大坂優勝と、セレナのコーチング違反について。錦織ジョコビッチについても・ [スポーツ理論・スポーツ批評]

女子では四大大会以外では、コーチングが認められている試合もあるが、四大大会では男子も女子もコーチングはルール上は認められていない。とはいえ、ジョコビッチなんかは、うまくいかないと、コーチ・陣営のいる方に向かって大声で何かを言ったり不満の身振り手振りをよくする。一昨日の錦織戦でも、そんなシーンは何度も見られた。過去にも、ジョコビッチはコーチングを受けている疑惑を何度も指摘されている。(あのとき、コーチ陣は、反則を取られないように下を向いたり、指示と受け取られそうな身振り手振りは絶対しないようにしているのだろうか。)そんな、コーチング禁止ルールがあいまいな運用をされることが常態化している中で、今回の試合の審判が、いきなり厳密にそこをとったので、こんなことになったのだ。それはなぜか。理由があると思う。それを書いてみたい。
 ジョコビッチもセレナ・ウィリアムスも、感情を爆発させること、フラストレーションを爆発させることで、ゲームの流れを自分に引き寄せるという、日本人にはあまり理解できないタイプのメンタルコントロールをする選手だ。日本人にとっては、今回の大坂のように、どんなときにも冷静に、じっと耐え続けることがメンタルコントロールだという理解が一般的だ。しかし、ジョコビッチやセレナは、うまくいかない時は、不満をあらわにする。感情を爆発させる。ジョコビッチは審判に対してというのは少なくて、自分に対して、そして、コーチ陣陣営に対して、大きな声で不満を爆発させる。セレナは、審判にも平気で不満をぶつける。絶対的王者が、感情をむき出しにすることで、実は、対戦相手を威嚇威圧する効果もあるのではないかと思う。二人とも、感情を爆発させたことをきっかけに、試合の流れを自分に引き寄せることが、結構ある。
 今回のセレナは、第一セットから、明らかに劣勢だった。テニスの実力として、大阪が上回っていた。これは、セレナの予想外、想定外の事態だったと思う。今大会の大坂をずっと見てきたが、準決勝の、ブレークポイントを6回はねかえした第二セット第二ゲームが象徴するように、一戦ごとにプレーもメンタルも驚くほど成長し、決勝コートに上がった時には、セレナを圧倒する実力者になっていたのだ。
 その、想定外の、実力的に圧倒されている状態を跳ね返すには、セレナにはもう怒りを前面に出して周囲を威嚇することで、大阪を委縮させる、それしか、挽回する手が無かったのだと思う。主審は、その意図を見透かし、そのような卑怯な威嚇行為で劣勢を挽回しようとするセレナの行為に対して、ペナルティーで1ゲームを大坂に与える、という、異例に厳しい処置をとったのだと思う。
 表彰式でのセレナの「ブーイングはやめて」のスピーチで、セレナへの好意的評価をする意見が多く語られているが、「コーチングへの1ポイントペナルティ」をきっかけとして、怒りと威圧で試合の流れを引き寄せようとしたセレナの戦術は、褒められたものではないと思う。それに全く動じなかった大坂は本当に立派だった。
 錦織は、ジョコビッチを大の苦手とし、今回も、準決勝で完敗を喫した。今大会、錦織のプレー内容は、準々決勝まで、錦織史上最高といっていい充実した内容だったと思う。ジョコビッチ戦も、ひとつひとつのプレーの質では、ジョコビッチと互角に見えた。しかし、一試合トータルで見ると、勝負所での一ポイント、というところで、ジョコビッチのメンタル、集中の強さに、必ず負けてしまうのだ。錦織がジョコビッチの壁を超えるには。錦織がこの大坂ーセレナ戦をどんなふうに見て、何を考えるのか、とても興味がある。若い大坂と比して、28才の錦織が本当のトップにいられる年数はもう限られていると思うが、31才のジョコビッチもそれは同じ。二人がトップレベルでいるここ数年のうちに、再びグランドスラム決勝で対戦し、錦織の勝つところ、優勝するところが見たいなあ。そんなことを考えた、全米オープンでした。
関連ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180909-00096245/




nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。