と僕は(テレビ音声を消して観戦していたので)思ったが、カウント9で立ち上がったドネアがすごい。しかもそのあと、打ち返したドネアはもっとすごい。そのうえラウンドの間に、おおむねダメージを回復して12ラウンド、普通に戦ったドネアがすごい。ドネアがどんだけすごいボクサーか、強かった場面だけじゃなく、あのレバーブロウ食った後にも、あらためて思い知ったわけです。

ところでね。ここからは、疑惑の判定の話。

観客席や、おそらくテレビの放送は、ダウンを取ったので井上勝った、みたいな騒ぎ方だけようだけれど、そこまでの試合をかなり悲観的に見ていた僕は、このラウンドのダウンが一回だったので、どうやったって10-7はつかないわけで、これはやばいな、と思った。
全員10-8をつけるので、10ラウンドまでと合計して
Aさん 105-103 Bさん 104-106 Cさん 102-106
まだ、1-2で井上、負けているだろう、というのが、僕の読み。
最終ラウンドにもう一回ダウンを取ってやっと
Aさん 115-111  Bさん 114-114 Cさん 112-114
1-1の引き分け。くらいの感じで見ていた。まあ、最終盤2ラウンド続けてダウンを取ったら、2-1に逆転、という結果に、誰かかうまく調節するかなあ。
つまり、12ラウンドに、もう一回ダウンを取らないと負けるぞー、と思った。
ところが、ドネアは復活するし、井上は慎重だし、おーい、余裕こいてる場合とちゃうぞーとテレビの前でジタバタしていた。
結局、最終ラウンドは、ダウンは取れずも、井上が明確に優勢で、僕も10-9でラウンドは取ったと思った。しかし、微妙に、これでは届かない。
普通の素人観戦の人たちは、あのダウンで勝ったと思ったのに判定が負けだったり、よくても引き分けになったら、テレビも会場もどうなるんだろう、とドキドキしながら、判定を待った。

さて、実際のスコアシートは
inouedonaire-1 (1).jpg


こう見ると、公正な判定をしたのはロバートホイル米国だけ。この人は10ラウンドまでは96-94でドネアが勝っている。このままドネアのペースが続けば、4ポイント差でドネアの勝ち。11ラウンドのダウンがあって、やっと同点になっている。最終ラウンド取ったほうが勝つ、という状況で井上が取って1点差。見ていた印象とぴったりでしょう。この人が正しい。

オクタビオ・ロドリゲス(パナマ)は、明らかに、誰かに買収されている。(日本サイドではなく、アメリカの興行主系だと思う。井上をこれからのスーパースターにして儲けたい人たちは日本人ではなく、アメリカの人たち)下種野郎だ。最高の一戦に泥を塗る最低ジャッジ。買収下種野郎ロドリゲスは、あのボコられた2ラウンドも井上のラウンドにつけている。目がついているのか?10ラウンドまで97-92と5ポイント井上が勝っているって、どんなド素人の井上ファンがつけてもこんな採点にはならない。ボクシング、こういうところは、本当に嫌い。

ポスカレッリ(イタリア)はやや空気読み井上有利に、しかし、不自然でない範囲にとどめた忖度しつつそつなく仕事をしたジャッジだ。ボスカレッリは10ラウンドまで96-94で井上わずかにリード。このままドネアが優勢に試合を運んだとしても、ぎりぎりドローで終わるラインに留めた。彼の仕事はビッグビジネスとしてのボクシングと、スポーツとボクシングのバランスを取る人、プロのジャッジとしては完璧でした。

ドネアは、本当に素晴らしかった。完全にからだを絞り切ったために、中年の悲しさ、腹の皮膚だけがあまっちゃって、知らない人には「腹が絞れていない」ように見えただろうけれど。あれは二階級上でやっていて、中年になっちゃうと、脂肪を落としても、皮膚だけ元に戻らなくなるのよ。それくらい、ドネアの仕上がりは完璧だったし、技術は神の域、達人の域だったし、それでも食ってしまった井上の殺人的レバーブローにも耐えて立って戦った精神力も人間業ではなかった。せめてジャッジ一人はドネアに勝ちにしてあげたかったな。そう思います。

それだけ完璧だったドネアを、11ラウンドに、あのレバーブロウでリングに這わせた井上尚弥。この試合を早いラウンドでKOして、パウンドフォーパウンド最強、という称号を得るという結末を期待したファンも多かったと思うけれど、それ以上に、ボクシングの崇高さまで感じさせる試合を日本中、世界中のボクシングファンに見せたことで、評価は高まるんではないかなあ。

井上尚弥もドネアも、本当に、最高でした。井上の右目とか眼底とかが、が壊れていないことを祈る。

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南ア×ウェールズ 感想 5本勝負 [スポーツ理論・スポーツ批評]

一本目 前々日。(イングランドNZ戦前夜。)

明日のイングランド×ニュージーランド、あまりに楽しみ過ぎて、頭変になりそうなのだが。特に、エディさんがどんな秘策を繰り出してNZに立ち向かうか、そんなもの跳ね返して、やっぱりNZは強いのか。いやいや意外に、秘策ではなく、真っ向勝負でもイングランドがNZを上回るのか。あーー、もう大変。

といって、この試合を(このJスポーツの記事みたいに)「事実上の決勝戦」というのは、ウェールズと南アフリカに失礼だぞ。ということを説明していきます。

今年のウェールズ×イングランド。
8/17、ウェールズホームのカーディフで、とはいえ
◯ウェールズ 13-6 イングランド
2月のシックスネーションズでも
◯ウェールズ 21-13 イングランド
なのだ。

今大会も、ウェールズはここまで、オーストラリアにもフランスにも(接戦だったけれど)勝っている。この接戦というのがウェールズらしくて、大勝するより、むしろ調子がいい証拠だと思う。
シックスネーションズでの、イングランド戦だけじゃく、最強説高かったアイルランド戦でも、謎の根性と集中力を出して勝った。今年のシックスネーションズ(北半球最強決定対抗戦)、全勝優勝しているんだから。

南アだって、今大会の初戦のニュージーランド戦、負けたとはいえ(南ア13-23 NZ)、力負けというよりは、集中力の差、という負け方だった。
今年のラグビーチャンピォンシップ(南半球最強決定四か国対抗戦)は引き分け
南ア16-16 NZ
チャンピォンシップ、南アはオーストラリアにもアルゼンチンにも大差で勝って優勝している。
(ニュージーランドはオーストラリアにも負けて三位だったの。)

つまり、ウェールズ×南アは、今年の「北半球最強決定戦優勝」VS「南半球最強決定戦優勝」の対決なのよ。
一方のNZ×イングランドは、今、現在の世界ランク1位と2位の対決。

もう本当に夢のような二試合になったわけ。

オールブラックスだって、決勝戦は緊張するから、2011年大会の対フランス、決勝戦なんかは、どっちに転んでもおかしくない試合になったし。一大会に一試合くらい、NZ、オールブラックスといえども、調子狂うことがあるのです。

だから、確かに明日のイングランド×ニュージーランドは、もう明らかに今、望みうる最高の対決なんだけれど、「事実上の決勝戦」というのは、違うぞー、ウェールズと南アに失礼だぞー。と思う。あーー楽しみ。

二本目 スタジアム観戦後、帰りの電車の中で。

電車に乗っての生観戦後感想。南ア×ウェールズ。
両チームとも注文通りの展開。キックを多用し、相手に球を持たせたところに激しくプレッシャーをかけて、反則を誘いPGを重ねての低スコアの戦い。相手にダメージを与える消耗戦。ウェールズはこのまま僅差で行きたい。南アは、相手が疲れた後半に一気に攻撃のテンポを上げて大差をつけたい。

疲労からか、ウェールズ前半最後にジョージノースがハムストリングをやっちゃって交代。南アの注文通り。

後半、南アが試合初のトライで突き放すかと思うが、ウェールズも食い下がり、後半ラスト10分まで勝負の行方はわからない。
ここまで粘ったウェールズに勝たせてあげたい気持ちマックスになったのだが、、、、、。
 最後の仕上げに南アが大量選手交代したところで、ウェールズ、力尽きる。南アのゴール前に迫ったところでトライが取りきれない。自陣前まで攻められると、ペナルティ無しでは止められない。わずか3点差PG一本ですが、見ていた感じ、どうしても追いつけない展開で、終了。

ハーフペニーは試合勘がやはり戻っていないのか、好プレーもあったが、ハイボールキャッチでミスが目立った。でも、最後の難しい角度のコンバージョンを決めたところ、思わず僕は立ちあがってガッツポーズしてしまいました。

 ウェールズの素晴らしさ、タックル、見事なラインアウト。スクラムは時に粉砕されても、また次は立て直して戦う。ラグビーの国としてのプライドを示した、見事な戦いでした。電車着いたのでおしまい

追記、修正。(本文でも修正しちゃってあります。)

家に帰ってきて、いろいろ間違い修正しました。

⑴最後の10分でどんどん点差が開いた、と書いたけれど、本当は3点、PG一本差だった。
最後の10分、ゴール前でウェールズはペナルティを繰り返したので、もっと点差が離れた感覚で「負けたー」と思ったのだが、南アが最後PG蹴らずに外に蹴りだして終わったから、三点差で終了だったんだ。点差は三点だけれど、絶望的に届かない三点でした。
②はハーフペニーが決めたのはPGと書いちゃったけれど、
ハーフペニーが決めたのは、PGではなく、同点となるトライ後の、難しい角度のコンバージョンだった。


三本目 試合会場の雰囲気

試合場の雰囲気レポート。

昨日の「イングランド×ニュージーランドが事実上の決勝戦」ということに関して、観客席の雰囲気でいうと、それは本当だった。昨日と今日は、ずいぶん雰囲気が違いました。

昨日のNZ×イングランド戦の雰囲気。
ニュージーランド人とイングランド人は、決勝まで当然、行くつもりで、おそらく「決勝トーナメントだけ、決勝まで」観戦ツアーとかセットチケットとか、そういうので大挙して来日しているのだと思う。両国の人が、ものすごい人数来ていた。

つまり、試合当事国の人が、大量に押しかけてきていて、観客席もそういう緊張感、高揚感が充満していた。

日本人:NZ人:イングランド:その他外国人(あくまで着用ジャージ・外見判断)の比率が 客席を見た感じでも
5:2:2:1くらいで、客席の4割は当事国の人、という雰囲気だった。(実数ではきっともっと日本人が多いのだろうけれど、雰囲気でいうと、そんな感じだった。)

ラグビー強国の外国の人は、一般人でも体がものすごくでかいので、通路を歩いての体感で言うと、体積比では、2:4:4:2くらいの感じ。でっかいイングランド人とNZ人とその他アイルランドやオーストラリアや南アやスコットランドや、という人たちがわっさわっさとビールを手に歩き回っている、あるいは通路に立ちふさがって話をしている、その間を小さい日本人がうろうろ歩き回っている。というのが、昨日の感じ。

日本人で、準決勝のチケットを買っているのは、プール戦、日本戦と比較すると、年配の昔からのラグビーファンという風情の人が増えて、若者の比率が減っている。日本人老人たちは若者と比較すると体も小さいので、体積比での日本人比率は人数比の場合の半分以下になるのである。

転じて、今日は、試合当事国、ウェールズ、南アの人の比率が、そんなに多くなかった。

日本人:ウェールズ人:南ア人:その他外国人が
7:1:1:1くらい。外国人比率も昨日より低下しているが、なにより、試合当事国の人の比率が昨日の半分以下、という印象。当事国の人より、アイルランドの緑の人が、目立っていて、白いジャージのイングランドの人も結構いる。

今日は、通路を歩いても、体積比で言っても、日本人比率五割くらいはあった。

やはり、試合当事国の人の比率がこれくらいだと、「勝ち負けの緊張感」よりも、「いいラグビーを見たい」という気持ち、雰囲気が、会場を支配してしまう。

試合が地味な守備つぶし合いの展開だったので、昨日は全く起きる気配もなかったウェーブまで途中で起きてしまった。(ラグビーの試合のウェーブに、僕は反対なのだが、なんか、「試合退屈だからウェーブやっちゃうぞ」みたいな雰囲気で、選手に失礼だと感じてしまうから。

まあ、今日の会場の雰囲気が盛り上がっていなかったかというと、そんなことはなくて、僕の周囲の日本人オールドラグビーファンは、みな、明らかにウェールズ応援モードで、彼らは、本当に静かに、じっと黙って観戦していて、ウェールズの好プレー、得点のときだけ拍手をする。ウェーブにも迷惑そうにほとんど反応しない。「会場を声援で盛り上げる」というより、「静かにじっと見入ることで選手のプレーを妨げない。好プレーのときだけ拍手する」という、テニスの応援みたいな雰囲気の人が多かった。
 この日本のストイックなオールドファンのスタイルも、海外の人たちから見るとストイックすぎるところがあるようなのだが、僕はなかなかいいなあ、と思う。

 何かの手違いか、演出上の方針変更、お試しなのか、得点後のキックオフ再開の際の、歌舞伎クライとかいう「イヨー」の掛け声強要・場内アナウンス演出が、なぜか今日の前半だけ、無かった。
 僕の左隣、20代後半くらいのカップルの男性の方は、この日のために歌舞伎クライを、彼女と一緒に一生懸命練習してきたらしく、大きな声で「イヨーーー」と叫ぼうとして、「あれ、今日は無い。ほんとはね。あるんだよ」と彼女に弁解していた。彼女は「練習してきたのにぃ」と、彼氏に不信、不満の声。たいへん、彼氏、かっこがつかない、と心配したが、後半からは「イヨー」復活になった。

話はちょっと横にそれるが、今大会の、DJによる演出と、観客の応援スタイルについて思ったこと。

 今大会の「イヨー」とか「三々七拍子」とか、スクラムやラインナウトのセットプレーに時間がかかっているときのちょっとした間にDJが音楽をかける演出など、初めは「いらないなあ、うるさいなあ、静かに見せてほしいなあ」と個人的には思っていたのだか、まあ、あればあったで、こういうものだと慣れてきた。でも、本当に、いるのかなあ。

 試合開始前のタイコ演出(観客席の人とCGタイコを合成して大型ビジョンで流す、映し出された人はタイコを叩くジェスチャーをする)や、ハーフタイムのカラオケタイムなど、試合中でない時のファンサービスはとても良い、海外からのファンも喜んでいた。

 でも、試合中は、試合にじっと集中する、その合間に、あるいは本当のチャンスやピンチのときだけ、自然発生的な歌や掛け声で応援する、というような応援文化にうまく収斂していくといいなあ。DJが試合中にたびたび音楽をかけて間をつながないと、観客が退屈する、と思うのは、観客をバカにしている感じがしました。選手の邪魔になっている感じもするし。

 プロ野球の鳴り物とか、Jリーグやサッカー代表の「サポーターのリーダーによる集団応援」それぞれ、そのスポーツ文化の中で成立した「応援の型」として、ファンの間で定着し愛されているから、それはそれでいいのだと思うけれど。

 ラグビーの応援は、静かに観戦するときは集中、どうしてもファンの力を届けたいときは、肉声の声や歌で自然発生で歌が歌われる、というスタイルが、世界の人にも受け入れられる応援スタイルのように思いました。

四本目 NHK BSで見直して

NHKBSで録画していたウェールズ×南アを見直す。

①ハーフペニー、ほとんどミスなかった。生観戦感想より、テレビ、録画で見た方が好印象だった。目立つキャッチミスは、最後の一本だけだった。直後感想投稿で「ミスが多かった」と書いてしまった。ごめんなさい。やっぱりあなたはすごかった。

②TV音声が応援の声を大きく拾っていたのと、観客席の南ア、ウェールズ人を選んでのアップのインサート多用で、会場で感じたより、「両国サポーター対決感」が出ていた。
 たまたま僕の周りの雰囲気が、割と静かにじっと見るオールドファンぽい人や、両チーム分け隔てなく好プレーに拍手したりする人、外国人の人も、冷静に感想を言ったりする人たちが多かったので、(キックが相手に当たるのが、双方に連続したときなんか、「School Boy Rugby Football!」とか大きな声で言っていた。)。で、「両国対決熱烈サポーター合戦」みたいな雰囲気ではなかったから。おお、テレビの方が緊迫した対決感が出ている(客席の話ね。)と思いました。

試合の中身について言うと、

③密集でのフォワード戦が多かったので、テレビの方が、誰が何をしていたかはよく分かる。ウェールズの4番、ボール、大活躍だったことが、テレビの方がよく分かった。南アのディアリエンディも、トライシーン以外もよく働いているなあ、と会場でも思ったが、テレビで見ると、それ以上にすごかった。

④ウェールズの1番 ウィンジョーンズ、3番フランシスのプロップコンビも、よく働いていたが、3番が強烈なフェルミューレン(南ア8番)のタックルじゃなくてねフェルミーレンが球もっていての激突で、肋軟骨あたりを痛めて交代したのも、ジョージノースの交代と同じくらい痛かった。

⑤南ア選手のあたりのきつさに対して、ウェールズの選手は、球に手をかけたり、確かな基本、細かな技術で対抗しているのがテレビではよく見えて、感動した。ラグビー国技の国の選手たちだなあ。

⑥テレビで、結果が分かってみていても、72分までは、ウェールズが勝ちそうな試合の流れだった。結果が分かっているのに、勝つとまた思って応援してしまった。

⑤勝負の最後の分岐点は、南ア最後の交代選手、フランカーのフランソワ・ロウが入ってきて、アラウィン・ジョーンズにがつつり絡んでノットリリースのペナルティを取ったところ。ウェールズに傾いていた流れが変わった。フランソワ・ロウは南ア、キャプテンのコリシに替わって入ったわけだが。疲れたキャプテンより、元気なフランソワ・ロウなのである。

⑤一方、テレビで見てわかったのは、ウェールズ、キャプテンのアラウィン・ジョーンズのひどい消耗具合。コリシ以上に疲れていた&おそらく体の方々が痛んでいたと思う。トライを取ったゴール前の攻防でも、そのちょっと前でも、密集に入ると、立ち上がるのもやっと、戻るのもフラフラという感じだった。しかし、ウェールズにはもうロックの交代選手はいなかった。でずっぱりのウェールズ選手の疲労、消耗、損傷状態は、テレビで見た方がむしろ生々しく伝わった。

さて、ここからが本論、問題提起です。

⑥試合の流れをもうすこし遡って、テレビ放送でもアナウンサーも興奮した、ウェールズのトライにつながるシーンの、二回の「ペナルティをPG狙わなかった選択」について。
 59分、18番、フランシスと交代で入っていルイスが、みごとに絡んでノットリリースを取ったところ。だいぶ角度も距離もあるところ、しかもダンビガー交代直後で、新たに入ったパッチェルが蹴るのか、ハーフペニーが蹴るのかまたはっきりしないときだったけれど、あそこですぐPGを蹴って16-12にして、あと20分の勝負に行くべきと、妻も私も思ったので、あそこがひとつの分岐点。

 それをタッチに切って、ラインアウトから、南アゴール前でフォワードで延々攻めた末、ゴール真ん前でオフフィートのペナルティをもらったのが、63分。
 NHKの解説、砂村さんも、「ここはフォワードも消耗しているから、冷静に、PGを狙ったほうがいいですね」と断言。

しかし、アラウィンジョーンズはスクラムを選択。

NHKの豊原アナも大興奮。会場の僕の周りも大興奮。

しかし、僕と妻は不満。妻は「PG狙え」と声を出す。

ここは、しむちょんはじめ、ラグビー詳しい人の意見もぜひ聞きたいところ。

みんな、前回大会の、日本×南アの、エディさんもPG狙えと言ったのに、リーチがスクラム選択して大興奮、攻めて成功して大逆転、の記憶があまりに強いから、ああいうところで「スクラムを選択するのがかっこいい選択。PGを狙うのは弱気」みたいになっちゃっているけれど、どうなんだろう。

結果はスクラムからの攻めで、トライ。そのあとの難しい角度からのコンバージョンもハーフペニーが成功。同点に追いつく。会場の盛り上がり最高潮。アラウィンジョーンズの勇気ある選択、大成功。たしかにそうだけれど。

でも、ここ、時間が63分、まだ15分以上、戦うところなんだから。

後半、南アがトライを取って、16-9とリードした後。南アは硬くなったのか、急にミスを連発して、流れが明らかにウェールズに来ている。

たしかに「流れが来ているうちに同点に追いつけたら最高」と思うけれど。

しかし、同点に追いついたら、南アの気持ちは「守りたい、逃げ切りたい」から「攻めてもう一回。ウェールズをぶっ潰す」に変わる。こうなると、体力とフォワード交代選手層で勝る南アがまた有利になってしまう。

むしろ、「逃げ切りたい弱気が出る南ア」「追いかける勢いを持続するウェールズ」という、この流れ最終盤までひっぱったほうがいいのじゃないかしら。PGを決めて16-12.これなら、「ワントライ、コンバージョンなしでも16-17で逆転」という状況で、最後の5分を戦える。その方がいいような気がするんだけどなあ。

「同点、さあここでいちから仕切り直し」になったら、南アの方が体力残っているのが。丸出しになる。
それよりは、「逃げ切りたい南ア、攻め続けるウェールズ」の流れのままの方が、ウェールズの根性が持続したのじゃあないかなあと、思うんだよなあ。準々決勝フランス戦も、ぎりぎり最後まで負けていて、最後に逆転したでしょう。あの流れの再現をしてほしかったなあ。

実際起きたのはウェールズの気持ち的に
「やった!追いついた」
「突き放された、がっくり」
「あせってもう自陣から脱出できない」

体力もそうだけれど、流れとメンタルが、最後の3分、持たなくなったということだったから。

妻は本当に不満そうで、スタジアムから小机の駅に向かう間もずっと「桐蔭の高校生なら、あそこはPG。間違いない。むしろ大学ラグビーだと、ああいうところ、トライを狙いがち。あたしは桐蔭の高校ラグビーが好き。トライを狙う方が勇気があるって、ラグビーは別に勇気のあるなしを競っているんじゃなくて、最後に1点勝っているという結果を求めるのが、決勝トーナメントの勝負でしょう。あそこはPGで3点しっかり取って、最後の最後に勝ちを狙う時間と状況。どうしても納得できない。」と力説していました。僕も、妻に賛成。だけれど。

「でもなあ、これだけ手負いの状態、主力選手が怪我だらけだと、ウェールズが勝ち上がっても、イングランドに勝つのは難しい感じがする。決勝がどうなるかわからない、という南ア×イングランドの対戦になるほうが良いとすると、あれはあれでよかったのかなあ。」と、さらに深いことを妻はつぶやいていましたが。たしかに、ウェールズには、この前のサッカーワールドカップのクロアチアのような魅力があるけれど、決勝ではボロボロになっちゃったんなあ。とはいえ、僕は、強みがはっきりしている南アの方が、エディさんは対策が立てやすくて、謎の精神力で強さを発揮するウェールズの方が嫌だったんじゃないかと個人的には思う。現在戦力で言えば、たしかに妻の言う通り、イングランド×ウェールズになっていたらイングランドがかなり有利だけれど。

いちおう、反対の意見、あれが、勝つための最善の選択だった、という意見も、当然ある。それはわかっている。アラウィンジョーンズは、おそらく自身の体力的限界、交代選手全部出し切った後の自分のチームと南アの状態を考えると、試合が先に進むほど、両者の戦力差が開くと考えて、今、流れが来ているこの瞬間にできるだけたくさん点を取るという選択を、勝つための最善手として、したのだ、という意見は当然あると思う。それはそうなのかもしれない。

それでも、あえてこういう問題提起をするのは、「PGを選ぶか」「トライを取りに行くか」については、特に決勝トーナメントでは「PGの三点を重視」した方が良いという見方もあるんですよ、そこは「勇気のあるなし」みたいな話とは違う、ということを言いたくて。

ということで、日本中の多くのラグビーファン大絶賛の「PGを狙わず、の選択を二回続けてトライを取ったウェールズの選択」に対し、おそらくかなり少数派として、異論反論を掲げているのですが。みなさんはどう思って観ていましたか。ご意見、いただけると、うれしいです。

五本目 日テレを見直して、中野謙吾アナを見直した。

昨夜の、南ア×ウェールズ戦、日テレの放送、録画してあったのを見直す。(NHKBSとJスポーツのものはすでに昨夜見た。)

日テレ局アナ、中野謙吾アナの実況が、なかなかに良い。日本戦だと、やはりちょっと興奮しすぎるが、昨夜のような、日本以外の国の試合の実況は、なかなかよくなっている。この半年の間の、努力改善勉強の成果、ちょっと感動。むちゃくちゃ批判して来たけど、ごめんなさい。

思い起こせば、8か月前。中野アナは、このワールドカップでの実況のための武者修行として、他局であるWOWOWでの、シックスネーションズ 2月10日の、アイルランド×スコットランド戦の実況に「出げいこ」のように挑戦、ということをしています。

それを視聴して、あまりの出来の悪さに私は怒り心頭、ツイッターに以下のような連投をしています。

「はらまさき
@wpboyoyon2月10日
WOWOWのアイルランド×スコットランドの実況、今年ワールドカップ実況の練習のためか日テレの中野謙吾アナが挑戦していた。本番で実況するのだと思うので、批判してもしかたないと思うので、改善してほしい点を
連投、書きます。

①高校サッカーでスポーツ実況修行をする日テレアナ共通の欠点として、「事前に下調べした知識、情報」を、一生懸命喋ろうとします。それは試合が緊迫していない時にしてください。プレーが緊迫、ターンオーバーして大きくゲインという場面で豆知識はいりません。

②「世界ランク二位、NZより強いかもしれないアイルランド」「日本と対戦する両国」という決まり文句、ザッピングで途中から見る人が多い地上波では20回繰り返す必要がありますが、WOWOWでは初めに一回言えば、繰り返す必要はありません。

③とにかく、今、ピッチ上で起きていること、ボールキャッチキック、タックル、ジャッカルなど、プレーに絡んでいる選手の名前を、淡々と呼び続けてくれると助かります。誰がキーマンで、誰がよく働いているかは、それを聞いているだけで分かってきます。

④サッカーでも、ラグビーでも。英語の実況はボールタッチしている名前を呼ぶことが8割。基本です。この試合をVTR再生して、その練習をするところから修行し直してほしいと思います。それだけで選手の特徴、チームの特徴が理解できると思います。

⑤アナウンサーが、わかりやすくボールに関わっている選手名を言っていくのに対し、解説者が、直接かかわっていない様に見えて、気の利いたプレーをしている、重要な選手、その役割を解説する。と、プレー全体がよく分かってきます。」

そして、中野アナに対しては、私以外にも、他にもツイッターで厳しい意見が相次ぎました。

「どてみかさ
@dotemikasa2月10日
事前に勉強するにしても、エピソード調べはネットを触ってできるもの。
競技の理解を深めるのは、たくさんの試合を観ることの積み重ね。
時間がかかるのはどちらか、大変なのはどちらか。すまんけど、大変な方を選んで、目の前の試合の実況を充実して欲しいんだわ。

サッカーなんかもそうなんだけど、実況が予習してきてるんだけど、それがスター選手中心のプロフィールやエピソードで、それを時に流れを無視して、一生懸命披露するということが頻発する

分かってない実況使うぐらいならジェイ・スポーツに返して欲しい」

「ranalita@min_4418  2月10日
放送がWOWOWになってから初めてみるシックスネーションズ。実況のテイストが地上波っぽいのね…

実況「サモア、ロシアには勝つとして」ってそういうの要らないよ?」

私の中野謙吾アナ攻撃は翌日も続く。
「はらまさき@wpboyoyon
イングランド×フランスの、住田洋アナ実況と較べて昨夜の日テレ中野謙吾最低っぷり再確認。ワールドカップで中野はじめ地上局アナが実況やるのなら、住田さんレベルになるよう特訓してほしい。ボールタッチ選手タックル選手名前を呼ぶ練習。予習豆知識我慢する修行

ボールタッチ選手タックル選手名前を呼ぶ、を原則とする実況をするからこそ、「今日はバスタローの名前をほとんど呼びません」と、フランスの中心選手が活躍できていないという今日の試合の特徴が浮かび上がるのである。」

さらにその後も、中野アナの名前は出さないが。
「@wpboyoyon 3月11日
アイルランド×フランス戦の赤平大アナ実況、今期シックスネーションズ実況の中で最高でした。選手名完璧、余計な小ネタ最小、競技理解深いのに、競技経験ないから「私のような素人が」と謙遜しつつ解説斎藤祐也氏の的確な戦術技術解説をタイミングよく引き出す。120点。」

そこから8か月。

昨日の中野アナの実況。ボールタッチ選手名を呼ぶ、解説の話を引き出す、に加え、ルールの解説を随時交える。予習エピソードは最小限、ゲームの流れを阻害しない。初心者も見る民放地上波の放送として、素晴らしい出来でした。

視聴率も、日本戦でないにも関わらず、19.5%。瞬間最高では26.9%。ツイッター上でも、日本戦でないにも関わらず、ラグビーの面白さに引き込まれた多くの、今大会ではじめてラグビーを見た人たちの声があふれていました。

ラグビー人気爆発の功労者の一人に、中野謙吾アナを挙げてもいいと思いました。

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うちの奥さんにに学ぶ、ラグビーを楽しむ、いい加減な、選手の覚え方。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

ラグビーは1チーム15人、交代選手もほぼ必ず使い切るから、23人。両チーム合わせて46人。全員の顔と名前を覚えようとすると、学校の一クラスの生徒を覚えるくらい。(僕らの時代の一クラス人数。今は30人学級。)なかなか大変。

でも「名前」は、そんなに重要ではなくて、見た感じとプレーの特徴さえ分かれば、楽しめる。

妻は、実生活で会う人の名前はちゃんと覚えるが、テレビに出てくる有名人芸能人や、スポーツ選手の名前を覚えるのがすごく苦手。ものすごくいい加減に、へんてこりんな名前で呼ぶから、誰のことを言っているか、わからない、いや、かろうじて分かるくらいの、間違え方をする。

前回優勝したNZオールブラックスのキャプテン、リッチー・マコーのことは、どうしても覚えられず、出てくると「あ、マッコイさんだ!」と嬉しそうに叫ぶ。マッコイさん。うん、かろうじて分かる。

2007年のワールドカップの時は、イングランドのジョニー・ウィルキンソンのことは「ウイルコおじさん」
 Jスポーツのアナウンサーや解説が、愛称、ウイルコって呼んでいて、当時のウィルキンソンは、もう大ベテラン過ぎて、チームとしては若返りを図ってウイルコのことは外そうとしていたのだけれど、やっぱりウイルキンソンに頼らないと勝てない。そんな状況を、僕と、熱心に見ていた次男が、「ウイルコおじさん、やっぱすげーなー。」と呼んでいたので、妻も「ウイルコおじさん」は今でも覚えている。

前々回、前回大会までの南アのウィングと言えば、ブライアン・ハバナ。圧倒的な俊足でトライを量産。ハバナについては名前を覚える気が全然なくて、見た目が似ているということで「小島よしお」。今回のワールドカップでNZ×南アを観に行くときも、「ねえ、小島よしおはもういないの?」って何度も聞いてくる。もう、いません。

今回のイングランド代表も、準決勝を見ながら、
トゥイランギは、「イングランドの田村」(ポジション違うのだが、初めにトライをして、大型ビジョンに大映しになった顔がイケメンだったから。)
シンクラーは「あっくん」(うちの長男ににている。)
ブニボラ兄弟は「なんかぷにぷに太っている兄弟」
ワトソンは「イングランドの松島幸太郎」(わりと正しい。)
フランカーのカリーは「ごう君(うちの五番目)と同じ21歳」
アンダーヒルは「アメリカ人」
イトジェは「ヘッドキャップのスーパーマン」
と、特徴を自分なりに頭に入れて、だんだん顔なじみが増えていく。
2番9番10番は、球を触る機会が多いから、自然に覚えるので、それ以外に特徴的な選手を覚えて注目するのがポイント。

チームの半分くらい、顔なじみになってくると、スポーツというのは、見ていて楽しくなってくる。

学校時代、クラス替えのあと、全員、名前を覚えるには、ちょっと時間がかかるけれど、半分くらい分かれば、日常、困らなくなるでしょう。ああいう感じ。

ちなみに、下に貼り付けたパワポは、準決勝用、妻に説明するために、ウェールズ選手 見分けて覚えるように作ったもの。

もう、あとは決勝戦と3位決定戦だけ、各チーム、一人二人だけしか知らないと、ちょっと詰まらない。各チーム、五、六人、顔見知りになっていると、見るのが楽しくなると思います。

ウェールズ選手覚え画像.jpg
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日本×南ア戦 生観戦後の感想。Facebookから転載。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

日本×南ア 生で観た状態での感想、分析。今から録画を見直す前に。

 ここまで日本戦は、対ロシア戦だけテレビ観戦、グループーリーグあとの三試合、アイルランド、サモア、スコットランド戦は、スタジアムの二階、三階席の上の方から観たので、密集の細かなところは分からなかったが、全体として起きていることはよく把握できた。

 ところが、なぜか、今日だけは、ゴールエリア脇の、一階席のかなり前の方の席。選手の顔までよくわかるかわりに、試合場全体で起きていることが把握しにくい席だった。
 子供の高校の試合を、観客席の無いどこかの高校のグランドで見る、全体が見通せない、そんなことを思い出させる視界、視野だった。そんな状態で見た印象、感想と分析。

 ティア1国のグループステージ、対ティア2戦というのは、相手の分析・対策よりも、自分の国の戦力の調子を見る戦い方をする。
 特にレギュラー以外の選手で、調子の良さそうな選手をチェックして、決勝トーナメントへの準備にする、という意識が強い。前回大会、日本が南アに勝てたのは、南アがそういう戦い方をしたからだ。
 主力を起用する場合も、相手対策の細かな戦術を駆使するというより、自国の得意とする正攻法、正常運転をして調子を上げていくという意識が強い。今大会、アイルランドに勝てたのは、アイルランドが、そういう、素直な正攻法の戦い方をしてくれたからだと思う。

 スコットランド戦が素晴らしかったのは、その勝利に価値があると思うのは、スコットランドが日本を徹底的に分析し、本気で勝ちに来たのに対して、日本が、本当に素晴らしいラグビーをして、勝ち切ったからだ。

 今日の南アフリカは、日本の強みを消す、日本の弱点を突く、本気の、決勝トーナメントの戦い方をしてきた。

 「日本の強みと弱点」。南アは、どうついたか。

①田村を狙う。これは、前大会の南ア戦で、日本が、南アのスタンドオフ(天才肌だが体が小さい)パトリック・ランビーを、徹底的に狙ったのと同じことを、田村に対してされた。田村が球を持ったらきつく当たる。攻撃のときは田村に向かってアタックしていく。

結果として、田村は前半でかなり傷んでいて、これまでのようなパフォーマンスを出せなかった。

②田村の、日本のパスのクセを分析して狙う。これは細かなことはもうすこしいろいろな試合を見直さないと分からないが、流→田村→後ろを回して、その外に長いパス、というここを狙って詰めてくる。

②-1だから、グラウンドの端のセットプレーから始まったプレーの場合、グラウンド左右の真ん中まで展開したところで、がっつりと捕まる、攻めが止まってターンオーバーされる。

②-グランド中央あたりから始まった攻めの場合、グラウンドの端、ウイングのところでインターセプトされて
鋭く逆襲される。

③モールを多用する。モールは同人数では反則なしでは止められないくらい強さに差がある。反則したら、タッチキックで前進して、ラインアウトでまたモールの繰り返し。
(スクラムも同様。スクラムで圧力をかけ、反則を誘う。)

③-2 日本はモールで反則しないで止めるためには、バックスも入らないと止まらない。入ると、外側が人数不足。モールで攻める、日本をモールに人数かけさせてから、外に回すと、最後のウイングのところで数的優位に必ずなる。

ウイングの能力、速さでは互角でも、からだの強さのところで、福岡側なら南アが優位に立てる。松島側であっても、数的優位があれば、トライまでいける。

④地面に置かれた球の攻防では、体格と当たりの強さで、日本より南アがかなり強い。そこに集中する。日本選手全員とは言わないが、タックルされてから、ボールを置く、それをすぐに他の選手がフォローする、という一連の流れに弱点をみせることがある。そこを徹底的に狙う。
ただし、前回ワールドカップで敗因となった、地面の球の攻防で反則をしない。その規律を守る。

前半のムタワリアがシンビンの時は、作戦をうまく遂行できなかったが、15人対15人の時間帯は、こうした作戦を完璧に遂行した。

もうひとつ、松島、福岡、山中にハイパント、キックを蹴ってそこを狙う、という作戦もあったが、これは、日本の三人のキャッチ能力が高かったために、そこから大きく崩されることは無かった。とはいえ、松島、福岡の守備負担が重くすることで、攻撃のための体力、瞬発力を削る、という意味で、これも意識して使っていた。

日本は、前半のうちは、なんとか耐えて、ロースコアの戦いに持ち込んだが、こうした南アの作戦は、日本選手一人一人に、かなり大きなダメージを与えたため、後半は、ついに、南アの攻撃に耐えられなくなってしまったのだった。

 日本は、世界の強豪国ティア1上位国が本気で対策をしてきたとき、強みをつぶし弱点を徹底的に突かれたときには、まだ、互角には戦えない、ということがはっきりした。(まあ、アイルランドでも、NZとはそうなっちゃったのだから、恥じることは無い。)
 前回大会では、「世界の強豪国が、全く対策をしないくらい舐められているので、そういう油断してくれたときには勝てる国」だった。
そこから、「世界の強豪国でも、本気で準備対策をしないと勝てない国」になった、という意味で、驚くべき大進歩だった。
 シックスネーションズの中の、スコットランドの位置づけを考えれば、「ティア1の中の下位の国とは全く互角の国」という位置づけを日本は得た。しかし、ティア1の中のさらに上位の国が、本気モードになったときには、まだちょと差があることも明らかになった。

 ここから先のワールドカップは、ティア1上位の国が、本当の本気になったとき。、ラグビーはどれくらいすごいことになるか、をこの目で見る、そういう楽しみが待っています。日本が負けてもワールドカップは続くのです。

追加コメント
東京スタジアムから、狛江駅に向かうシャトルバスの中で、妻と、「五番目男子の、高校最後の試合の後の気持ちに似てるかな、(ハンドボールで、惨敗で終わった)。二番目の時とは、ちょっと違うよね、(ラグビーで:県のシードになっていて、もうひとつ勝てば松島幸太郎のいた桐蔭とあたるところで負けちゃった。)。長男の最後の試合は(ラグビー)、三男の最後の試合は(柔道)と、なぜか、子供たちのラストゲームを見た後の感想と較べながら帰ってきました。そういう自分の子供の試合でさえ、「どう勝つか、なぜ負けたか、どうしたらいいか、これからどうするのか」、そういうことをずっと考えてきたから。スポーツの感動というのは、そういうことと真剣に向き合うところにしかない、と思うから。「感動を与えるため」ではなく、「勝つ」ために、「強くなる」ために、選手はやっていると思うから。「感動をありがとう」みたいなことを書く前に、まず、試合の中身、分析、考察をしたいと思ってしまうのが、僕の変なところだと思う。



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結果は素晴らしかった。が、それでも、やはり、選んでおいた方が良かったのでは、という選手と、その理由。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

Facebookのラグビーコミュニティで、「これだけ成績良かったんだから、事前にジェイミーの選手選択に文句垂れていた人は、総括すべし。」という意見が書かれていたので、書きます。投稿された方も、「そういう議論を理論的にきちんとすることで、初心者も、ラグビーを見る見方が豊かになるし、トップリーグを見るときに、今大会の代表だけでない、いろいろな選手がいることを知る機会にもなるから、という建設的な意図で書かれているので、それにこたえようとしたら、とんでもなく長くなったので、ブログに掲載します。



まずは自己紹介。私自身はラグビー未経験。単なる観戦ファン。
①神奈川在住、子供二人が桐蔭学園出身(本ちゃんのラグビー部ではない。一人は柔道部。もうひとりは桐蔭学園兄弟校 桐蔭中等教育学校のラグビー部出身)、次男は、県内の別の中高ラグビー部。中学時代はスクール選抜候補、高校では関東新人戦に出ている。花園はここ15年ほど、毎年、Jスポーツで1回戦から、全グラウンド全試合テレビ観戦している高校ラグビーファン。桐蔭出身の選手には、やはり特別な思い入れがある。しかし、花園で、そのほかの学校でも、いい選手を見つけるのが楽しみ。松島幸太郎のことは高校一年の神奈川県予選の初戦から、ビデオで撮影して分析している。(次男と対戦の可能性があったから。)。山中のことは東海大仰星のときからファン。

②大学ラグビーは、特にどこのファンということはないが、判官びいきで、ここ最近の帝京全盛期には、「アンチ帝京」、帝京に立ち向かう大学を応援していた。高校ラグビーで気に入った選手が活躍するのを楽しみにいろいろな大学を応援していた。対抗戦中心に見て、リーグ戦は東海の試合は欠かさずチェック、関西の試合まではなかなか手が回らない。ということで、好きな選手は関東の有力校の選手に偏りがある。アンチ帝京の気分がちょっと入ってしまう。

③トップリーグでは、トニーブラウン現役時代からのサンヨーファン→現在もパナソニックファン。ダン・カーターが来てからは、流石に神戸製鋼の試合も、欠かさず見るように。なんとなく、パナソニックを応援するということは、「アンチ・サントリー」な気分で見ていることが多い。

④スーパーラグビーもここ10年ほど、NZのチームを中心に、オンエアされる試合の半分くらいは観ている。北半球ハイネケンカップよりスーパーラグビーが好き。
⑤シックスネーションズとトライネーションズ→チャンピォンシップはずっと欠かさず全試合見ている。それ以外の主要国テストマッチも、Jスポーツ、DAZNで視聴可能なものはほぼ全試合見ている。

という感じで、年間200~300試合くらいをTVで見ている、TV観戦中心のラグビーファンです。好きなチーム、アンチなチームがあるので、当然、ジャパンに選びたい選手も、「好み、バイアス」がかかっています。が、単なる感情論でない理由を説明して、というご要望なので、説明します。

ちなみに、今大会、日本戦は、開幕戦ロシア戦以外、アイルランド戦、サモア戦、スコットランド戦、南ア戦、、スタジアムで観戦しています。


大会前から、私はジェイミーの選手選択にはいくつか不満があって、

山田か(藤田)、立川、山澤(か小倉順平)をスコッドに入れておいてほしかった。松田は大好きだけれど、センター、フルバックで起用するのは良いが、スタンドオフの二番手という起用は疑問。というのが、大会前の僕の希望、主張でした。Facebook個人ページではずっとそう主張していました。遡って読んでもらえれば、出てくると思います。

理由をちゃんと説明せよ、というのがご要望なので、説明します。

ウイング 山田 問題。
前回大会スコットランドに苦杯をなめさせられ、今回もグループリーグ最終戦がスコットランド。ここに勝負がかかることが予想された。
レイドローからウイングへのキックで徹底的に攻められた前回のことを考えると、今大会は、ウイングのハイパント、キックキャッチ・処理能力が絶対条件。アイルランド戦も同様の課題が出ることは必至。福岡、山田は、明らかに前回大会の悔しさから、この4年間、その能力を磨いてきた。藤田はそもそも身長もある。かつ、大舞台に強い。レメキは、攻める走力、前に向かう守備力は高いが、後ろに戻っての守備、ハイボール、キック処理はあまり強くない。レメキを外せとは言わないが、大会前に急遽数試合、試しただけのモエアキオラをスコッドに入れるなら、山田を入れておくべき。モエアキオラはたしかに今季チーフスで活躍したし、身長は高い(185cm)が、代表としての経験不足だし、ハイボールキャッチも不安定。ジェイミーの「体格優先、外人優先」選択癖としか思えない。(キックキャッチ能力が身長の問題でないのは、福岡、松島を見れば分かる通り。)結果論だが、結局モエアキオラは本番では「やぱり使えない」判断になった。山田がいれば、福岡、山田をウイングにして松島フルバック、という布陣で戦える時間が作れたはず。松島フルバックで福岡と距離が近い状態になった時が、ジャパンの得点力は最も高まる。

スタンドオフ二番手としての「山澤or小倉順平」選んでおくべき問題。
田村がスタンドオフの絶対的存在なのは、直前のテストマッチでもPNCでも明らかなので、それは問題ない。文句なし。しかし、スクラムハーフ3人に対し、純粋なスタンドオフが一人だけ、という選手選択は明らかにアンバランス。松田を、スタンドオフもセンターもフルバックもできるユーティリティプレーヤーとして置いてあるから大丈夫かというと、スタンドオフとしては、苦しいのでは。パナソニックでも、最近はほぼフルバックとしてしか出ていない。パナソニック内序列として、山澤の方がスタンドオフとしては上だったはず。昨シーズントップリーグ順位決定最終戦、山澤が怪我で不出場、松田がスタンドをして敗れた試合もしっかり見たが、スタンドオフとしての創造性、ゲームメイク力が、国内のトップリーグの試合でも、松田はしんどかった。トニー・ブラウンコーチもそのことは分かっていたのではないか。(松田はナイスガイだし、リーダーシップもあるし、チームに必要なことに異論はない。)
ワールドカップ本戦、ジャパンが大きくリードをしていての、終盤、守備力強化のために、タックルの強い松田を田村に替える、というのはありだが、リードされていて追いつかなければいけないときに、田村→松田の交代では、攻めの形が単純になり、戦えない。逆転に持ち込める可能性が低下する。
 田村が疲労やケガの場合の試合終盤の「攻撃のバリエーション、創造性」アップを考えると、山澤、または小倉順平という、サンウルブズで世界の強豪相手にも試してみた「天才型」のスタンドオフを、スコッドには入れておくべきだったと思う。たしかに彼らは体も小さいし、タックルも松田よりは弱いが、攻めに変化をつける能力は、田村と互角だと思う。今回の南ア戦、田村が引っ込んだ後、スタンドオフができるのが松田だけ、というのは、やはり苦しかったのではないか。

インサイドセンター 立川問題
立川を入れておいた方が、というのも、タックル、突破の強さだけでなく、(その能力であれば、中村亮土は、現在の田村よりも強力だと思うので、その選択は間違いではないと思う。)しかし、田村からの攻撃が抑えられたとき、インサイドセンターとして、自らの突破力だけでなく、パスのスキルが高いことから、「田村がダメだった時の攻めのバリエーション」を増やす、ウイングを活かすところまでのパススキルということで、立川は必要だったのではないか。

9番10番どちらかが、攻めの創造性が高くないと、攻めは形にならない。今回のジャパンは田村にその点を大きく依存していた。田村が徹底的に狙われる、壊されるという事態になったときのオプションとして、山澤、小倉順平、立川というのは必要な選手だったと思う。(サントリーファンの私の友人は、その機能として、「小野晃征!!」とずっと言っていた。やはり、最終的には、ファンとしての、好み、感情論になるのです。)



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スコットランド戦に対して、悲観的な理由。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

ラグビーワールドカップ、すでに日本が8強進出をほぼ決めたかのようにテレビが騒いでいますが、我が家ではかなり悲観的。よくて五分五分くらい、スコットランドとの相性を考えると決勝トーナメントに進める確率は3~4割くらいだろうと、妻とは話しています。
行けると思って、ダメだと、すごくがっかりするけれど、まだまだ全く油断できないと覚悟しておいて、行けたら、超うれしいでしょう。だから悲観的に考えることにしています。

2015年大会と今大会の勝敗と得点を見てみましょう。

2015年大会
スコットランド 39 – 16  米国   18-28 日本
スコットランド 16 – 34 南アフリカ 32-34 日本
スコットランド 36 – 33  サモア   5-26 日本
スコットランド 45     –      10 日本

決勝トーナメント
スコットランド 34-35オーストラリア

2019年大会
スコットランド ? – ?  ロシア    10-30 日本
スコットランド  3 – 27 アイルランド 12-19 日本
スコットランド 32 – 0   サモア    19-38 日本
スコットランド   ?    –      ?  日本

日本、スコットランド、両方から見て格上チームは2015が南ア、今大会がアイルランド。
日本は格上に両大会で勝ち、スコットランドは格上には両大会とも素直に負けている。

スコットランドから見ると格下、日本とはほぼ同格のチームが前大会はアメリカ、サモア。今大会はロシア、サモア。サモアは、試合によってムラが大きいので点差が大きくぶれているが、「格下、同格」相手には、スコットランド、日本はすべて勝っている。

ちなみに2015年決勝トーナメント、スコットランドはオーストラリアに一点差で負けているが、これは後に審判の誤審と問題になったPGでオーストラリアが終了間際に逆転したもので、内容的にはスコットランドの勝ちだった。

なんというか、スコットランドは、格上チームには分相応に負けてしまうが、その代わり、格下チームには絶対負けないぞ、という気構えが強いチームなのだ。

日本は、すこしでも緊張しすぎたり、慢心油断があれば、今大会ロシア戦前半、サモア戦前半のように、「負けるかも」という展開になってしまうチームなのだが。スコットランドは、格上に対しては、たまーにしか勝たないが、格下には、めったなことでは負けないのである。
(シックスネーションズで、イタリアにだけは絶対負けない、という気持ちでやっていることが、チームとしての固定した性格になってしまっているのでは、と思う。) 妻は、この感じを(スコットランド人が、という意味ではなくて、スコットランドというラグビーのチームとして)、スコットランドは性格が悪いからなあ、と言っている。

今大会、日本がアイルランドに勝っていて、スコットランドはアイルランドに負けているからと言って、そのことは、日本のスコットランドに対する優位を全く意味していない。それは前大会の南アとの関係を見ても明らか。格下には負けないプライド・気概の強いスコットランドは、日本にとっては、ひどく相性の悪い、やりにくいチームなのである。

もっと詳細に、戦力と戦術を分析しても、スコットランドは、日本にとって相性の悪い、戦いにくいチームなのは、何度か書いた通り。キック戦術の巧みさで、ハイボールキャッチが苦手な日本のバックを攻めてくる。漠然とではなく、そのとき出ているハイボールキャッチの苦手なバックスを集中的に狙って蹴ってくる。それを、9番、10番、15番、全員が正確に蹴れる。レメキは前に出るときはディフェンスも攻撃も圧倒的に強いが、背走してのディフェンスとハイボールキャッチはやや苦手。ラファエレ、山中は、ハイボールキャッチがときどき不安定。松島だけが安心できるが、そこは狙ってこない。

反対に、日本が多用するキック戦術は、ホッグと両ウイングの強烈なカウンターを誘発するリスクが高い。

サモア15番 ナナイウィリアムスや、ロシアの10番15番など、キックがうまいバックスがいると、日本は苦戦するのである。

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ラグビーワールドカップ 日本×ロシア 山中亮平が登場しただけで、僕が泣いたわけ。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

みんな、交代で後半途中から登場したフルバック、山中亮平がどんなに苦労した選手か知らない人もいると思うから、書きます。なんで、出てきただけで僕が泣いたか。
彼は、1988年生まれ、(うちの長男と同い年。柔道に挫折した長男は、高校時代は桐蔭の兄弟校、桐蔭中等教育学校で、ラグビーをやっていたので、私はそのころから、花園は一試合も欠かさず、見るようになっていた。)
 山中は、東海大仰星高校の10番として、花園で優勝、日本一になる。恵まれた体格(187センチ)、左右の足でキックが蹴れて、自在にゲームをコントロールする。足も速く。自分で球も運べる。天才、とだれもが思った。
早稲田に進んで、(当時、四年に五郎丸がいて、同じくらいの体格、五郎丸は右足、山中は左足のものすごいキッカー。大学一年からずっとレギュラー。在学中から日本代表に選ばれ、2011年に神戸製鋼に入って、2011年ワールドカップに向けての日本代表も有力視されていた。そんな中で行われた強化合宿中に、抜き打ちで行われた薬物検査で陽性。口ひげを生やそうと、ミクロゲンパスタ(毛生え薬)を塗っていたところ、禁止薬物男性ホルモンが含まれていた。
裁定は二年間の競技活動禁止。ワールドカップを目前に、神戸製鋼でもプレーできなくなった。
「ミクロゲン山中」とあだ名され、笑いものになってしまった。
しかし、山中はくじけない。2013年に制裁器官が終わると、神戸製鋼で再び活躍をするようになる。2015年ワールドカップに向けてチーム強化を図るエディージョーンズも、その活躍、才能、サイズを認め、日本代表合宿に呼ばれる。その明るいキャラクターをエディーさんは愛して、厳しいトレーニングの時ほど、山中を盛り上げ役としていじり倒し、チームの誰からも愛される存在になっていった。
しかし、10番には小野、田村、10番、センター両方できる立川、フルバックには五郎丸がおり、最後の最後に、スコッドから外れ、バックアップメンバーになった。
大会時には、山中が、選ばれた選手たちを明るく応援するVTR(エディさんにしごかれたときの思い出を演じる姿)が、テレビでも繰り返し流れた。しかし、その心中はどんなだったのだろう。

すでに2015年時点で、27歳。2019年には31歳になる。もうワールドカップはあきらめるかと周囲は思っても、山中はあきらめない。
神戸製鋼は2015年時点でも、同じく南アフリカ代表が漏れてワールドカップに出られなかったセンターの巨人、ベッカーら、強豪国選手がいたが、オールブラックスの9番エリス、南アのセンター、フーリーら、ら会の大スターがどんどん集まって、ついにはラグビー界の伝説、世界最高選手、ダンカーターまでが参加する「ドリームチーム」になって、ここ二年間ほどは、トップリーグ最強チームになったこと。その一員として、もともと持っていた「強者・勝者のメンタリティー」を、山中は思い出したようなのだ。
2016年から、日本は、自国ワールドカップに向けての代表強化のために、南半球の強豪チームが戦うスーパーラグビーに、「サンウルブズ」というチームとして参加することになった。当初は、日本代表とほぼ重なる選手でチームを編成することを考えていたが、(アルゼンチンは、代表とほぼ同一メンバーのジャガーズとして参加し、代表強化に成功した、という先行事例があった。)
しかし日本代表のレギュラークラスを常時、あまりに激しいスーパーラグビーに参加させると、怪我をしてしまうリスクが大きい。結局、サンウルブズには、日本代表まであと一歩、という日本選手が多く参加することになった。山中は、なかなか日本代表には呼ばれなかったが、このサンウルブズに参加する中で、世界に通用する手ごたえをつかんでいった。
なかなか代表に呼ばれない。呼ばれても出場機会がなかなか与えられない中で、日本最強となった神戸製鋼の不動のレギュラー、そして、サンウルブズで、世界と戦える実力を証明し続け、ついに、このワールドカップ直前のパシフィックネーションズカップで大活躍をして、ぎりぎりのところで、ワールドカップの代表スコッドに入れた。
そして迎えた、今日のロシア戦。しかし、同じくらいの実力の場合、なぜか外国人の方を信用、重用するジェイミージョセフの選手起用のクセのせいで、あれだけパシフィックネーションズで好調だったのに、先発のフルバックは、トゥポウ。
しかし、真面目過ぎるトゥポウは緊張でミスを連発。
後半、ついに、山中は、31歳にして、初の、ワールドカップのピッチに立ったのでした。

泣くでしょう。泣くよ、それは。

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阿部一二三 詩 兄妹の柔道についての、三男分析。超マニアックすぎるので柔道関係者限定。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

 世界柔道二日目を、桐蔭学園柔道部→早稲田大学(柔道会)出身の三男と観に行った。三男は大学時代、スポーツ専門チャンネルJsportsで放送されるグランドスラム、グランプリの放送前のフル国際映像を見て、全試合の決まり技を検討決定記録するアルバイトをしていたりしたので、日本だけではなく、世界の柔道のトレンドや情報にも詳しい。柔道の強さという意味では、桐蔭でも団体戦レギュラーには入れない、主力選手の付き人、練習パートナーをしながら自分の練習をする、という立場だった。81キロ級神奈川で何度かベスト8になった程度。桐蔭・相模のシード選手にはまず勝てないが、他の高校の選手にはまず負けない、というくらいの強さだった。(良い方も悪い方もときどき番狂わせはあった。)
中学時代は一学年下の同階級に、小中高と日本一になった山本幸紀がいて、全く歯が立たなかったが、日々、ともに練習した。城志郎も、もちろん同学年にいて、日々練習していた。高校時代は、最終的にシニアで世界のトップレベルになった選手たちの付き人や練習パートナーを務めていた。(一学年上の丸山選手の兄、剛毅選手や、同学年の韓国の、世界チャンピオン アンチャンリンのパートナーを務めていた。) 日本の、世界のトップを争う選手たちの技を、強さを日々体で感じることはしていた。
 そうした現役時代の「体でわかっていること」+、大学になっての、「世界の、日本のトップクラスの試合を、膨大な量、見て、分析する」という体験が合わさって、三男の柔道を見て分析して言語化する能力は、非常に高いと、わが子のことながら感心する。(親ばかだが。)中学の時の桐蔭の入試も、大学受験、早稲田にも(柔道の実績がなかったからということもあるが)、スポーツ推薦や推薦入試ではなく、普通に受験をして進学しているので、まあまあ普通に勉強もできるのである。
 
そんな三男が、試合を観戦しながら、阿部詩・一二三兄妹の柔道を分析解説してくれた内容が面白かった。私自身は、柔道は、この三男の付き添いをして近所の道場で見ているうちにやりたくなって、40歳になってから黒帯を取った、ほぼ素人。そのかわり、いろいろな格闘技を若いころから打撃系も含めちょろちょろとかじってきたので、そういう視点から、いろいろ意見を言って、およそ二人でこんな会話をした。忘れないうちに書いておこうと思う。

 相手が、阿部の釣り手を落とそうとする。阿部が釣り手を取ろうとする手の袖を持って、襟をつかませまいとする。阿部が引き手は持っている。この形は見た目「両袖」=両方の手とも袖を引きあっている状態。

 まず特徴は、両方が袖であっても、どちらも、両回りで袖釣りが楽にできるので、両袖が全く苦にならない。つまり、釣り手を落とすことに対戦相手が苦心集中しても全く効果がない。袖釣りも、腰に巻き付ける正当な袖釣り、背負いのようにまっすぐ気味に入るもの、内股のように足を使うものなど、多彩な投げ方ができる。
 こうして浮かせた相手を、正しい方向に空中でコントロールして畳に背中からたたきつける、「空中での投げる方向コントロール」能力が抜群に高い。


 次に、本来、釣り手であり、相手に落とされている手は、無理して袖を握っていなくても大丈夫。むしろ、その状態の方が、相手はまだ組手争い途中だと思っているために、そこからの攻撃が効く。

 両袖になっていても、腕ではなく、「手」の部分は自由になっている。ふつう、相手のどこもつかめていないというのは、柔道では不利なのだが、特に阿部詩の場合はこの状態を全く苦にしない。

 相手は、阿部の釣り手を落とそうと必死に袖をつかんでいる(力を入れて掴んで、離そうとしない)ということは、阿部側からすると、無理に袖をつかまなくても、自由に釣り手側の腕、手を動かすことで、相手の引き手をコントロールできる状態になっているということである。(掴ませた相手の引き手を自由にコントロールする。)

この状態で、袖を相手に掴ませた右手(自分の釣り手側だが、何も持っていない手)を、打撃でアッパーフックの角度で思いきり振りながら内股に入る。この技術自体は他の選手でもすることはある。しかし、他の選手だとなかなか決まらない。

 この釣り手側、フリーな腕の打撃の回転力を使って、体を大きく回転させ、立足を大きく外側に向くまで回して、腰を深く相手の重心下まで差し入れる。この「スピードと角度」が、阿部兄妹は独特なのだ。

 決まらない他の選手と、決まる阿部兄妹の違いは、「足の向き」「体の入る深さ」全体として投げる角度の違いである。

 阿部兄妹の柔道の基本はあきらかに「釣り込み腰」である。「袖」をよく使うのが妹で、順手で使うので、一般には「背負い」と言われる兄一二三の技は、正しくは、袖のつかないただの「釣り込み腰」である。

 いずれも、体側に相手を巻き付けるようにして投げる技。よって
①相手との間に自分の体が回転するスキマを作る必要がある。
②その隙間を、自由な釣り手の、豪快な打撃的動作とスビードで作り出し
③重心を相手の重心下まで一気に回しこみ
④そのために、足の角度は大きく外に開くまで回しており
⑤そうやって浮かせた相手は、きれいに重心下から浮いているので、投げる方向をコントロールしやすくなっており
⑥畳にきれいに背中を叩きつけることができる。

というのが、三男の分析する阿部兄妹の柔道の特徴。

今大会はそれに加え、こうした回転して前に投げる技を警戒されたときには
さきほど言った、自由な(相手に袖をつかませて、自分は相手の襟をつかんでいない自由な)釣り手を打撃的に使い、カウンターパンチを浴びせながら入る足技(大内でも、大外でも、小内でも、入る理合いは一緒)を強化してきた。何試合か、きれいに決まっている。これも、釣り手を取らなくてもOKで、打撃的に使う。

組技格闘技だと思っている柔道の中で、釣り手を取らずに相手に掴ませて、打撃的スピードと勢いで、相手との間合いを作ったり、自分を回転させたりして投げる、という、かなり他の選手とは異質な動作をしているのである。

だから、普段「二本持って投げる」「組んで投げる」という、組技意識しかない選手たちは、対応できずに一方的に負けてしまうのである。

 
以下の動画で見るとよくわかる。
https://www.youtube.com/watch?v=W8euRzwapYQ
 
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