結果は素晴らしかった。が、それでも、やはり、選んでおいた方が良かったのでは、という選手と、その理由。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

Facebookのラグビーコミュニティで、「これだけ成績良かったんだから、事前にジェイミーの選手選択に文句垂れていた人は、総括すべし。」という意見が書かれていたので、書きます。投稿された方も、「そういう議論を理論的にきちんとすることで、初心者も、ラグビーを見る見方が豊かになるし、トップリーグを見るときに、今大会の代表だけでない、いろいろな選手がいることを知る機会にもなるから、という建設的な意図で書かれているので、それにこたえようとしたら、とんでもなく長くなったので、ブログに掲載します。



まずは自己紹介。私自身はラグビー未経験。単なる観戦ファン。
①神奈川在住、子供二人が桐蔭学園出身(本ちゃんのラグビー部ではない。一人は柔道部。もうひとりは桐蔭学園兄弟校 桐蔭中等教育学校のラグビー部出身)、次男は、県内の別の中高ラグビー部。中学時代はスクール選抜候補、高校では関東新人戦に出ている。花園はここ15年ほど、毎年、Jスポーツで1回戦から、全グラウンド全試合テレビ観戦している高校ラグビーファン。桐蔭出身の選手には、やはり特別な思い入れがある。しかし、花園で、そのほかの学校でも、いい選手を見つけるのが楽しみ。松島幸太郎のことは高校一年の神奈川県予選の初戦から、ビデオで撮影して分析している。(次男と対戦の可能性があったから。)。山中のことは東海大仰星のときからファン。

②大学ラグビーは、特にどこのファンということはないが、判官びいきで、ここ最近の帝京全盛期には、「アンチ帝京」、帝京に立ち向かう大学を応援していた。高校ラグビーで気に入った選手が活躍するのを楽しみにいろいろな大学を応援していた。対抗戦中心に見て、リーグ戦は東海の試合は欠かさずチェック、関西の試合まではなかなか手が回らない。ということで、好きな選手は関東の有力校の選手に偏りがある。アンチ帝京の気分がちょっと入ってしまう。

③トップリーグでは、トニーブラウン現役時代からのサンヨーファン→現在もパナソニックファン。ダン・カーターが来てからは、流石に神戸製鋼の試合も、欠かさず見るように。なんとなく、パナソニックを応援するということは、「アンチ・サントリー」な気分で見ていることが多い。

④スーパーラグビーもここ10年ほど、NZのチームを中心に、オンエアされる試合の半分くらいは観ている。北半球ハイネケンカップよりスーパーラグビーが好き。
⑤シックスネーションズとトライネーションズ→チャンピォンシップはずっと欠かさず全試合見ている。それ以外の主要国テストマッチも、Jスポーツ、DAZNで視聴可能なものはほぼ全試合見ている。

という感じで、年間200~300試合くらいをTVで見ている、TV観戦中心のラグビーファンです。好きなチーム、アンチなチームがあるので、当然、ジャパンに選びたい選手も、「好み、バイアス」がかかっています。が、単なる感情論でない理由を説明して、というご要望なので、説明します。

ちなみに、今大会、日本戦は、開幕戦ロシア戦以外、アイルランド戦、サモア戦、スコットランド戦、南ア戦、、スタジアムで観戦しています。


大会前から、私はジェイミーの選手選択にはいくつか不満があって、

山田か(藤田)、立川、山澤(か小倉順平)をスコッドに入れておいてほしかった。松田は大好きだけれど、センター、フルバックで起用するのは良いが、スタンドオフの二番手という起用は疑問。というのが、大会前の僕の希望、主張でした。Facebook個人ページではずっとそう主張していました。遡って読んでもらえれば、出てくると思います。

理由をちゃんと説明せよ、というのがご要望なので、説明します。

ウイング 山田 問題。
前回大会スコットランドに苦杯をなめさせられ、今回もグループリーグ最終戦がスコットランド。ここに勝負がかかることが予想された。
レイドローからウイングへのキックで徹底的に攻められた前回のことを考えると、今大会は、ウイングのハイパント、キックキャッチ・処理能力が絶対条件。アイルランド戦も同様の課題が出ることは必至。福岡、山田は、明らかに前回大会の悔しさから、この4年間、その能力を磨いてきた。藤田はそもそも身長もある。かつ、大舞台に強い。レメキは、攻める走力、前に向かう守備力は高いが、後ろに戻っての守備、ハイボール、キック処理はあまり強くない。レメキを外せとは言わないが、大会前に急遽数試合、試しただけのモエアキオラをスコッドに入れるなら、山田を入れておくべき。モエアキオラはたしかに今季チーフスで活躍したし、身長は高い(185cm)が、代表としての経験不足だし、ハイボールキャッチも不安定。ジェイミーの「体格優先、外人優先」選択癖としか思えない。(キックキャッチ能力が身長の問題でないのは、福岡、松島を見れば分かる通り。)結果論だが、結局モエアキオラは本番では「やぱり使えない」判断になった。山田がいれば、福岡、山田をウイングにして松島フルバック、という布陣で戦える時間が作れたはず。松島フルバックで福岡と距離が近い状態になった時が、ジャパンの得点力は最も高まる。

スタンドオフ二番手としての「山澤or小倉順平」選んでおくべき問題。
田村がスタンドオフの絶対的存在なのは、直前のテストマッチでもPNCでも明らかなので、それは問題ない。文句なし。しかし、スクラムハーフ3人に対し、純粋なスタンドオフが一人だけ、という選手選択は明らかにアンバランス。松田を、スタンドオフもセンターもフルバックもできるユーティリティプレーヤーとして置いてあるから大丈夫かというと、スタンドオフとしては、苦しいのでは。パナソニックでも、最近はほぼフルバックとしてしか出ていない。パナソニック内序列として、山澤の方がスタンドオフとしては上だったはず。昨シーズントップリーグ順位決定最終戦、山澤が怪我で不出場、松田がスタンドをして敗れた試合もしっかり見たが、スタンドオフとしての創造性、ゲームメイク力が、国内のトップリーグの試合でも、松田はしんどかった。トニー・ブラウンコーチもそのことは分かっていたのではないか。(松田はナイスガイだし、リーダーシップもあるし、チームに必要なことに異論はない。)
ワールドカップ本戦、ジャパンが大きくリードをしていての、終盤、守備力強化のために、タックルの強い松田を田村に替える、というのはありだが、リードされていて追いつかなければいけないときに、田村→松田の交代では、攻めの形が単純になり、戦えない。逆転に持ち込める可能性が低下する。
 田村が疲労やケガの場合の試合終盤の「攻撃のバリエーション、創造性」アップを考えると、山澤、または小倉順平という、サンウルブズで世界の強豪相手にも試してみた「天才型」のスタンドオフを、スコッドには入れておくべきだったと思う。たしかに彼らは体も小さいし、タックルも松田よりは弱いが、攻めに変化をつける能力は、田村と互角だと思う。今回の南ア戦、田村が引っ込んだ後、スタンドオフができるのが松田だけ、というのは、やはり苦しかったのではないか。

インサイドセンター 立川問題
立川を入れておいた方が、というのも、タックル、突破の強さだけでなく、(その能力であれば、中村亮土は、現在の田村よりも強力だと思うので、その選択は間違いではないと思う。)しかし、田村からの攻撃が抑えられたとき、インサイドセンターとして、自らの突破力だけでなく、パスのスキルが高いことから、「田村がダメだった時の攻めのバリエーション」を増やす、ウイングを活かすところまでのパススキルということで、立川は必要だったのではないか。

9番10番どちらかが、攻めの創造性が高くないと、攻めは形にならない。今回のジャパンは田村にその点を大きく依存していた。田村が徹底的に狙われる、壊されるという事態になったときのオプションとして、山澤、小倉順平、立川というのは必要な選手だったと思う。(サントリーファンの私の友人は、その機能として、「小野晃征!!」とずっと言っていた。やはり、最終的には、ファンとしての、好み、感情論になるのです。)



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スコットランド戦に対して、悲観的な理由。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

ラグビーワールドカップ、すでに日本が8強進出をほぼ決めたかのようにテレビが騒いでいますが、我が家ではかなり悲観的。よくて五分五分くらい、スコットランドとの相性を考えると決勝トーナメントに進める確率は3~4割くらいだろうと、妻とは話しています。
行けると思って、ダメだと、すごくがっかりするけれど、まだまだ全く油断できないと覚悟しておいて、行けたら、超うれしいでしょう。だから悲観的に考えることにしています。

2015年大会と今大会の勝敗と得点を見てみましょう。

2015年大会
スコットランド 39 – 16  米国   18-28 日本
スコットランド 16 – 34 南アフリカ 32-34 日本
スコットランド 36 – 33  サモア   5-26 日本
スコットランド 45     –      10 日本

決勝トーナメント
スコットランド 34-35オーストラリア

2019年大会
スコットランド ? – ?  ロシア    10-30 日本
スコットランド  3 – 27 アイルランド 12-19 日本
スコットランド 32 – 0   サモア    19-38 日本
スコットランド   ?    –      ?  日本

日本、スコットランド、両方から見て格上チームは2015が南ア、今大会がアイルランド。
日本は格上に両大会で勝ち、スコットランドは格上には両大会とも素直に負けている。

スコットランドから見ると格下、日本とはほぼ同格のチームが前大会はアメリカ、サモア。今大会はロシア、サモア。サモアは、試合によってムラが大きいので点差が大きくぶれているが、「格下、同格」相手には、スコットランド、日本はすべて勝っている。

ちなみに2015年決勝トーナメント、スコットランドはオーストラリアに一点差で負けているが、これは後に審判の誤審と問題になったPGでオーストラリアが終了間際に逆転したもので、内容的にはスコットランドの勝ちだった。

なんというか、スコットランドは、格上チームには分相応に負けてしまうが、その代わり、格下チームには絶対負けないぞ、という気構えが強いチームなのだ。

日本は、すこしでも緊張しすぎたり、慢心油断があれば、今大会ロシア戦前半、サモア戦前半のように、「負けるかも」という展開になってしまうチームなのだが。スコットランドは、格上に対しては、たまーにしか勝たないが、格下には、めったなことでは負けないのである。
(シックスネーションズで、イタリアにだけは絶対負けない、という気持ちでやっていることが、チームとしての固定した性格になってしまっているのでは、と思う。) 妻は、この感じを(スコットランド人が、という意味ではなくて、スコットランドというラグビーのチームとして)、スコットランドは性格が悪いからなあ、と言っている。

今大会、日本がアイルランドに勝っていて、スコットランドはアイルランドに負けているからと言って、そのことは、日本のスコットランドに対する優位を全く意味していない。それは前大会の南アとの関係を見ても明らか。格下には負けないプライド・気概の強いスコットランドは、日本にとっては、ひどく相性の悪い、やりにくいチームなのである。

もっと詳細に、戦力と戦術を分析しても、スコットランドは、日本にとって相性の悪い、戦いにくいチームなのは、何度か書いた通り。キック戦術の巧みさで、ハイボールキャッチが苦手な日本のバックを攻めてくる。漠然とではなく、そのとき出ているハイボールキャッチの苦手なバックスを集中的に狙って蹴ってくる。それを、9番、10番、15番、全員が正確に蹴れる。レメキは前に出るときはディフェンスも攻撃も圧倒的に強いが、背走してのディフェンスとハイボールキャッチはやや苦手。ラファエレ、山中は、ハイボールキャッチがときどき不安定。松島だけが安心できるが、そこは狙ってこない。

反対に、日本が多用するキック戦術は、ホッグと両ウイングの強烈なカウンターを誘発するリスクが高い。

サモア15番 ナナイウィリアムスや、ロシアの10番15番など、キックがうまいバックスがいると、日本は苦戦するのである。

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ラグビー「代表に外国人が多い」について、いろいろ考えたこと。

Facebook投稿その①

盛り上がっているから、あんまり表立っていう人もいなくなってきたけれど、ツイッターでは「ジャパンには外国人がたくさんいるけれど、ラグビー強豪国は自国選手ばかりなんでしょ」という人もいるので、「いや、強豪国の中心選手も、外国人がたくさんいる、それがラグビー」ということを書いておきます。

帰化して国籍を変えなくても、3年以上居住してその国のチームでプレーしていれば、代表になれる。それがラグビーなので、日本だけじゃないです、外国人が中心選手、チームに不可欠な存在になっているのは。

いやいや、NZのオールブラックスは、ニュージーランド人だけなんじゃない?って思っていませんか。
 NZの国自体が、白人と原住民マオリのほかに、サモア、トンガ、フィジーの移民がたくさんいる国なので、実は代表もその人たちの混合混成です。たとえば、南ア戦で10番のモウンガ。まさに司令塔なのですが、お父さんとお母さんが、それぞれトンガとサモアの出身です。

「イオアネ」という名前の選手、オーストラリアのかつての名ウイングや、今回は惜しくも選ばれなかったNZのウイング リコ・イオアネなど、いろんな国のチームにいますが、イオアネはサモアの名前。サモア出身だったり、サモア移民の子供だったりします。

欧州の強豪国は、というと、イングランドのプロップとナンバー8のヴニポラ二人は、トンガ系。生まれはそれぞれ豪州とNZ。センターのトゥイランギはサモアのラグビー一家の出身。中心メンバーにトンガやサモア系がガッツリいます。

そもそも監督のエディさんもオーストラリア人だしね。

オーストラリアの中心、大黒柱、9番のゲニアは、パプアニューギニア出身。彼とかつてコンビを組んだクーパーはなんとNZ出身。今回のセンター、ケレビはフィジー出身。オーストラリアも、結構、外国人と外国系がたくさんいます。

昨日のスコットランド、一見、白人ばっかりだから、自国民だけ?かというと、マイトランドはNZ出身。

NZ出身や、南ア出身の白人が、欧州の強豪国代表にも結構います。

居住し、プレーしている国の代表になるか、母国の代表になるか、いろいろな選択肢の中で、それぞれが選んで、決めたからには、その国の代表として全力を尽くす。それがラグビーの文化なのです。

「日本だけが外国人だらけ」ではなく、どの国も結構、外国人だらけ。(そうでないアルゼンチンなんかが珍しい方。)

知らなかったり、見分けがつかなかったりするだけ。
日本人には、NZのマオリ系の人と、トンガ人とサモア人とフィジー人、見分けがつかないでしょう。(実はフィジーだけ、ちょっと民族的に別系統なのだけど。)
欧州強豪国の代表に、NZや南ア出身の白人が混ざっていても、見分けられないでしょう。

日本で普段からプレーしてくれて、日本の代表になりたいという外国人の人がたくさん出てきたっていうこと自体が、日本のラグビーが世界ラグビー文化の中で認められてきた証明なの。だから、「外国人がたくさんいるから、日本が強いって言っていいの?」に対しては、胸を張って、日本のラグビーが強くなったんだって、言っていいんです。

それにつけても、人口がたった10万人しかいないトンガ、30万人のサモア、80万人のフィジーが、世界中の強豪国の中心選手に何人も選手を出しちゃっているの、気前がいいよなあ、と思いませんか。

トンガなんて、日本代表とイングランド代表とNZ代表から代表選手を引き上げてひとつのチームにしたら、世界一だって狙えそうなのにね。




Facebook投稿その②、上の投稿の続きで考えたこと・
どなたかの投稿で読んだのだけれど、元投稿が見つからないので、うろ覚え引用。さとなおくんかな。無断引用になっていたら、ごめん。

観客席で出会った、元プレーヤーだった海外のラグビーファンから、「ラグビーをやっている仲間は、世界中でひとつのラグビーファミリー。だから、試合が終わればノーサイド。」なるほどなと思った。

 ここから僕の感想と思ったこと。そもそもひとつのファミリーなんだから、「今、近くにいるファミリーでチームを作るのが自然。」それが国の代表の要件に、国籍が入っていない、根本精神なんだろうなと思う。国の代表というより、「今住んでいる地域の代表」。
 アイルランド代表が、ラグビーだけ「北アイルランド(UK、イギリスの一部)とアイルランド共和国の共同チームであり、試合の前に歌われるのも、共和国の国歌ではなく、ラグビー代表アンセム「アイルランド コール」なのもそういうこと。
 国じゃない。その地域にたまたま一緒にいるラグビーファミリーが地域代表として戦うのが、ラグビー。ワールドカップもその延長。

ファンだって、ラグビーを愛するひとつの家族だから、客席は両国のファンがごちゃまぜになって応援する。

 もちろん、ラグビーにだって、「国と国の、プライドをかけた激突」という側面はあるのだけれど、それと同時に「同じラグビーを愛する仲間」としての気持ちがある。むしろ後者が相対的に強い。後者をより、意図的に尊重する文化なのだ。

 僕の中にもスポーツを見るとき、応援するときに、「自国とか、ひいきのチームを応援する」というのと、「そのスポーツが好きだから見る、応援する」と気持ちが両方ある。
日本代表を応援していると、「自国応援」その気持ちに100%飲み込まれる、ということは、よくある。

 しかし、「日本代表を応援する」っていう気持ちしか無かったら、日本代表が敗退したら、その大会への興味はなくなってしまうけれど、ラグビーという競技が好き、ラグビーファミリーの一員になれば、日本代表が負けた後も、大会全部を楽しめる。

 入り口は、「日本代表を応援する」「自国チームが活躍している」でないと、普通の人は入ってこないけれど、そうやって興味を持った人の何割かが、「ラグビーを愛するひとつのファミリーの一員」になってくれると嬉しいなあと思うのである。

 話がぽんと飛んで、柔道の話。NHKスペシャルで阿部一二三、詩兄妹を取り上げて、うっちゃんなんちゃんが司会で、という番組が一月ほど前にあった。】
 なんちゃんは(おそらくは台本、演出での役割として振られていたのだと思うが)、「日本柔道は一本を取る柔道、外国のJUDOは、力で、技をかけさせない、反則を狙うJUDO」という、ふたつを対立させて理解するような意見を繰り返し言うのだ。今どき古臭いステロタイプな意見を言うなあ、と不満に思いながら見ていたところ、解説役で出てきた野村忠宏さんが、「外国の人も、きれいな一本を取りたい、美しい技をきめたいという気持ちで柔道をやっている、それへのあこがれはある」ということを、きちんと発言していて、胸のつかえがおりた気がした。
 嘉納治五郎先生だって、今、海外で柔道を広めている日本人コーチの人たちだって、みんな、美しい柔道、柔道の本質を広めようと努力している。いったんはその土地その国の伝統格闘技と融合して、さまざまなスタイルの柔道が世界に根を下ろした。そして今、youtubeなどで、世界中の柔道家が、美しい技のイメージを共有し、研究できる時代になった。
 最近の柔道の国際大会を、日本人の試合だけでなく、外国人選手の試合もきちんと見れば、びっくりするほど美しい技の柔道をする柔道家が、世界中に登場して活躍していることがわかる。
 柔道だから、日本ガンバレ、日本人が金メダル取れ、だけではない。世界中の柔道仲間が、素晴らしい、美しい、そして多様な形で進化させた柔道をしていること。嘉納先生が生きていて、その様子を見たならば、きっと喜ばれると思う。
 いや、しかし、あの、いだてんの嘉納先生(役所広司演じる)だと「日本柔道はそれでも勝て。負けちゃいかん」というかな。でも、「自分が創始した柔道が、世界中でこれだけ愛され発展していることがうれしい」どっちが強いかなあ。

 ラグビーも、柔道も、直接、相手の体に、攻撃的に働きかけることが競技の根幹をなしている。競技特性がそうであるからこそ、相手を尊重し、尊敬し、敵ではなく、ひとつの競技、武道を愛する仲間だという意識を優先していく文化が必要なのである。相手がいないと、競技はおろか、練習だってできない。ものすごく強く攻撃的であると同時に、相手に怪我をさせない、正しい動作を常に行い、理性的に気持ちをコントロールする。
 戦う相手すら、「敵」であるよりも「仲間である」と考える文化。その考え方は、どんなスポーツ、競技にも存在するが、最も激しく直接的に攻撃的であるがゆえに、最も強く「対戦相手も仲間であること」を優先させようとする文化。ラグビーと柔道に共通するもの、私がこれら競技を愛する理由。
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ラグビーワールドカップ 日本×ロシア 山中亮平が登場しただけで、僕が泣いたわけ。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

みんな、交代で後半途中から登場したフルバック、山中亮平がどんなに苦労した選手か知らない人もいると思うから、書きます。なんで、出てきただけで僕が泣いたか。
彼は、1988年生まれ、(うちの長男と同い年。柔道に挫折した長男は、高校時代は桐蔭の兄弟校、桐蔭中等教育学校で、ラグビーをやっていたので、私はそのころから、花園は一試合も欠かさず、見るようになっていた。)
 山中は、東海大仰星高校の10番として、花園で優勝、日本一になる。恵まれた体格(187センチ)、左右の足でキックが蹴れて、自在にゲームをコントロールする。足も速く。自分で球も運べる。天才、とだれもが思った。
早稲田に進んで、(当時、四年に五郎丸がいて、同じくらいの体格、五郎丸は右足、山中は左足のものすごいキッカー。大学一年からずっとレギュラー。在学中から日本代表に選ばれ、2011年に神戸製鋼に入って、2011年ワールドカップに向けての日本代表も有力視されていた。そんな中で行われた強化合宿中に、抜き打ちで行われた薬物検査で陽性。口ひげを生やそうと、ミクロゲンパスタ(毛生え薬)を塗っていたところ、禁止薬物男性ホルモンが含まれていた。
裁定は二年間の競技活動禁止。ワールドカップを目前に、神戸製鋼でもプレーできなくなった。
「ミクロゲン山中」とあだ名され、笑いものになってしまった。
しかし、山中はくじけない。2013年に制裁器官が終わると、神戸製鋼で再び活躍をするようになる。2015年ワールドカップに向けてチーム強化を図るエディージョーンズも、その活躍、才能、サイズを認め、日本代表合宿に呼ばれる。その明るいキャラクターをエディーさんは愛して、厳しいトレーニングの時ほど、山中を盛り上げ役としていじり倒し、チームの誰からも愛される存在になっていった。
しかし、10番には小野、田村、10番、センター両方できる立川、フルバックには五郎丸がおり、最後の最後に、スコッドから外れ、バックアップメンバーになった。
大会時には、山中が、選ばれた選手たちを明るく応援するVTR(エディさんにしごかれたときの思い出を演じる姿)が、テレビでも繰り返し流れた。しかし、その心中はどんなだったのだろう。

すでに2015年時点で、27歳。2019年には31歳になる。もうワールドカップはあきらめるかと周囲は思っても、山中はあきらめない。
神戸製鋼は2015年時点でも、同じく南アフリカ代表が漏れてワールドカップに出られなかったセンターの巨人、ベッカーら、強豪国選手がいたが、オールブラックスの9番エリス、南アのセンター、フーリーら、ら会の大スターがどんどん集まって、ついにはラグビー界の伝説、世界最高選手、ダンカーターまでが参加する「ドリームチーム」になって、ここ二年間ほどは、トップリーグ最強チームになったこと。その一員として、もともと持っていた「強者・勝者のメンタリティー」を、山中は思い出したようなのだ。
2016年から、日本は、自国ワールドカップに向けての代表強化のために、南半球の強豪チームが戦うスーパーラグビーに、「サンウルブズ」というチームとして参加することになった。当初は、日本代表とほぼ重なる選手でチームを編成することを考えていたが、(アルゼンチンは、代表とほぼ同一メンバーのジャガーズとして参加し、代表強化に成功した、という先行事例があった。)
しかし日本代表のレギュラークラスを常時、あまりに激しいスーパーラグビーに参加させると、怪我をしてしまうリスクが大きい。結局、サンウルブズには、日本代表まであと一歩、という日本選手が多く参加することになった。山中は、なかなか日本代表には呼ばれなかったが、このサンウルブズに参加する中で、世界に通用する手ごたえをつかんでいった。
なかなか代表に呼ばれない。呼ばれても出場機会がなかなか与えられない中で、日本最強となった神戸製鋼の不動のレギュラー、そして、サンウルブズで、世界と戦える実力を証明し続け、ついに、このワールドカップ直前のパシフィックネーションズカップで大活躍をして、ぎりぎりのところで、ワールドカップの代表スコッドに入れた。
そして迎えた、今日のロシア戦。しかし、同じくらいの実力の場合、なぜか外国人の方を信用、重用するジェイミージョセフの選手起用のクセのせいで、あれだけパシフィックネーションズで好調だったのに、先発のフルバックは、トゥポウ。
しかし、真面目過ぎるトゥポウは緊張でミスを連発。
後半、ついに、山中は、31歳にして、初の、ワールドカップのピッチに立ったのでした。

泣くでしょう。泣くよ、それは。

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阿部一二三 詩 兄妹の柔道についての、三男分析。超マニアックすぎるので柔道関係者限定。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

 世界柔道二日目を、桐蔭学園柔道部→早稲田大学(柔道会)出身の三男と観に行った。三男は大学時代、スポーツ専門チャンネルJsportsで放送されるグランドスラム、グランプリの放送前のフル国際映像を見て、全試合の決まり技を検討決定記録するアルバイトをしていたりしたので、日本だけではなく、世界の柔道のトレンドや情報にも詳しい。柔道の強さという意味では、桐蔭でも団体戦レギュラーには入れない、主力選手の付き人、練習パートナーをしながら自分の練習をする、という立場だった。81キロ級神奈川で何度かベスト8になった程度。桐蔭・相模のシード選手にはまず勝てないが、他の高校の選手にはまず負けない、というくらいの強さだった。(良い方も悪い方もときどき番狂わせはあった。)
中学時代は一学年下の同階級に、小中高と日本一になった山本幸紀がいて、全く歯が立たなかったが、日々、ともに練習した。城志郎も、もちろん同学年にいて、日々練習していた。高校時代は、最終的にシニアで世界のトップレベルになった選手たちの付き人や練習パートナーを務めていた。(一学年上の丸山選手の兄、剛毅選手や、同学年の韓国の、世界チャンピオン アンチャンリンのパートナーを務めていた。) 日本の、世界のトップを争う選手たちの技を、強さを日々体で感じることはしていた。
 そうした現役時代の「体でわかっていること」+、大学になっての、「世界の、日本のトップクラスの試合を、膨大な量、見て、分析する」という体験が合わさって、三男の柔道を見て分析して言語化する能力は、非常に高いと、わが子のことながら感心する。(親ばかだが。)中学の時の桐蔭の入試も、大学受験、早稲田にも(柔道の実績がなかったからということもあるが)、スポーツ推薦や推薦入試ではなく、普通に受験をして進学しているので、まあまあ普通に勉強もできるのである。
 
そんな三男が、試合を観戦しながら、阿部詩・一二三兄妹の柔道を分析解説してくれた内容が面白かった。私自身は、柔道は、この三男の付き添いをして近所の道場で見ているうちにやりたくなって、40歳になってから黒帯を取った、ほぼ素人。そのかわり、いろいろな格闘技を若いころから打撃系も含めちょろちょろとかじってきたので、そういう視点から、いろいろ意見を言って、およそ二人でこんな会話をした。忘れないうちに書いておこうと思う。

 相手が、阿部の釣り手を落とそうとする。阿部が釣り手を取ろうとする手の袖を持って、襟をつかませまいとする。阿部が引き手は持っている。この形は見た目「両袖」=両方の手とも袖を引きあっている状態。

 まず特徴は、両方が袖であっても、どちらも、両回りで袖釣りが楽にできるので、両袖が全く苦にならない。つまり、釣り手を落とすことに対戦相手が苦心集中しても全く効果がない。袖釣りも、腰に巻き付ける正当な袖釣り、背負いのようにまっすぐ気味に入るもの、内股のように足を使うものなど、多彩な投げ方ができる。
 こうして浮かせた相手を、正しい方向に空中でコントロールして畳に背中からたたきつける、「空中での投げる方向コントロール」能力が抜群に高い。


 次に、本来、釣り手であり、相手に落とされている手は、無理して袖を握っていなくても大丈夫。むしろ、その状態の方が、相手はまだ組手争い途中だと思っているために、そこからの攻撃が効く。

 両袖になっていても、腕ではなく、「手」の部分は自由になっている。ふつう、相手のどこもつかめていないというのは、柔道では不利なのだが、特に阿部詩の場合はこの状態を全く苦にしない。

 相手は、阿部の釣り手を落とそうと必死に袖をつかんでいる(力を入れて掴んで、離そうとしない)ということは、阿部側からすると、無理に袖をつかまなくても、自由に釣り手側の腕、手を動かすことで、相手の引き手をコントロールできる状態になっているということである。(掴ませた相手の引き手を自由にコントロールする。)

この状態で、袖を相手に掴ませた右手(自分の釣り手側だが、何も持っていない手)を、打撃でアッパーフックの角度で思いきり振りながら内股に入る。この技術自体は他の選手でもすることはある。しかし、他の選手だとなかなか決まらない。

 この釣り手側、フリーな腕の打撃の回転力を使って、体を大きく回転させ、立足を大きく外側に向くまで回して、腰を深く相手の重心下まで差し入れる。この「スピードと角度」が、阿部兄妹は独特なのだ。

 決まらない他の選手と、決まる阿部兄妹の違いは、「足の向き」「体の入る深さ」全体として投げる角度の違いである。

 阿部兄妹の柔道の基本はあきらかに「釣り込み腰」である。「袖」をよく使うのが妹で、順手で使うので、一般には「背負い」と言われる兄一二三の技は、正しくは、袖のつかないただの「釣り込み腰」である。

 いずれも、体側に相手を巻き付けるようにして投げる技。よって
①相手との間に自分の体が回転するスキマを作る必要がある。
②その隙間を、自由な釣り手の、豪快な打撃的動作とスビードで作り出し
③重心を相手の重心下まで一気に回しこみ
④そのために、足の角度は大きく外に開くまで回しており
⑤そうやって浮かせた相手は、きれいに重心下から浮いているので、投げる方向をコントロールしやすくなっており
⑥畳にきれいに背中を叩きつけることができる。

というのが、三男の分析する阿部兄妹の柔道の特徴。

今大会はそれに加え、こうした回転して前に投げる技を警戒されたときには
さきほど言った、自由な(相手に袖をつかませて、自分は相手の襟をつかんでいない自由な)釣り手を打撃的に使い、カウンターパンチを浴びせながら入る足技(大内でも、大外でも、小内でも、入る理合いは一緒)を強化してきた。何試合か、きれいに決まっている。これも、釣り手を取らなくてもOKで、打撃的に使う。

組技格闘技だと思っている柔道の中で、釣り手を取らずに相手に掴ませて、打撃的スピードと勢いで、相手との間合いを作ったり、自分を回転させたりして投げる、という、かなり他の選手とは異質な動作をしているのである。

だから、普段「二本持って投げる」「組んで投げる」という、組技意識しかない選手たちは、対応できずに一方的に負けてしまうのである。

 
以下の動画で見るとよくわかる。
https://www.youtube.com/watch?v=W8euRzwapYQ
 
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城志郎勝った。について考えたこと。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

Facebookに投稿したものを転載。

柔道世界選手権二日目の感想。

柔道世界選手権、優勝した丸山城志郎と中高4年間、桐蔭学園柔道部で同期だった三男と応援に武道館に行ってきました。
(四年間と中途半端な長さなのは、城志郎が、中3で相模原の強豪、相原中に一年間転校。高校で桐蔭に戻ってきたものの、高3で沖学園に転校したため。少しでも練習環境に不満なら躊躇なく転校しちゃう勝負の鬼の親子だった。ちなみにお父さんはバルセロナオリンピック代表、今日もテレビに映ってた。)

城志郎が阿部一二三に勝ったときには、私は絶叫、うちの三男は泣いていました。城志郎には一歳年上の兄、剛毅くん、(81キロ級の世界ジュニア王者、シニアでも階級の日本王者になっている)がいて、三男は高校時代、剛毅くんの付き人をずっとやっていたので、丸山兄弟の毎朝の自主練習に一緒にくっついてやっていた。城志郎のことはずっと近くで見ていたので、感極まったのでしょう。

ちなみに決勝の対戦相手、韓国のキムリーマンは、在日三世で、相模原の相原中の一年先輩。中学時代の同門、先輩後輩対決。

ツイッター上には今の日韓関係から、心ない書き込みもありましたが、昔からの仲間同士の、正々堂々とした気持ちの良い決勝でした。キムリーマンと城志郎が中学同門なのは柔道関係者には知られていることですから、フジテレビは、こんなご時世だからこそ、ちゃんとコメントしてほしかったな。

決勝は城志郎はリラックスしてのびのびやっていたので、見ていて不安はなかった。それでも優勝の瞬間は、私はまた絶叫、三男はまた涙。

 あと、阿部の3位決定戦、相手のイタリア、ロンバルドのゴールデンスコア延長での一本(抱き分かれという技)がビデオ判定で取り消されたのは誤審というのが私の印象。少なくとも技ありはあり、その時点でロンバルドの勝ち。会場現地でもブーイングが海外勢のファン、応援団からかなり大きく出ていた。地元びいきの汚い判定と批判されても仕方がない。ロンバルドは世界ジュニア王者で、パリグランドスラムで阿部に勝っている。阿部は、丸山に三連敗、ロンバルドにニ連敗でメダル無しで終わったら、五輪代表争いから大きく後退することになり、大人の事情(JOCの五輪シンボルアスリートとなり、多くの広告主の広告塔になっている。)で、それは避けたい圧力がビデオ判定に働いたのではと勘繰られても仕方ない。(追記 日本唯一の柔道専門サイト ejudo 編集長 昨日も会場で解説をしていた古田英毅氏も、同サイト記事において、明らかに一本があったと書いている。)
 とはいえ、阿部本人には何の咎もない。試合後、阿部が悔し涙を流していたのは、丸山に負けただけでなく、ロンバルドとも判定次第では負けと言われても仕方ない内容だったことを、自分自身がよく分かっていたからだと思う。

阿部一二三本人は、柔道はめちゃくちゃ強いが、髪形も気になる、かっこもつけたい、柔道のこと以外は、そんなに深く考えない、いまどきの若者。そこがいいところだったのに、JOC、電通、そういうオリンピックを盛り上げて商売にしたい大人たちが、阿部一二三に、背負わなくてもいい重圧を背負わせている。これは、本当に可哀そうなことなのではないか。五輪シンボルアスリートの自分が、負けて、五輪代表を逃すことなどあってはならない。取材だの撮影だの、練習以外の雑事にも引っ張りまわされる。いままで私は「メディアも全柔連も、阿部がすでに代表に決まったかのように扱う」ことを、城志郎応援の立場から批判してきたが、阿部一二三側の立場にたっても、それは20歳そこそこの若者に、背負わなくてもいい負担、重圧を押し付けているのではないか。そこから解放してあげて、とにかく、勝負に集中できる環境を作ってあげるべきではないかと思います。

 そんな中、妹、阿部詩は、異次元の強さでした。

三男が阿部兄妹に共通する、かなり特異な、他に類のない技術的特徴を観戦しながら解説してくれたので、それは今度ブログに書こうかと思っています。


この投稿に電通先輩Nさんからの質問
「よく知らなかったけど、遅咲きだというので丸山選手を応援してました。最初に投げを食ってかろうじて足で着地して、だいぶ痛そうだったけど、中盤からは痛みが消えたのかアドレナリンが出たのか、急に体が前に出るようになって勝つ雰囲気が出てきたように見えました。」

それへの私の回答
「 あまりにドラマチックな試合でしたが、なんで急に動けるようになったか、私はこう想像しています。膝の①内副側靭帯を痛めた(が断裂はしていない)と同時に、②昔断裂して手術した十字靭帯の古傷が痛んだのだと思います。私も十字靭帯古傷と、手の親指靭帯損傷古傷を持っていて、何かの拍子にぐきっとやってしまうと激痛でしばらく動けないのですが、あれ、しばらくするとなんとか動けるようになるんです。「靭帯断裂」なら、もう動けないですが、古傷再発激痛だと、そうなんです。そうであるにせよ、激痛の数分間を、指導を2個で、相手の技も食わずに耐えきるのは常人のできることではありません。そういえば、私と三男は、城志郎が十字靭帯断裂の大けがをした何年か前の東京グランドスラムも二人で観戦応援していました。三男は内副側靭帯の完全断裂もしていますが、十字靭帯と違って、うまく治療すると、手術をしなくても回復、再建するのです。今回の優勝で、年末の国内のグランドスラム(大阪)で、城志郎が優勝すると、おそらく五輪代表に内定すると思います。それまでに膝を完治させてほしいなあ。」
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テレビでは全く放送されなかった男子81キロ級の複雑な国際政治的背景。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

昨日の男子81キロ級は、柔道と国際政治について、考えさせる非常に難しい状況だった。日本人だけを取り上げるような放送ではなく、男子の決勝トーナメントとともにその状況をきちんと伝える、という放送も、作ろうと思えば作れたのだ。そのことについて、解説します。

 優勝したのがイスラエルのムキ。決勝の相手はベルギーのカッセだったが、この階級の昨年世界王者、今回も優勝候補筆頭だったのは、イランのモラエイ。世界ランクもモラエイが1位、ムキが2位。

昨夜は、イランのモラエイは準決勝でベルギーのカッセに敗れたため、イスラエルのムキとは対戦することはなかった。

 イラン政府は、政治的宗教的に対立関係のあるイスラエル選手との対戦を認めていない。そのため、長くなりますがモラエイ選手についてのWikipediaから引用します。

「グランドスラム・アブダビでは準決勝でベルギーのマティアス・カスと対戦するも、開始早々に左足首を挫いたとして棄権負けになった。しかし、IJFからは今回の一件が決勝でイスラエルのサギ・ムキとの対戦を避けるための虚偽申告だと判断されることはなかった[7][8]。なお、2018年には世界ランキングの年間1位となった[9]。2019年のグランドスラム・パリでは準々決勝で世界ランキング209位に過ぎないカザフスタンのラスラン・ムサエフに開始早々一本背負投で敗れたが、続く準決勝でイスラエルのサギ・ムキと対戦することを避けるための意図的な敗戦だったとの疑いがもたれている。モラエイはその後の3位決定戦でリオデジャネイロオリンピックで優勝したロシアのハサン・ハルムルザエフを小外刈で破った直後に右膝を負傷したというアピールをして医務室に向かったため、今大会で2位になったムキが待つ表彰台に姿を現すことはなかった。この一連の事態にIJF会長であるマリウス・ビゼールはTwitter上で、選手がいかにして敗れたかを説明するのは容易なことではないので、注意深くこのケースを分析して、この問題の正しい解決方法を見出すように努めると述べた。その一方で、選手の望みと国の方針が齟齬を来たす場合、自身や家族の立場を考慮すればモラエイが国の方針に背くのはほとんど不可能だとの見解も示した[10]。グランプリ・フフホトでは決勝で藤原を背負投で破って優勝したが、グランプリ・ザグレブでは準決勝でカナダのアントワーヌ・ヴァロア=フォルティエに技ありで敗れて3位だった[1]。東京で開催される世界選手権に出場予定だったものの、イスラエルの選手と対戦する可能性が少なからずあることから、イスラエル選手との対戦を容認しないイラン政府の政策に従わざるを得ず出場しないとも報じられたが、結果として参加することになった。」

これだけ複雑な事情を抱えていることを考えると、イランのモラエイが、昨夜の準決勝は、きちんとベルギーのカッセと戦った上で負けたのか、それとも勝つとムキと対戦せざるを得ない。それは国が許さない。だから負けたのか。というようなことも、きちんと試合を見て確認したくなります。モラエイは三位決定戦にも負けたのも、ムキと同じ表彰台に乗ることが許されていないからだったのか、ということも、上のWikipediaでの解説によると、可能性としては否定できない。(しかし、さきほどの投稿で説明した通り、今現在、カッセ×モラエイも、三位決定戦も、テレビオンエアはないし、ネット中継は放映権でブロックされていて日本では見られない。見ることが出来た準々決勝までのモラエイは、絶好調で、圧倒的に強い。ベルギーのカッセも好調だったので、準決勝は本当に負けたのかもしれない。しかし、三位決定戦にまで負けるほど調子が悪かっただろうか。疑問は残る。)

スポーツだから、政治的対立を超えて、正々堂々と、という理想が通用しない国と国の対立がある。国が許さない。我を貫こうとすると家族にまで弾圧があるかもしれない。

イスラエルは、現在、非常に柔道が強く、各階級で世界ランク上位の選手が今回も出場している。
イランも、エジプトも柔道強豪国であり、もう一試合の準決勝はエジプトのアプデラールとムキの対戦だった。
中央アジア、ジョージア、アゼルバイジャンや、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスが今大会は非常に強く、この地域も複雑な対立を抱えている。
旧ユーゴ、内戦で複雑な対立関係にあった、ボスニア、コソボ、セルビアからも強豪がたくさん出ている。
ウクライナもロシアも昔から強豪だが、この二国も、実質、戦争といっていい紛争状態にある。
日韓の対立も今、ここ最近ないほど悪化している。

政治的対立を抱えた国選手同士が、それを超えて戦えるのがスポーツの良いところだか、政治的対立の強さがスポーツの中にまで侵入してきてしまうことも、あることなのだ。

「柔道、日本選手頑張れ、勝った、負けた」だけではない、国際政治の在り方と、選手の「参加して、勝ちたい気持ち」の相克というものを、きちんと解説し、伝えることも、昨夜の男子81キロ級は、しようと思えばできたのである。

フジテレビも、見る日本人も、スポーツを見るときは、そういうことを考えない、知ろうともしない、知りたくもない。しかし、スポーツで、普段はよく知らない国の名前に触れるときこそ、そういう国際政治の現在について学ぶ絶好の機会なのだけれどな。

丸山城四郎の対戦相手韓国のキムリーマンが、在日三世で、丸山とは中学の先輩後輩だ、国の対立などとは関係なく正々堂々とした戦いをしたのだ、ということも、解説しようと思えばできるのに、しない。

サッカーのアジアカップでのカタール×UAEの政治対立(UAEの応援団は入国もできなかったので、観客席は100%カタールの応援だったこと)なども、触れられることはなかった。

スポーツの国際大会というのは、できれば政治的対立からは自由な場であってほしいが、そうもいかない厳しい現実がある。NHK大河ドラマ「いだてん」で、まさに今、扱っているテーマでもある。そういうことをちらとでも考えさせるような、選手と国の紹介VTRだって、作ろうと思えば作れたはずである。

アホアホなフジテレビのスポーツ部門には、ちょっと難しすぎる要求だとは思うが。昨日の世界柔道男子には、そういう複雑な事情もあったことだけ、お伝えしておきます。
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マニー・パッキャオ×キース・サーマン 両者が、真の、世界チャンピオン同士の、技術、戦術、何よりも精神力・プライドを見せた名勝負でした。僕の、ここまでの「年間最高試合」 [スポーツ理論・スポーツ批評]

 パッキャオがどれくらいの伝説のチャンピオンであるか、40歳になっても限界説を吹きとばし続け、今だに常識を超えた強さを維持し続けていることは、みなさんご存知の通り。WBAの正規王者のベルトを保持している。40歳になったパッキャオは、試合全部にわたって全力で動くことが無理なのはわかっていて、休む,ゆるめるところと、本気の動きでラッシュするところのメリハリをつけて、ポイントをぎりぎり自分に有利に運ぶ計算をしながら、12ラウンドを戦うことを前提に、チャンスがあれば倒しにかかろう、という戦略で、おそらく試合に臨んだ。
 一方のサーマンも、肘の怪我でチャンピオンのまま2年ほどブランクがあったものの、29選無敗の文句のつけようのない王者。(WBAスーパー王者)普段のスタイルは、大振りのフック系パンチを、体制崩し気味から思い切って振って、当て勘の良さでKOの山を築いてきたのだが、この試合では、ストレート系のコンパクトなパンチを中心に組み立てて、パッキャオのビッグパンチを食わない様に注意しながら戦う戦術を採用した。

1ラウンド、立ち上がりはサーマンがパッキャオを何度もロープ際に追い込んで、有効打こそないものの、「押し気味」の印象で終えるか、と思ったラウンド終盤、パッキャオが右のロングジャブ(軌道が最後にフック気味にねじりこむ)を何度か当ててリズムを作ると、得意の、走るように追い込むフットワークでサーマンを攻め立てる。パッキャオの「追い込みラッシュ」にまだ対応できず、下がりながら足が揃ったところにきれいに右フックを当てられ、サーマンはダウン。効いたというより、きれいに勢いで倒された。効いていないとは言え、ダウンはダウン。このラウンドは誰がつけてもパッキャオの10-8になる。
この2ポイントを取り返そうとサーマンが無理して前に出ようとするところを、パッキャオがきれいに右からのワンツースリーを当て続ける。サーマンがかなりひどく鼻血を出したこともあり、前半はパッキャオ有利に試合が進む。
5ラウンドあたりから、サーマンがパッキャオの攻めに慣れてきて、パンチをほとんど食わなくなり、鼻血も止まって,反攻開始。ボディを当てつつ、ポイントを取り返そうとパッキャオが出てくるところに、右の強打のカウンターを何度もパッキャオ顔面に当てて、形勢を逆転する。パッキャオは明らかに体力が落ちてきており、ラウンドの最後の30秒にラッシュをかけて、ラウンドを取った印象にまとめようとするが、さすがに審判も目の肥えたファンもそんなことではごまかされない。5~9ラウンドはサーマンが有利。初回のダウンの分をほぼ挽回し、このあたりで、審判により判定が分かれそうな展開に。この流れのまま10~12ラウンドに入れば、僅差だがサーマンの勝利になるのでは、と僕も、WOWOW解説陣も思い始めた。

そして迎えた運命の第10ラウンド。立ち上がりはここまでの勢いでサーマンが押し込むが、中盤、パッキャオの左ボディフック、レバーブローがクリーンヒット。サーマンはからだをくの字に曲げて、動きが止まる。明らかに、効いている。というか、激しく効いている。普通の人間なら、倒れる。というか、どんなすごいボクサーでも、倒れる。そういう効き方をしているのがわかる。サーマンは苦悶の表情を浮かべながら素早くバックステップして逃げる。あまりの苦しさに息ができなくなったらしく、グローブを口にもっていき、マウスピースをグローブに吐き出した。それほどの強烈な効き方をしているのだが、倒れない。逃げ続けながら回復を図る。幸運なことに、パッキャオもここ数ラウンド攻め続けられたことで、体力は限界にきており、チャンスなのでラッシュしようと試みるが、うまくとどめのパンチを入れられない。1分ほど逃げているうちに、なんとか戦える状態になったサーマンは、ラウンド終盤に反撃を試みて、10ラウンドは終了。

そう、この文章、このレバーブローへの、サーマンの対応についてが、書きたかったこと。
井上尚弥の試合の分析でも書いたが、ああいうレバーブローが入ると、人間の体は、普通、絶対、立っていられない。息もできないし、吐きそうになるし、うんこまで出そうになる。痛い苦しい地獄の苦しみで、普通ならリングにはいつくばって、のたうち回る。どんなに鍛えていても根性があっても、人間の体はそうなるようにできている。井上と戦った多くの超一流世界チャンピオンたちも、例外なくレバーブローを食ったら、そうなった。

 サーマンも、パンチを食った後の反応を見れば、同じように、地獄の苦しみ痛みを感じたはずだが、サーマンは、倒れることを拒否した。ここで倒れたら、100%、負けだ。立ち上がって判定になったとしても、ここで10-8とパッキャオに取られたら、もう挽回できない。

 ここまで無敗のWBAスーパー王者には、あそこで膝をつく、マットに這いつくばるという選択肢は無かったのだ。体がそうしろといっても、意志の力で、それを拒絶したのだ。
初回のダウン、序盤の鼻血の苦しさの中の劣勢から盛り返し、今、おそらくポイントはイーブンくらい。このラウンドを10-9で耐えれば、11、12、残り二ラウンドで、なんとか勝負に持ち込める。
 そんな計算をいくらしても、あのダメージで、マウスピースを吐き出さないと息もできないほどの苦しさなのに、耐えて、反攻までするというのは、すごすぎる。見ていて、涙が出てきた。

 そして、11ラウンドは、サーマンのダメージ残存と、パッキャオの疲労が「ほぼ互角」くらい。クリーンヒットの数でサーマンが取り返したように見える。あのダウン寸前ラウンドの次のラウンドを取り返して、無かったことに。

 勝負は12ラウンドに。感覚的には、このラウンドをサーマンが10-9でとっても、微妙にパッキャオが勝ちか。サーマンは、ダウンを取りたい。前に出る。が、なんとここで、パッキャオがラッシュをかける。序盤に好調だった、右ジャブから追い込む連打を何度か見せる。パッキャオも分かっている。ここで取られると、判定がもつれる。ここをはっきりと取れば、おそらく勝てる。ここが世界戦25試合目の経験。両者、序盤のラウンドのような勢いで、パンチを出し続ける。ここまで、あれだけ苦しい試合をしながら、こんな素晴らしい戦いを最終ラウンドでしてくれる。ボクシングファンとしては、もう感動するしかない。

 そして終了のゴング。最後まで、倒そうという気迫と力のこもったパンチを、両者とも出し続けた。すごい。

 そして、もう一言、付け加えるならば、本当に効いたときにやむを得ずする以外は、汚いクリンチもない。ボディを両者ともたくさん打ったが、明らかに汚いロープローもない。パッキャオは突っ込んでいくタイプだが、頭が酷くぶつかるというシーンもほとんどない。何かそういうことが起きた時は、グローブを軽く当ててから、試合を再開する。試合前は、お約束の話題盛り上げ用に、サーマンがずいぶんとトラッシュトークもしたようだが、リング上では、実に正々堂々とした、気持ちのいい戦いだった。

 判定の結果は。

ニュースで見てね。

僕の、ここまでの、年間最高試合でした

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「反緊縮リベラルと反緊縮保守」の遠い未来。AI&BIに向けた立ち位置について。

女子ワールドカップ決勝とコパアメリカ決勝の間に小一時間、スキマ時間があるので、ツイッターで見つけた下に引用したマトリクスをもとに、「近視眼的選挙分析」ではなく、人類史的視野で、MMTをめぐるふたつの立場について考察してみます。

MMT四象限.jpg

ちなみにこのマトリクスは
池戸万作氏 ツイッターアカウント「池戸万作@mansaku_ikedo令和初の政治経済評論家です」という方が作成したものと

それにTSさん、ツイッターアカウント「T. S.@tstateiwa
浪人。高齢者医療・介護、日本経済・経済学などに関心。」
という方が政党名、個人名を追加したものです。

MMT四象限 党名人命入り.jpg

ここから私の考えたこと。
 
⑴『ホモ・デウス』とか『『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』 で語られているように、「AIが自己進化するほど高度化し、それを開発したり利益を受ける側(AIと一体化する側)と、そうでない側の格差が極端に開く未来」が来る、2050年くらいまでに来る、といったん想定します。(超・人類、おそらく死なないし、超人間的能力を獲得する側と、死ぬべき運命の、いままで通りの知的肉体的限界を持つ人類に二極分化する。)

②そこまでAIが進化すると、人間が必要とするものはAI・マシン一体化したものが自動生産するようになりますから、人間の労働は、ほとんど必要なくなります。

③そうしたAIを開発した存在(国家や企業)が、善意をもった存在の場合、人類全体にベーシックインカムや、生存に必要な物資を配給するようになるので、人間のやることは、芸術や相互コミュニケーションなど、古代ギリシャの市民(奴隷にめんどくさいことをやらせていた)のようなものになります。

④しかし、AIを開発して人類以上の存在に進化した少数者が、なんらか悪意をもった存在だった場合には、世界は映画マトリックスのような世界になり、大多数の人類は、少数の「AI一体化進化した人類」の利益のために、なんらか奴隷的存在に落ちることになります。

※こうした超進化AI的存在の支配から独立・距離を取った「鎖国的」「ユートピア的」「反進歩・反成長」的生き方が、個人としても国家としても可能か、という議論はありますが、私は、おそらく不可能であろうと思います。

⑤ 未来が③になるか、④になるかは、AIを開発する競争者(企業や国家)を、人類が倫理的にコントロールできるかどうかにかかっているわけですが、そもそも、その開発競争に参加しているかどうかによって、その影響力が変わってきます。

⑥今、この開発競争は、米国、中国、および国家ではなくGAFAのようなグローバル巨大企業がリードしており、日本は国家としても企業としても、その競争からほぼ脱落しています。

さて、下の、MMTをめぐる政治的ポジションの下二つは、そこに至るまでに、日本人がどのような立場になるべきかを示唆しています。

より説明的に言い換えると、AIと一体化する「開発者」側に立つ可能性を日本人、日本企業も追求すべきと考えるかどうかで選択するポジションが変わってきます。

左下は「他国に開発は任せて、善意によってコントロールされることを期待する。その倫理的コントロールの国際政治にのみ参加する」という生き方を、国家としてとることになります。

一方、右下は、「軍事予算を自国自前でのAI技術開発に投資することで、AI超進化競争に、日本も一枚かみ続け、そのことにより、Aiの倫理的コントロール意思決定に、より積極的に関与しよう」という立場をとることになります。

現代の最先端技術開発は、GAFAや中国巨大企業のような国家予算を超える巨額の研究開発投資をしているごく少数の企業と、
それに対抗しようとした場合には、国家予算・軍事予算をもって開発している米国、イスラエルなどの「軍事予算科学研究国家」でないと、競争できないのが現実です。
 日本がAIの超進化において重要なプレーヤーであり続けようとしたら、新しい「富国と強兵」路線を取らさせるを得ず、それはMMTによる財源制約を緩めた大胆な投資なくしては実現しない、ということで、中野剛志氏の著作のタイトルが『富国と強兵』というのは、そういう文明史的大局的視点から日本の進み方を考えたら、そうするしかない、と考えているのだと思われます。

左下の「反緊縮リベラル」の立場は、AIの進展によりBI(ベーシックインカム)を実現する論、その場合、AIを開発する存在は善意の他国,他者を期待するという意味で、受動的かつ楽観論的人間観を持っていないと成立しないと思われます。

私は経済政策的には、はっきりと「反緊縮」が正しいと考えますが、AIの進化による人類の究極の二極化の未来を考えた時に、左下ポジションを取るべきか、右下ポジションを取るべきかについては、結論を出しかねています。


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スーパーラグビー準決勝と、今年のワールドカップへの展望 [スポーツ理論・スポーツ批評]

今日はスーパーラグビー(南半球のクラブチーム最強決定戦、サッカーのチャンピオンズリーグみたいなもの、と思うとまあまあ正しい。)の準決勝二試合があった。
ジャーガーズ(アルゼンチン)×ブランビーズ(オーストラリア)
クルセイダーズ×ハリケーンズのニュージーランド対決。
南アフリカのチームはベスト4に残らなかった。

結果は、これから見る人のために書かないけれど、
ワールドカップの年のスーパーラグビーの成績は、
南半球各国の力関係をかなり正確に反映するので、とても重要。

2007年、ワールドカップで優勝したのは南アフリカ。この年のスーパーラグビー決勝は、ブルズ×シャークスの南ア対決。ブルズの選手と南ア代表選手がほとんど重なっていた、

2011年は、豪州のレッズがNZのクルセーダースを破って優勝。レッズの9番10番、ゲニア&クーパー とウイング、イオアネが豪州代表でも中心になって優勝候補と目された。が、本番でクーパーが徹底マークされ、優勝はNZに。NZの主力はクルセーダース。

2015年、ハイランダーズとハリケーンズのNZ対決で、ハイランダーズが優勝。 ワールドカップはNZが優勝。ハイランダーズのアーロンスミスが9番、ハリケーンズの、コンラッド・スミス&ノヌーのセンターコンビなど、この2チーム+チーフス、クルセーダースと、スーパーラグビーでの優勢がそのままNZの強さになった。

ちなみに、このハイランダーズの9番、アーロンスミスと出場時間を分け合って田中史明も活躍。チーフスでは8番でリーチマイケルが不動のレギュラー、そのほか、山田、稲垣、松島、ツイら、日本代表の中心メンバーが、スーパーラグビーで最も活躍したのがこのシーズン。2015ワールドカップでの日本の大活躍は、スーパーラグビーの強豪チームでレギュラーを争う活躍したことが関係あると思う。
 直近の代表強化とスーパーラグビーの叶系について思うこと。サンウルブズという、スーパーラグビーの弱小チームを無理に作って、他国に迷惑をかけてまで苦戦を重ねたこと。それなのに、結局、日本代表とスーパーラグビー・サンウルブズのメンバーの重なりが極めて小さい。そんなチームで戦うことになってしまったこと。そう考えると、サンウルブズを無理やり作ってスーパーラグビーに参戦するよりも、2015のように、代表の主力がスーパーラグビーの強豪でレギュラー争いに挑戦する流れを継続した方が、代表強化につながったのではないか、と個人的には思う。協会のサンウルブズで代表強化、という作戦は、年を重ねるごとに全然機能しなくになった、と思う。残念至極。

 今年のスーパーラグビーの話題は、ジャガーズ(アルゼンチン)の躍進。サンウルブズとは異なり、アルゼンチン代表とジャガーズのメンバーの重なりは極めて大きい。ジャガーズが過去最高成績を上げている、ということは、アルゼンチンもワールドカップで過去最高成績が期待できるのでは。

 南ア勢は、ここ数年、ライオンズが準優勝と南ア勢を引っ張ってきたが、今年はプレーオフ進出がシャークス、ブルズと勢力図が変わって、しかも初戦敗退。ここ最近、代表も不調。ワールドカップは厳しいかも。

 話は戻って、NZ対決の準決勝。10番、クルセーダースのモウンガ、ハリケーンズのボーデン・バレットは、代表オールブラックスでも10番を争うライバル。各ポジションで、代表レギュラー争いのライバルが激突して、ものすごい試合になりました。

 今年のワールドカップも、南半球はオールブラックスが頭一つ抜けている。アルゼンチンが、どこまでスーパーラグビーの好調をワールドカップに持ち込めるか、というところが見どころかと思います。
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