試乗もしないで、クルマを買う人 [広告と民主主義]

年明けからnoteも始めてみたのだけれど。ブログの方にも転載して保存しておきます。

スーパーで、日々の食品を買うとき。ベテラン主婦ならば、どこに何が売っているかは分かっていて、どれを選ぶかもほぼ決まっていて、その棚に近づくと、さっと値段を確認して(いつもより高いか安いか)、高いとやめたり、安いとまとめ買いをしたりするかを瞬時に判断していく。賞味期限を確認したり、周辺に気になる何かがないかをちらと眺めつつ、ひとつの商品を買うための判断に要する時間は5秒くらい。足を止めることもなくカートを押して店内をいつものルートで回りながら「5秒の、瞬間的に高度な選択行動」を続けていく。

 そんな「高度高速情報処理をするお買い物マシン」であるベテラン主婦に、選択肢に入っていない他商品や新商品を買わせるのは、きわめて難しい。

 新商品ならば、視界に入ってくる「何か見かけないが気になるもの=新商品かも」「それが私がわざわざ手に取る価値があるかどうか考えさせる」というチャンスもまだある。

 しかし昔からある商品で、すでに見慣れた風景・背景になってしまっている「買われない他社商品」に、再度買われるようになるチャンスは、ほとんどない。

 お酢で言えば、ミツカン。醤油で言えばキッコーマン。そういう定番かつ圧倒的トップシェアの「ふつうの商品」を買う習慣がついてしまっている人が、わざわざ二番手三番手の「普通の商品」にスイッチする意味はほとんどない。特売がかかって極端に安くなったときくらいしかチャンスはない。

 そもそもお酢について、醤油について、納豆について、たまごについて、人は、生活の中で、どれだけの時間、考えると思う?
 「冷蔵庫にある」「減ってきた」「そろそろ買わなきゃ」以外の、商品の質だとか、機能だとか、成分とか製法とか、そういうすこし「深いこと」を、人はどれだけ考えるか。そう、ほとんど、考えない。良く知っている、おそらくいちばんよく売れている、食べなれた味の、いままで特に問題なかった商品を、売り場への「5秒間」だけ考えて、そして、いつものものを買っていく。

 話が飛ぶが、こんなふうに、選挙の投票をする人が、かなりの比率いるんじゃないのかしら?特に何も考えず、「選挙にはいかなきゃね」と投票所に向かい(そこは真面目だったりする)、地元の選挙区の候補が、いつもの顔ぶれだ、と確認し、いつも投票する候補者に入れる。候補者が変わっていても、いつもの政党に入れる。

 いつもテレビで見る、いちばん売れている、いちばん多数派の、政党にいれておけば間違いない。今の生活に、それほど大きな問題はないから。

こういうと、「地方の、年配の人」の話だと思うかもしれないが、実は、都市部の、20代の、投票には行く真面目な人たちでも、この「一番よく知っている、今の多数派の、特に問題ない今の状況を作ってくれている(就職状況も悪くない)、与党に投票する」人が多いことが確認されている。

 と言われると、「いやーそんなことないよ。もっとちゃんと考えている」という人も多いかしら。選挙の投票は、100円200円の食料品を買うほど気軽な選択じゃないよ。少なくとも自分は違うよ。ちゃんと考えている。

 じゃあ、200万円、300万円する、自動車を買うときくらいは、考えたり、検討したりする?20万円の大型テレビやドラム式洗濯機を買うくらいは、比較したり検討したりする?

 ホームページで性能や機能をチェックする。自動車雑誌を読む。口コミサイトで乗っている人の評価をチェックする。その程度のことは、クルマを買うならする。クルマを買うときにする程度の情報収集や分析は、選挙への投票にあたってする。本当に、する?

 そもそもクルマを買うときにさえ、人は、ものをあんまり考えなくなっている。車の購買行動については、もう25年も調査し続けているけれど。メーカーの人もびっくり、事前によく調べもしない、ディーラーに行っても試乗もしないで、他社とも比較もせず、クルマを買ってしまう人が結構いる。増えている。

 スーパーでの食品を買うくらいの情報量で、クルマを買ってしまう人が増えている。いや、好き嫌いはもうすこしあるから、「服を買うくらいの感覚的な好き嫌いで」という方が正しいかもしれない。

 ディーラーの前を通りかかって、なんとなくふらっと入って、色が気に入ったので買いました。

 メーカーの開発の人がこだわっている、安全性も走りの性能も、燃費やなんやかんやも関係なし。デザインが気に入って、特に色が良かった。いまどき、どんな車でも性能にそんなに差はないし。

 クルマを、服を買うくらい感覚的な好き嫌いで選ぶ人が増えている。それと同じくらい、感覚的好き嫌いで、選挙の投票をする人が増えているのではないの。

 そして、クルマを買わない若者が増えているのと同様に、若者は選挙に行きもしない。クルマを買わないから、クルマのことなど知らないし考えない。それと同じくらい、政治のことなど、考えない。

 さてさて、今回がこのマガジンの初回ということで、僕の問題意識をここで一旦まとめておきたい。

 今年は参院選がある。衆参同時選挙の可能性もある。その結果によっては改憲発議から国民投票という流れもありうる。
nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。