ワールドカップロシア大会 facebook投稿記録24 日本×ベルギー戦後の感想。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

原 正樹
7月3日 12:19 ·
 ツイッター上も「感動をありがとう」的コメントに一色になっており、敗戦敗因分析をするツイートは「今するな」と袋叩き状態になっている。直後のインタビューを聞いていた妻はインタビュアーに対して「まずは素晴らしい試合だったと褒めろ、ねぎらえ、いきなり反省のコメントを引き出すような質問の仕方、不愉快。」と怒っていたのであるが。 
 
それはもちろん、今の日本のできる最高の試合だったと思うし、これ以上なく楽しい、夢のような時間をくれた日本代表には本当に感謝と賛辞の気持ちでいっぱいだし、試合直後も家族で「いい試合だったよね」と言い合っていたのだが。

 でも正直なところ、終わった瞬間は、なんというか、感情があんまり湧いてこなかった。あえていえば、寂しいというか。悔しいではなく、寂しい。後半初めに二点続けて入った瞬間から、守り切れるとは到底思えず、二点返されることは覚悟していたけれど、三点目は日本に入ってくれるのでは、と期待していたのに。本当に本当に楽しい夢が覚めてしまった寂しさ。
 
 中学生のころ見た三菱ダイヤモンドサッカーだったか、とにかく昔のサッカー解説の定番に「1-0より2-0のリードの方が危ない」というのがあって、1-0だと緊張感が持続するが、2-0だと一瞬少し、勝てそうとか、邪念が入る、気が緩むとまではいかなくても、そこまでのチームと無意識に変わってしまう。そして1点返されると慌ててしまい、同点にされただけで負けた気分になり、結果、逆転されてしまう。その中学生のときの「二点差が一番危ない」がずっと頭の中をぐるぐるしていた。

 今、自慢してもしょうがないけれど、二日前に私はフェイスブック投稿で「勝機は2-2の打ち合いの展開になって、3点目がどちらになるかになったとき」という予測をしていたのだけれど。しかしここで想定していたのは、先に点を取られては、なんとか追いつく、追いすがるという、セネガル戦のような展開をイメージしていて、この場合のメンバー変更は、追いつくために攻撃の札を増やす、という展開。まさか2-0と先行するとは想像もしていなかった。早めに2-0とリードしたとき、という状況、これは西野さんはじめ戦略を考えるスタッフもそのときどうするか、具体的準備はそんなにしていなかったのではないかなあ。「攻めなければいけない点を取らなければいけない交代」はホンダ、岡崎の、香川、大迫との交代、あるいは乾と宇佐美の交代、ということで、成功先行体験を、コロンビア戦、セネガル戦でしているのだが。先発メンバーで二点もとってしまって、ただ守り切るためだけの交代というのは、やっていない。
 
 思えば、ベスト16ラウンド、日韓大会トルコ戦は0-1.南ア大会パラグアイ戦は0-0.日本がワールドカップのノックアウトステージで、リードするのも、それどころか点を取ること自体、史上初めてのことだった。日本のワールドカップ史上未経験の領域、状態を、後半残り30分間は戦うことになったのだよね。 

 二点先行されたベルギーはたしかに超本気モードで攻めかかってきたのだが、初め10分ほどは、運も味方し、なんとか耐えていた。本当に耐えきれなくなったのは、フェライニが投入されてから。
 フェライニは194センチもあって、そのうえ、やたらと運動量が多くてどこにでも顔を出す。ゴール前だけがこわいのではなく、すごく守りにくい。
 しかも、長身なのはフェライニだけでなく、ルカク190cm筆頭に右サイドのムニエも190センチ、ヴッツェル186センチ、交代で入ってきたシャドリ187センチ、セットプレーになれば上がってくるバック三人は190 189 186。残りもアザール以外は180センチ以上ある。
 対して、日本で185センチ以上あるのは吉田麻也だけ。もちろん長友がムニエやデブルイネと20センチの身長差に負けず空中戦で何度か勝っていたり、昌子は空中戦で負けていなかったり、がんばってはいたけれど。

 「守りを固めるから山口蛍」という条件反射的選択は、ベルギー相手には意味がなかったんじゃないかな、と思う。我が家居間でも、「守りを固めるなら前線一人下げて(原口が足をつっていたから)槙野をフェライニのマンマークに投入」と、妻と話していた。ホンダの投入は攻撃を維持し、敵陣にいる時間を長くする、セットプレーの脅威を増すという意味で、成功だったと思うけれど、柴崎→山口蛍の、ちびっこ同志交代で、日本のディフェンスが改善したとは思えない。山口蛍の出来が、ということではなく、交代選手選択が、ベルギーのフェライニ投入とかみ合っていなかったと思う。

 一人二人の長身選手を抑えることはできても、チームの半数以上が190cmのチームと戦うのは、難しいこと。そのチーム相手にリードを守り切ろうとしたときの対策。選手起用、交代策。引き分けが無く、延長戦~PK戦があるノックアウトラウンドで、早めにリードしたとき、そこから追いつかれたときの、戦術とメンタル。こういうことについて、経験が無かったから、負けたんだよなあと思う。

 最後のコーナーも、「ここで決めないと、延長戦になったら、攻められ続けて負けそうな気がする」と感じたから、上がる枚数が多くなって、カウンターをケアする枚数がたりなくなっていたんだよな。これも経験とか想定準備の不足とか、延長戦への不安とかのために、起きるべきして起きたことだったのだと思う。

 ドーハの悲劇、マイアミの奇跡を起こしたのに一次リーグ敗退したアトランタ五輪、ベスト16に出たところでトルシエ監督が「ここからはご褒美」と気が抜けた日韓大会とか、そういう失敗経験を積み重ねては、すこしずつ進化をしてきた日本代表。

 ポーランド戦の「敗戦維持での勝ち上がり」という稀有な体験を、ふだんサッカーを見ない人にまで議論が巻き起こりながら、その意味を理解する人が(全員とは言わないまでも)増えたこと。ノックアウトステージで「優勝候補に対して、試合残り時間をたくさん残し2点先行リードする」という夢のような状況が孕む怖さ。そこを戦う難しさ。そういう貴重な体験を、日本代表と、応援するサポーター、国民みんなが、たくさんたくさんしたロシア大会。楽しかっただけでなく、日本のサッカー文化がひとつ成熟し大人になりサッカー先進国、強国になっていくための、意味意義の深い大会でした。西野監督、代表チーム、選手、スタッフの皆さんに、本当に心からありがとうと言いたいです。

 日本代表は姿を消したけれど、今晩の、スウェーデン×スイスとイングランド×コロンビア、さらに週末からは、ワールドカップでいちばん楽しい、ベスト8の激突と、ワールドカップは続きます。日本代表への感謝を胸にしまいつつ、極上のサッカー体験を楽しみつくしましょう。

コメント欄から
元仕事先のKさん
延長に持ち込むってアイデアは、おそらく選手も監督も自信がなかったんだろうなって思ってしまいます。でも、それでも緊張の糸がきれるのが一瞬早かったのは残念です。大人の階段登った大会だったと思うことにします。でも、本当に悔しい。。。

原 正樹 悔しくて、寂しくて、直後は涙は出なかったけれど、今考えていると、涙が出てきます。


原 正樹
原 正樹 乾の無回転ミドルがサイドネットに突き刺さったとき、「ディ・マリアのフランス戦のゴールと同じくらい素晴らしい」と言いそうになって、「でも、アルゼンチン負けたから、不吉だから言うのやめとこう」と言葉を飲み込んだのだが、やはり思ってしまったのがいけなかったのだ。わたしのせいだ。負けたのは。


友人ヨゴくん
良い試合でしたね。16強、8強をあたり前にするには、大谷翔平クラスのスポーツエリートがあと3人くらい必要ですねww

原 正樹 大谷翔平(192cm)と八村塁(203cm)がサッカーをやってくれていたら、日本は優勝できたと思う。残念。


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