『平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』 佐藤 健志 (著) なんで装丁がふざけているかは最後まで読んだらわかります。 [文学中年的、考えすぎ的、]

『平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』 単行本 – 2018/9/15
佐藤 健志 (著)

 今年一冊目の読書レポート。装丁も帯も、ものすごくふざけているが、最後まで読めば意図してのこととわかる。この作者、九十年代に『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』を書いた人だった。あのときから、興味領域とアプローチの仕方に親近感を覚えていたのだが、何十年もたって、たまたま読んだこの本も、考えていることもアプローチも、近いなあ、と思いました。政治学者、佐藤誠三郎氏の息子さんで、僕より、4学年ほど年下だろうか。東大教養学部国際関係論卒というのは、ごく普通の意味でも秀才だったのだと思う。
 今は保守派の論客としてけっこうたくさん本を書いているようだが、この本の紹介をツイッターでたまたま見かけるまでは全然気づかずにいました。保守派と言われているが、読んでみると、右派左派と分けることが不適切な、きわめて高度な政治文化評論でした。岸田秀『ものぐさ精神分析』加藤典洋『敗戦後論』『戦後入門』内田樹『日本辺境論』白井聡『永続敗戦論』、というような戦後論、対米従属問題を考えて読んできた人には必読の内容かと。そういう真面目な本と並べてみるには装丁が不適切に思われるだろうが。しかし、内容はそれらと並べて論じる価値があると思いました。
 一昨年ヒットしたアニメ映画とその原作漫画『この世界の片隅で』、小津安二郎『晩春』や、大岡正平『野火』など漫画映画文学などの読み解きを交えながら、(こういうアプローチがこの作者の特徴なのだと思う。学術論文としては、「その解釈は強引だろう」となるが、評論としては、わかりやすいし面白い」日本と米国の関係、戦後から現在に至る政治状況をきわめて論理的にとは明かしていく。
 政権支持右派にもリベラル左翼にも同じように辛辣な批判を浴びせている点で、どちらの立場の人にも是非とも読んでほしい。分析としては、ぐうの音も出ないくらい正しいと思いました。

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