読書記録2019年二冊目 『R帝国』 – 2017/8/18 中村 文則 (著)  [文学中年的、考えすぎ的、]

『R帝国』 – 2017/8/18
中村 文則 (著)

今年二冊目。
Amazon内容紹介
「舞台は近未来の島国・R帝国。ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。
だが、何かがおかしい。
国家を支配する絶対的な存在″党″と、謎の組織「L」。
やがて世界は、思わぬ方向へと暴走していく――。
世界の真実を炙り出す驚愕の物語。
『教団X』の衝撃、再び! 全体主義の恐怖を描いた傑作。」

ここから僕の感想。
この作者の小説、何冊か読んでいるけれど、いちばん良い。(この作者の小説が嫌いな人にもおすすめ)。
 絶望的に暗い状況を書くのがこの作家で、「あまりに救いがないよなあ」といつも思うのだが。この本は、この日本の、この世界の現実そのものの醜さを、これでもかというほど冷徹に露悪的に描いているので、つまり、あまりに現実そのものなので、この世界で生きていく以上、なんとか希望を残したいという作者の願いがにじみ出るものになっています。とはいえ、ほとんど救いは無いけれど。

 実力のある作家たちか、現実の政治状況に対する批判を直接扱った小説をたくさん書いた時代として、今の時代は文学史的に後から位置付けられると思う、と前にも書いたが、その時代を代表する小説として、評価されると思う。文学としても素晴らしい。
 僕は大江健三郎の小説では『洪水はわが魂に及び』がいちばん好きなのだが、読後感がなぜかあれに近い。絶望的なのだが、なんというか、美しさ、「清い」かんじが残る。大江作品では、その「清さ」は「自然や子供」の中にあるのだが、この作品では、人工知能の中にあるという、そこが極めて現代的でした。

現代人必読度120%


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