NBAファイナル第四戦が、オールスターゲームみたいな点数になってしまった理由について。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

NBAファイナル、今日、第四戦で、今年のプレーオフで初めてウォーリアーズが負けた。
今日起きた、二つの異常事態について、考察します。キーワードは「審判の忖度と3ポイント」
① なぜウォーリアーズはここまでプレーオフ15連勝という異常なまでの強さを発揮したか。
② 今日の試合、前半だけでキャブズ86-68ウォリアーズという、異常なハイスコアゲームになったか。

私がNBAを真剣に見始めたのは、バルセロナ五輪のドリームチームブームの時から。、NBAファイナルはマイケルジョーダンのブルズ初めのスリーピートの三年目、チャールズバークレー率いるフェニックスサンズとのファイナルから。あれがたしか1992-3シーズンなので、かれこれ25年ほど、一試合も欠かさずファイナルは見てきている。
ジョーダン ブルズの後期スリーピートの時期が、最も熱心にNBAを見ていた。ウォーリアーズに破られるまでの記録だったシーズン72勝のシーズンは、ほとんどブルズの試合は(当時スカパーとNHKBSを併用すると、ブルズの試合は9割くらいの試合がオンエアされていた。)レギュラーシーズンもプレーオフも、オンエアされた試合は全部見たし、録画してライブラリー化してある。あの年のブルズでさえ、プレーオフ勝ち上がる途中で一敗しているし、ファイナルではゲイリーペイトン率いるシアトルスーパーソニックスと4-2、二敗している。
レギュラーシーズンの試合は、最近それほど真剣には見ていないのだけれど、スティーブカーのウォリアーズというのは、NBAの「審判忖度文化」に、決定的なダメージを与えつつあるというのがこれから書くことの論旨。
25年間NBAを見続けた経験から、私は以下のようにNBAというスポーツ文化を理解している。選手はまったくもって八百長的要素など寸分も無い、命をかけた真剣勝負をしているのだが、審判は、「ホームコートに微妙に有利な判定をすることで、プロスポーツ興行として盛り上げる」ということが暗黙の了解事項になっている、ホームのファンは、ホームチームがホームコートでは勝つところを見たい。そうすることですべてのチームのホーム興行集客が安定する。そのようにビジネスが成立するように、審判は「微妙なファールの笛の吹き方調整」をすることが、推奨されている、のか、黙認されているのか。とにかく暗黙のルールがNBAには存在する。
いちばん分かりやすいのが「ディフェンスファールか、オフェンスファールか」の調整。もうひとつは「テクニカルファールやフレグラントファールの取り方」。このふたつを、露骨にではなくても、微妙にホーム側に有利にするだけで、「大差の試合を接線に」「接戦で負けているホームチームに勝利を」という演出が可能になる。
そして、この「オフェンスファールかディフェンスファールか」ということが起きるシチュエーション=いちばん微調整、演出を加えやすいのは、リングに向かって果敢にドライブを仕掛けた選手に、ディフェンスが先回りして手を上げて脚を止める。「先にディフェンスが足を止めているところに攻撃選手がぶつかっていけばチャージング」「ディフェンスに入るのが遅れればディフェンスファール」というやつである。
マイケルジョーターンがリングに向かってダンクをしかける、でも、シャックが巨体にも関わらず軽やかにドリブルしてリングに向かっていく、こうした状況が、ホーム(ディフェンス)に有利に演出するなら、オフェンスファールを吹いてしまえば良いのである。ジョーダン・ブルズ全盛期も、シャック&コービー全盛期のレイカーズでも、ファイナルではそれなりに接戦になったのは、こういう調整がなされていたからだと思う。
 ところが、である。スティーブカーが起こした戦術革命、ウォーリアーズの3ポイント速攻多様戦術は、この「審判演出」がかけにくいことは、見ていればよくわかる。ウォーリアーズがアウェイで強すぎるときに、もし速攻でリングにドライブをかけてくれれば、オフェンスファールを吹くことで、ウォーリアーズが強すぎることを緩和調整することが可能なのだが、速攻でスリーを打つのでは、オフェンスファールはほぼ取れない。3ポイントがスパスパ入ってしまっては、審判による試合内容調整がかけられないのだ。ウォーリアーズが負けるとすると、審判調整ではなく、本当にたまたまカリーもクレイトンプソンも不調でスリーが入らない、というパターンしかない。今年はそこにケビンデュラントが加わったために、審判がどう調整しようとしても、ウォーリアーズが勝ってしまうことを阻止できなくなった、ということだと理解している。

今日の第四戦、せっかくのファイナルが、キャブズホームで、スイープされて終わってしまっては、ビジネスとして台無しなので、審判団は、もうかなり露骨にキャブズ有利な笛を吹きまくった。ドレモンドグリーンにはテクニカル、フレグラントファールを吹き、カリーにも1クォーターからファールを吹いた。これで互角の好勝負に持ち込める、と審判団も思ったに違いない。

しかし、大誤算が起きる。この日はウォーリアーズの3ポイントが絶不調。それに対し、キャブズの3ポイントがびっくりするほど絶好調。そもそもキャブズ劣勢を予想して、キャブズ有利になるように笛を吹いたのに、今日は普通にしていてもキャブズが好調、ウォーリアーズ(KDだけは好調を維持していたが、スプラッシュブラザーズ二人の3ポイントが不発)が不調だったからたまらない。前半だけで、まるでオールスターゲームのような点数になってしまった。今日の内容なら、普通に笛を吹いていれば、接線だがキャブズ勝利になる、という出来だったのに。スティーブカーの革命は、他のチームにも拡大しつつあり、キャブズも、レブロンとカイリ―のドライブを軸としつつ、3ポイント多用戦術でもあるわけで、今日の試合では、キャブズのドライブにはオフェンスファールは取らない、ディフェンスファールは厳しく取る」の方針の上に、キャブズの3ポイントが超絶好調だったため、あんな点数になってしまったのだった。

今日の前半の異常な点差が、図らずも「やっぱり審判はホームに有利になるように笛を調整するんだよな」ということをあらわにしてしまったのだよな、というのが、今日の試合の感想でした。

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