歴史的な一日に考えたこと その1 [文学中年的、考えすぎ的、]

 「韓国、北朝鮮」という、ひとつの民族の、分断国家統一の悲願という、情緒的側面で見るならば、両首脳の態度表情や言葉には嘘は無い、韓国民の反応を見るに、この一日というのが、「歴史的一日」であったことは間違いないと思う。(そのことにまで否定的態度を取るのは、分断の原因を作った日本の国民、政治家やメディアの態度としてよろしくないと思う。)
その一方での、国際政治の冷徹な現実から考えると、最終的には米朝会談で、CVID「完全、検証可能、不可逆的な方法による核・ミサイルの廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)を北朝鮮が呑むかどうか、呑まないと思われるので、そのとき関係各国がどう動くかまで見届けないと、評価は難しい。CVIDというのは、平たく言うと、「核開発、核保有が疑われる国に対し、核廃棄させる際、IAEAによるひと通りの査察がすんだ後も「まだどこかに核を隠し持っているはずだ。あそこが怪しい。こっちも怪しい」と無限に査察を要求する」(田中宇氏「米朝会談で北の核廃棄と在韓米軍撤退に向かう」より一部変更して引用)こと。イラクのフセインはこれをやられた後に、いちゃもんをつけられて米国に攻撃されて政権打倒された。カダフィはそうなるのが嫌で、CVIDを受け入れ、米国との関係を修復して政権維持をいったんは手に入れたが、アラブの春の余波で国内の反対勢力により倒された。
 北朝鮮、金正恩は、フセインにもカダフィにもならないためには、CVIDを受け入れないで、非核化をCVIDほどの厳密さでは行わせないけれど、いちおうポーズだけ取るあたりで納めて、隠して核保有を続けるのではないか、と見られている。トランプ、米国も、「まあ、そこを厳密にすると事がうまく運ばないから、形の上での核査察、一部核ミサイルの廃棄」あたりで手を打とう、と考えていたのではないか。そんな中、CVIDを執拗に強硬に要求しているのは、実は、日本の安倍政権である。先の日米首脳会談後の成果として、「CVID」をやるとアメリカに言わせている。(それが唯一最大の成果であろう。)
 「CVID」と「在韓米軍撤退」という最も難易度の高いふたつの実現、それをめぐる交渉カードとして米国側からは、経済支援、北朝鮮側からは拉致されている米国市民の解放というカードが使われる。日本がそこにどう絡んでくるかというと、「拉致されている米国市民の解放」の話が出た時に、「日本人の解放の話も一緒にしてね」とお願いをすること。それと引き換えに、米国が約束する経済支援を、日本がそのかなりの部分を一緒に負担する、というお財布になる、ということなのである。
ここで、韓国が「在韓米軍の撤退」と「CVID」をどう考えているか。これが正直、よくわからない。現在の韓国の安全保障視点と、「統一の実現」への道筋という視点と、「統一後にどの陣営の、どのような国になるか(米中ロとの政治的距離と、核保有国になるかどうか)」という視点で、答えがいくつもありそうなのである。
 政治的には中国に近い核保有国、民主政体と資本主義を維持した国家として統一する。東アジアの政治軍事バランスの中で「大国・強国」となるにはそれがいちばん。という選択肢が有力なのではないかと思うので、「在韓米軍は撤退、核は一部残して南北で共同管理」というのが、本当は韓国も望んでいることなのではないか、などという邪推もしてしまうのである。(この前紹介した韓国映画は、この筋立てに近かった。)

ちなみにその映画はこちら
ツイッターから。「@h_hyonee
核実験の中止が発表されたタイミングでアップされました。激動する情勢とシンクロした興味深い作品かと。見るなら南北首脳会談を前にした今!拙稿が参考になれば幸いです。 『鋼鉄の雨』は韓国版『シン・ゴジラ』か? 韓国映画に通底する“未完の近代”としての自画像」
http://realsound.jp/movie/2018/04/post-182974.html

というわけで、ここから私の感想。Netflixで、今、見ました、この映画。北の軍と党の関係とか、南北と中国の関係、韓国から見ての日米同盟とか、日本のことをどう見ているか、とか、いろいろ新鮮というか、なるほどというか。「シン・ゴジラ」に例えられるということは、韓国の人から見ても、全くのフィクションとはいえ、なにがしかの真実を感じる内容なのかと。純粋にエンターテイメントとしても良くできていました。
 
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