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城志郎勝った。について考えたこと。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

Facebookに投稿したものを転載。

柔道世界選手権二日目の感想。

柔道世界選手権、優勝した丸山城志郎と中高4年間、桐蔭学園柔道部で同期だった三男と応援に武道館に行ってきました。
(四年間と中途半端な長さなのは、城志郎が、中3で相模原の強豪、相原中に一年間転校。高校で桐蔭に戻ってきたものの、高3で沖学園に転校したため。少しでも練習環境に不満なら躊躇なく転校しちゃう勝負の鬼の親子だった。ちなみにお父さんはバルセロナオリンピック代表、今日もテレビに映ってた。)

城志郎が阿部一二三に勝ったときには、私は絶叫、うちの三男は泣いていました。城志郎には一歳年上の兄、剛毅くん、(81キロ級の世界ジュニア王者、シニアでも階級の日本王者になっている)がいて、三男は高校時代、剛毅くんの付き人をずっとやっていたので、丸山兄弟の毎朝の自主練習に一緒にくっついてやっていた。城志郎のことはずっと近くで見ていたので、感極まったのでしょう。

ちなみに決勝の対戦相手、韓国のキムリーマンは、在日三世で、相模原の相原中の一年先輩。中学時代の同門、先輩後輩対決。

ツイッター上には今の日韓関係から、心ない書き込みもありましたが、昔からの仲間同士の、正々堂々とした気持ちの良い決勝でした。キムリーマンと城志郎が中学同門なのは柔道関係者には知られていることですから、フジテレビは、こんなご時世だからこそ、ちゃんとコメントしてほしかったな。

決勝は城志郎はリラックスしてのびのびやっていたので、見ていて不安はなかった。それでも優勝の瞬間は、私はまた絶叫、三男はまた涙。

 あと、阿部の3位決定戦、相手のイタリア、ロンバルドのゴールデンスコア延長での一本(抱き分かれという技)がビデオ判定で取り消されたのは誤審というのが私の印象。少なくとも技ありはあり、その時点でロンバルドの勝ち。会場現地でもブーイングが海外勢のファン、応援団からかなり大きく出ていた。地元びいきの汚い判定と批判されても仕方がない。ロンバルドは世界ジュニア王者で、パリグランドスラムで阿部に勝っている。阿部は、丸山に三連敗、ロンバルドにニ連敗でメダル無しで終わったら、五輪代表争いから大きく後退することになり、大人の事情(JOCの五輪シンボルアスリートとなり、多くの広告主の広告塔になっている。)で、それは避けたい圧力がビデオ判定に働いたのではと勘繰られても仕方ない。(追記 日本唯一の柔道専門サイト ejudo 編集長 昨日も会場で解説をしていた古田英毅氏も、同サイト記事において、明らかに一本があったと書いている。)
 とはいえ、阿部本人には何の咎もない。試合後、阿部が悔し涙を流していたのは、丸山に負けただけでなく、ロンバルドとも判定次第では負けと言われても仕方ない内容だったことを、自分自身がよく分かっていたからだと思う。

阿部一二三本人は、柔道はめちゃくちゃ強いが、髪形も気になる、かっこもつけたい、柔道のこと以外は、そんなに深く考えない、いまどきの若者。そこがいいところだったのに、JOC、電通、そういうオリンピックを盛り上げて商売にしたい大人たちが、阿部一二三に、背負わなくてもいい重圧を背負わせている。これは、本当に可哀そうなことなのではないか。五輪シンボルアスリートの自分が、負けて、五輪代表を逃すことなどあってはならない。取材だの撮影だの、練習以外の雑事にも引っ張りまわされる。いままで私は「メディアも全柔連も、阿部がすでに代表に決まったかのように扱う」ことを、城志郎応援の立場から批判してきたが、阿部一二三側の立場にたっても、それは20歳そこそこの若者に、背負わなくてもいい負担、重圧を押し付けているのではないか。そこから解放してあげて、とにかく、勝負に集中できる環境を作ってあげるべきではないかと思います。

 そんな中、妹、阿部詩は、異次元の強さでした。

三男が阿部兄妹に共通する、かなり特異な、他に類のない技術的特徴を観戦しながら解説してくれたので、それは今度ブログに書こうかと思っています。


この投稿に電通先輩Nさんからの質問
「よく知らなかったけど、遅咲きだというので丸山選手を応援してました。最初に投げを食ってかろうじて足で着地して、だいぶ痛そうだったけど、中盤からは痛みが消えたのかアドレナリンが出たのか、急に体が前に出るようになって勝つ雰囲気が出てきたように見えました。」

それへの私の回答
「 あまりにドラマチックな試合でしたが、なんで急に動けるようになったか、私はこう想像しています。膝の①内副側靭帯を痛めた(が断裂はしていない)と同時に、②昔断裂して手術した十字靭帯の古傷が痛んだのだと思います。私も十字靭帯古傷と、手の親指靭帯損傷古傷を持っていて、何かの拍子にぐきっとやってしまうと激痛でしばらく動けないのですが、あれ、しばらくするとなんとか動けるようになるんです。「靭帯断裂」なら、もう動けないですが、古傷再発激痛だと、そうなんです。そうであるにせよ、激痛の数分間を、指導を2個で、相手の技も食わずに耐えきるのは常人のできることではありません。そういえば、私と三男は、城志郎が十字靭帯断裂の大けがをした何年か前の東京グランドスラムも二人で観戦応援していました。三男は内副側靭帯の完全断裂もしていますが、十字靭帯と違って、うまく治療すると、手術をしなくても回復、再建するのです。今回の優勝で、年末の国内のグランドスラム(大阪)で、城志郎が優勝すると、おそらく五輪代表に内定すると思います。それまでに膝を完治させてほしいなあ。」
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テレビでは全く放送されなかった男子81キロ級の複雑な国際政治的背景。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

昨日の男子81キロ級は、柔道と国際政治について、考えさせる非常に難しい状況だった。日本人だけを取り上げるような放送ではなく、男子の決勝トーナメントとともにその状況をきちんと伝える、という放送も、作ろうと思えば作れたのだ。そのことについて、解説します。

 優勝したのがイスラエルのムキ。決勝の相手はベルギーのカッセだったが、この階級の昨年世界王者、今回も優勝候補筆頭だったのは、イランのモラエイ。世界ランクもモラエイが1位、ムキが2位。

昨夜は、イランのモラエイは準決勝でベルギーのカッセに敗れたため、イスラエルのムキとは対戦することはなかった。

 イラン政府は、政治的宗教的に対立関係のあるイスラエル選手との対戦を認めていない。そのため、長くなりますがモラエイ選手についてのWikipediaから引用します。

「グランドスラム・アブダビでは準決勝でベルギーのマティアス・カスと対戦するも、開始早々に左足首を挫いたとして棄権負けになった。しかし、IJFからは今回の一件が決勝でイスラエルのサギ・ムキとの対戦を避けるための虚偽申告だと判断されることはなかった[7][8]。なお、2018年には世界ランキングの年間1位となった[9]。2019年のグランドスラム・パリでは準々決勝で世界ランキング209位に過ぎないカザフスタンのラスラン・ムサエフに開始早々一本背負投で敗れたが、続く準決勝でイスラエルのサギ・ムキと対戦することを避けるための意図的な敗戦だったとの疑いがもたれている。モラエイはその後の3位決定戦でリオデジャネイロオリンピックで優勝したロシアのハサン・ハルムルザエフを小外刈で破った直後に右膝を負傷したというアピールをして医務室に向かったため、今大会で2位になったムキが待つ表彰台に姿を現すことはなかった。この一連の事態にIJF会長であるマリウス・ビゼールはTwitter上で、選手がいかにして敗れたかを説明するのは容易なことではないので、注意深くこのケースを分析して、この問題の正しい解決方法を見出すように努めると述べた。その一方で、選手の望みと国の方針が齟齬を来たす場合、自身や家族の立場を考慮すればモラエイが国の方針に背くのはほとんど不可能だとの見解も示した[10]。グランプリ・フフホトでは決勝で藤原を背負投で破って優勝したが、グランプリ・ザグレブでは準決勝でカナダのアントワーヌ・ヴァロア=フォルティエに技ありで敗れて3位だった[1]。東京で開催される世界選手権に出場予定だったものの、イスラエルの選手と対戦する可能性が少なからずあることから、イスラエル選手との対戦を容認しないイラン政府の政策に従わざるを得ず出場しないとも報じられたが、結果として参加することになった。」

これだけ複雑な事情を抱えていることを考えると、イランのモラエイが、昨夜の準決勝は、きちんとベルギーのカッセと戦った上で負けたのか、それとも勝つとムキと対戦せざるを得ない。それは国が許さない。だから負けたのか。というようなことも、きちんと試合を見て確認したくなります。モラエイは三位決定戦にも負けたのも、ムキと同じ表彰台に乗ることが許されていないからだったのか、ということも、上のWikipediaでの解説によると、可能性としては否定できない。(しかし、さきほどの投稿で説明した通り、今現在、カッセ×モラエイも、三位決定戦も、テレビオンエアはないし、ネット中継は放映権でブロックされていて日本では見られない。見ることが出来た準々決勝までのモラエイは、絶好調で、圧倒的に強い。ベルギーのカッセも好調だったので、準決勝は本当に負けたのかもしれない。しかし、三位決定戦にまで負けるほど調子が悪かっただろうか。疑問は残る。)

スポーツだから、政治的対立を超えて、正々堂々と、という理想が通用しない国と国の対立がある。国が許さない。我を貫こうとすると家族にまで弾圧があるかもしれない。

イスラエルは、現在、非常に柔道が強く、各階級で世界ランク上位の選手が今回も出場している。
イランも、エジプトも柔道強豪国であり、もう一試合の準決勝はエジプトのアプデラールとムキの対戦だった。
中央アジア、ジョージア、アゼルバイジャンや、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスが今大会は非常に強く、この地域も複雑な対立を抱えている。
旧ユーゴ、内戦で複雑な対立関係にあった、ボスニア、コソボ、セルビアからも強豪がたくさん出ている。
ウクライナもロシアも昔から強豪だが、この二国も、実質、戦争といっていい紛争状態にある。
日韓の対立も今、ここ最近ないほど悪化している。

政治的対立を抱えた国選手同士が、それを超えて戦えるのがスポーツの良いところだか、政治的対立の強さがスポーツの中にまで侵入してきてしまうことも、あることなのだ。

「柔道、日本選手頑張れ、勝った、負けた」だけではない、国際政治の在り方と、選手の「参加して、勝ちたい気持ち」の相克というものを、きちんと解説し、伝えることも、昨夜の男子81キロ級は、しようと思えばできたのである。

フジテレビも、見る日本人も、スポーツを見るときは、そういうことを考えない、知ろうともしない、知りたくもない。しかし、スポーツで、普段はよく知らない国の名前に触れるときこそ、そういう国際政治の現在について学ぶ絶好の機会なのだけれどな。

丸山城四郎の対戦相手韓国のキムリーマンが、在日三世で、丸山とは中学の先輩後輩だ、国の対立などとは関係なく正々堂々とした戦いをしたのだ、ということも、解説しようと思えばできるのに、しない。

サッカーのアジアカップでのカタール×UAEの政治対立(UAEの応援団は入国もできなかったので、観客席は100%カタールの応援だったこと)なども、触れられることはなかった。

スポーツの国際大会というのは、できれば政治的対立からは自由な場であってほしいが、そうもいかない厳しい現実がある。NHK大河ドラマ「いだてん」で、まさに今、扱っているテーマでもある。そういうことをちらとでも考えさせるような、選手と国の紹介VTRだって、作ろうと思えば作れたはずである。

アホアホなフジテレビのスポーツ部門には、ちょっと難しすぎる要求だとは思うが。昨日の世界柔道男子には、そういう複雑な事情もあったことだけ、お伝えしておきます。
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マニー・パッキャオ×キース・サーマン 両者が、真の、世界チャンピオン同士の、技術、戦術、何よりも精神力・プライドを見せた名勝負でした。僕の、ここまでの「年間最高試合」 [スポーツ理論・スポーツ批評]

 パッキャオがどれくらいの伝説のチャンピオンであるか、40歳になっても限界説を吹きとばし続け、今だに常識を超えた強さを維持し続けていることは、みなさんご存知の通り。WBAの正規王者のベルトを保持している。40歳になったパッキャオは、試合全部にわたって全力で動くことが無理なのはわかっていて、休む,ゆるめるところと、本気の動きでラッシュするところのメリハリをつけて、ポイントをぎりぎり自分に有利に運ぶ計算をしながら、12ラウンドを戦うことを前提に、チャンスがあれば倒しにかかろう、という戦略で、おそらく試合に臨んだ。
 一方のサーマンも、肘の怪我でチャンピオンのまま2年ほどブランクがあったものの、29選無敗の文句のつけようのない王者。(WBAスーパー王者)普段のスタイルは、大振りのフック系パンチを、体制崩し気味から思い切って振って、当て勘の良さでKOの山を築いてきたのだが、この試合では、ストレート系のコンパクトなパンチを中心に組み立てて、パッキャオのビッグパンチを食わない様に注意しながら戦う戦術を採用した。

1ラウンド、立ち上がりはサーマンがパッキャオを何度もロープ際に追い込んで、有効打こそないものの、「押し気味」の印象で終えるか、と思ったラウンド終盤、パッキャオが右のロングジャブ(軌道が最後にフック気味にねじりこむ)を何度か当ててリズムを作ると、得意の、走るように追い込むフットワークでサーマンを攻め立てる。パッキャオの「追い込みラッシュ」にまだ対応できず、下がりながら足が揃ったところにきれいに右フックを当てられ、サーマンはダウン。効いたというより、きれいに勢いで倒された。効いていないとは言え、ダウンはダウン。このラウンドは誰がつけてもパッキャオの10-8になる。
この2ポイントを取り返そうとサーマンが無理して前に出ようとするところを、パッキャオがきれいに右からのワンツースリーを当て続ける。サーマンがかなりひどく鼻血を出したこともあり、前半はパッキャオ有利に試合が進む。
5ラウンドあたりから、サーマンがパッキャオの攻めに慣れてきて、パンチをほとんど食わなくなり、鼻血も止まって,反攻開始。ボディを当てつつ、ポイントを取り返そうとパッキャオが出てくるところに、右の強打のカウンターを何度もパッキャオ顔面に当てて、形勢を逆転する。パッキャオは明らかに体力が落ちてきており、ラウンドの最後の30秒にラッシュをかけて、ラウンドを取った印象にまとめようとするが、さすがに審判も目の肥えたファンもそんなことではごまかされない。5~9ラウンドはサーマンが有利。初回のダウンの分をほぼ挽回し、このあたりで、審判により判定が分かれそうな展開に。この流れのまま10~12ラウンドに入れば、僅差だがサーマンの勝利になるのでは、と僕も、WOWOW解説陣も思い始めた。

そして迎えた運命の第10ラウンド。立ち上がりはここまでの勢いでサーマンが押し込むが、中盤、パッキャオの左ボディフック、レバーブローがクリーンヒット。サーマンはからだをくの字に曲げて、動きが止まる。明らかに、効いている。というか、激しく効いている。普通の人間なら、倒れる。というか、どんなすごいボクサーでも、倒れる。そういう効き方をしているのがわかる。サーマンは苦悶の表情を浮かべながら素早くバックステップして逃げる。あまりの苦しさに息ができなくなったらしく、グローブを口にもっていき、マウスピースをグローブに吐き出した。それほどの強烈な効き方をしているのだが、倒れない。逃げ続けながら回復を図る。幸運なことに、パッキャオもここ数ラウンド攻め続けられたことで、体力は限界にきており、チャンスなのでラッシュしようと試みるが、うまくとどめのパンチを入れられない。1分ほど逃げているうちに、なんとか戦える状態になったサーマンは、ラウンド終盤に反撃を試みて、10ラウンドは終了。

そう、この文章、このレバーブローへの、サーマンの対応についてが、書きたかったこと。
井上尚弥の試合の分析でも書いたが、ああいうレバーブローが入ると、人間の体は、普通、絶対、立っていられない。息もできないし、吐きそうになるし、うんこまで出そうになる。痛い苦しい地獄の苦しみで、普通ならリングにはいつくばって、のたうち回る。どんなに鍛えていても根性があっても、人間の体はそうなるようにできている。井上と戦った多くの超一流世界チャンピオンたちも、例外なくレバーブローを食ったら、そうなった。

 サーマンも、パンチを食った後の反応を見れば、同じように、地獄の苦しみ痛みを感じたはずだが、サーマンは、倒れることを拒否した。ここで倒れたら、100%、負けだ。立ち上がって判定になったとしても、ここで10-8とパッキャオに取られたら、もう挽回できない。

 ここまで無敗のWBAスーパー王者には、あそこで膝をつく、マットに這いつくばるという選択肢は無かったのだ。体がそうしろといっても、意志の力で、それを拒絶したのだ。
初回のダウン、序盤の鼻血の苦しさの中の劣勢から盛り返し、今、おそらくポイントはイーブンくらい。このラウンドを10-9で耐えれば、11、12、残り二ラウンドで、なんとか勝負に持ち込める。
 そんな計算をいくらしても、あのダメージで、マウスピースを吐き出さないと息もできないほどの苦しさなのに、耐えて、反攻までするというのは、すごすぎる。見ていて、涙が出てきた。

 そして、11ラウンドは、サーマンのダメージ残存と、パッキャオの疲労が「ほぼ互角」くらい。クリーンヒットの数でサーマンが取り返したように見える。あのダウン寸前ラウンドの次のラウンドを取り返して、無かったことに。

 勝負は12ラウンドに。感覚的には、このラウンドをサーマンが10-9でとっても、微妙にパッキャオが勝ちか。サーマンは、ダウンを取りたい。前に出る。が、なんとここで、パッキャオがラッシュをかける。序盤に好調だった、右ジャブから追い込む連打を何度か見せる。パッキャオも分かっている。ここで取られると、判定がもつれる。ここをはっきりと取れば、おそらく勝てる。ここが世界戦25試合目の経験。両者、序盤のラウンドのような勢いで、パンチを出し続ける。ここまで、あれだけ苦しい試合をしながら、こんな素晴らしい戦いを最終ラウンドでしてくれる。ボクシングファンとしては、もう感動するしかない。

 そして終了のゴング。最後まで、倒そうという気迫と力のこもったパンチを、両者とも出し続けた。すごい。

 そして、もう一言、付け加えるならば、本当に効いたときにやむを得ずする以外は、汚いクリンチもない。ボディを両者ともたくさん打ったが、明らかに汚いロープローもない。パッキャオは突っ込んでいくタイプだが、頭が酷くぶつかるというシーンもほとんどない。何かそういうことが起きた時は、グローブを軽く当ててから、試合を再開する。試合前は、お約束の話題盛り上げ用に、サーマンがずいぶんとトラッシュトークもしたようだが、リング上では、実に正々堂々とした、気持ちのいい戦いだった。

 判定の結果は。

ニュースで見てね。

僕の、ここまでの、年間最高試合でした

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スーパーラグビー準決勝と、今年のワールドカップへの展望 [スポーツ理論・スポーツ批評]

今日はスーパーラグビー(南半球のクラブチーム最強決定戦、サッカーのチャンピオンズリーグみたいなもの、と思うとまあまあ正しい。)の準決勝二試合があった。
ジャーガーズ(アルゼンチン)×ブランビーズ(オーストラリア)
クルセイダーズ×ハリケーンズのニュージーランド対決。
南アフリカのチームはベスト4に残らなかった。

結果は、これから見る人のために書かないけれど、
ワールドカップの年のスーパーラグビーの成績は、
南半球各国の力関係をかなり正確に反映するので、とても重要。

2007年、ワールドカップで優勝したのは南アフリカ。この年のスーパーラグビー決勝は、ブルズ×シャークスの南ア対決。ブルズの選手と南ア代表選手がほとんど重なっていた、

2011年は、豪州のレッズがNZのクルセーダースを破って優勝。レッズの9番10番、ゲニア&クーパー とウイング、イオアネが豪州代表でも中心になって優勝候補と目された。が、本番でクーパーが徹底マークされ、優勝はNZに。NZの主力はクルセーダース。

2015年、ハイランダーズとハリケーンズのNZ対決で、ハイランダーズが優勝。 ワールドカップはNZが優勝。ハイランダーズのアーロンスミスが9番、ハリケーンズの、コンラッド・スミス&ノヌーのセンターコンビなど、この2チーム+チーフス、クルセーダースと、スーパーラグビーでの優勢がそのままNZの強さになった。

ちなみに、このハイランダーズの9番、アーロンスミスと出場時間を分け合って田中史明も活躍。チーフスでは8番でリーチマイケルが不動のレギュラー、そのほか、山田、稲垣、松島、ツイら、日本代表の中心メンバーが、スーパーラグビーで最も活躍したのがこのシーズン。2015ワールドカップでの日本の大活躍は、スーパーラグビーの強豪チームでレギュラーを争う活躍したことが関係あると思う。
 直近の代表強化とスーパーラグビーの叶系について思うこと。サンウルブズという、スーパーラグビーの弱小チームを無理に作って、他国に迷惑をかけてまで苦戦を重ねたこと。それなのに、結局、日本代表とスーパーラグビー・サンウルブズのメンバーの重なりが極めて小さい。そんなチームで戦うことになってしまったこと。そう考えると、サンウルブズを無理やり作ってスーパーラグビーに参戦するよりも、2015のように、代表の主力がスーパーラグビーの強豪でレギュラー争いに挑戦する流れを継続した方が、代表強化につながったのではないか、と個人的には思う。協会のサンウルブズで代表強化、という作戦は、年を重ねるごとに全然機能しなくになった、と思う。残念至極。

 今年のスーパーラグビーの話題は、ジャガーズ(アルゼンチン)の躍進。サンウルブズとは異なり、アルゼンチン代表とジャガーズのメンバーの重なりは極めて大きい。ジャガーズが過去最高成績を上げている、ということは、アルゼンチンもワールドカップで過去最高成績が期待できるのでは。

 南ア勢は、ここ数年、ライオンズが準優勝と南ア勢を引っ張ってきたが、今年はプレーオフ進出がシャークス、ブルズと勢力図が変わって、しかも初戦敗退。ここ最近、代表も不調。ワールドカップは厳しいかも。

 話は戻って、NZ対決の準決勝。10番、クルセーダースのモウンガ、ハリケーンズのボーデン・バレットは、代表オールブラックスでも10番を争うライバル。各ポジションで、代表レギュラー争いのライバルが激突して、ものすごい試合になりました。

 今年のワールドカップも、南半球はオールブラックスが頭一つ抜けている。アルゼンチンが、どこまでスーパーラグビーの好調をワールドカップに持ち込めるか、というところが見どころかと思います。
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コパアメリカ チリ戦を見て、久保建英、レアル移籍、将来への不安 [スポーツ理論・スポーツ批評]

今日の試合を見て、久保建英について、ちょっと不安に思ったことを忘れないように書いておこうと思う。ツイッター上に「今日の久保は、アルゼンチン代表でのメッシみたいな感じで苦しんでいた」という感想があって、それは僕も感じていたことなのだ。
 あと、この前、「(韓国、FIFA U20 MVPの)イ・ガンインは中村俊輔タイプだが、久保はちょっと違うタイプ」と書いたとき、実は「香川真司タイプ、ドルトムント・クロップ時代の全盛期、香川真司タイプ」と書こうかなあ、とあのとき思ったのだけれど、ちょっと自信がなかったので、(そんなに久保のプレーをちゃんと見ていないから)、もやっとごまかしたのだが、今日のプレーを見て、やはりそうなんではないかと思った。
 バルセロナのメッシや、ドルトムント全盛期の香川というのは、すごく点を取ったけれど、いわゆるセンターフォワードのように点を取るわけではなく、また、たった一人ですべてを打開するわけではなく、(メッシなんかはそうしているように見えるけれど)、球は触っていなくても、まわりが連動して動いている中で、得点シーンを作り出すタイプの選手なんだよなあ。中盤で一回、ボールを受ける→そのままドリブルする、としても周りはメッシと連動して駆け上がりながらいろいろポジションを取る。初期全盛期は、シャビやイニエスタや、もう一人のアタッカーやダニオアウベスが。MSN時代だとネイマールとスアレスが。
 今期のクロップ、リバプールが、フィルミーノを真ん中で気の利く、スペ-スづくりのフォワードにすることで、両ウイングのマネとサラーが鬼のように点を取るっていう、そういう「チームとしての仕組み」の中で、点を取るタイプ。
 クリスチャーノ・ロナウドのようにシステムと関係なく、本当に一人で点を取るとか、アグエロのように、一番、前にいるから、とにかく俺に入れたらなんとかするぜ、みたいなタイプの選手ではないんだよな。久保もメッシも香川真司も。

 だから、周りの選手のシステムが機能しない代表のアルゼンチンのメッシ、マンチェスターUに移籍した香川が苦しんだのは、そういう仕組みがないところで、一人で頑張れ、一人で打開して点を取れるだろうって期待されてしまうからなんだよな。
 メッシは、一見、どれだけ一人ですべてを打開しているように見えても、実は「周囲3人4人がオートマティックに連動する中で、あたかも一人ですべてを打開しているかのように点を取る」選手なんだと思う。
 スアレスは、ものすごく頭の良い選手で、バルサに行ってから、そういう風にメッシを活かすための動きをとてもよくしてくれていて、それが先日のウルグアイ代表の試合でも出ていたんだよな。

 久保はバルセロナのユースで、そういうサッカーを体に入れてきたわけで、レアルに行って、周りがそういう風には動かない中で、実力が発揮できるのかな。

 日本代表でも、基本的に鹿島出身のフォワードって、柳沢、鈴木の昔から、大迫まで、そういう中盤の選手か点を取るための動きがすこく上手い。
(日韓ワールドカップの日本代表の得点は、ほとんどがMFの得点だけれど、そのまたほとんどが柳沢との連携で生まれている。柳沢が怪我で欠場したトルコ戦で、いきなり攻めが機能しなくなった。)
大迫がいて南野がいて、そしてサイドから酒井宏樹が気の利いた上下動をしてくれてっていう中でなら、久保も代表で結果が出せると思うけれど、今日のような状況では、なかなか厳しい。今日、そういう形でシュートまで持って行けたのは、後半一回だけ。前半、個人技できれいに抜いてチャンスを作ったのが一回あったけれど、そのあと、周囲が誰もいなかった。DAZNの出したスタッツ見ても、一対一の勝率は中島の方が高かった。

 俊輔やイ・ガンインは、基本的に「仕組みを作る側」の役目を果たせば評価される選手なわけだけれど、久保やメッシや香川は、(実は仕組みを利用しながら)、あたかも仕組みが関係ないかのように、自分で点を取らない限り、評価されない選手、なんだよね。
 イ・ガンインや俊輔は、「仕組みづくり+コーナーキック+フリーキック」全体で、何点得点に絡んだか、で評価OKなんだけれど、メッシや久保や香川は「システム利用しながら、自分で打開して何点取ったか」でないと、評価されない選手なの。

 そういう意味で、久保を世界にアピールするならば、周りの仕組みがオートマチックに動く「大迫 南野 堂安 酒井宏樹 柴崎」システムの、堂安の替わりに入れてあげるようにしないと、「久保すごい」っていう結果は、なかなか出ないと思う。
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FIFA U20 三位決定戦、イタリア×エクアドルを見ながら考えたこと [スポーツ理論・スポーツ批評]

コパアメリカ始まり、コパアメリカ開幕戦、ブラジル×ボリビアを観戦中なのだが。(朝、眠かったので、生放送では半分以上寝ていたので、夕方、今、見直している.)

FIFA U20三位決定戦を今朝観戦していておもったこと。大会を全試合もれなく観戦していると、イタリアもエクアドルもそれぞれもう7試合目なので、ほぼ全選手、顔なじみというか、キャラ立ちして認識できている。解説、実況コンビも同様に、選手を「親しみ」をもって認識している。単にプレーの特質だけではなく、性格、切れやすいとか、真面目だが不器用とか、そういうことまで含め、あるいは今大会の流れの中でうまくいっている選手、フラストレーションを抱えている選手、そういうことも含んだ解説になっていく。

例えば

エクアドルにはキンテーロという中盤の底の、先発だったり、交代で出てきたりする選手かいるのだが
①ユニフォーム シャツを、ただ一人、ズボンの中に入れている。
②いつも思いつめたように真面目な顔をしている。
③大柄なのだがちょっと猫背で、真面目だが視野が狭い感じの、不器用なプレーをする。守備は一生懸命するのだが、展開するとかそういうクリエーティビティは無い。
④守備を一生懸命気合をいれてするあまり、マークする選手と、すぐ、もめる。小競り合いになる。

今日も、試合終盤、0-0のまま、攻め合いになる中で、キンテーロ投入。解説者苦笑しながら、「ここで、キンテーロですかあ」
この後、イタリアの右サイド、これも交代で入ってきた、見るからに血の気の多いペッレグリーニと何度も小競り合いになる。

NBAでもそうだが、スポーツを集中して見る楽しみというのは、チーム全体のパフォーマンスが、そうした交代選手まで含めた、選手ひとりひとりの、プレーの特徴だけでなく、性格や、その大会の中での流れ、思いのようなものの蓄積の集積として見えてくるということなのだよなあ。

という意味では、コパアメリカ開幕戦、まだ、選手それぞれに顔なじみ感がなく、(ブラジル・セレソンは所属チームそれぞれではおなじみの顔だが、このチームとしては見るのは初めてだから)、それを頭にいれようと思いながら、眺めている状態。ボリビアチームは初めて見るし。
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コパアメリカ開幕記念、南米中堅国、内弁慶と南米の歴史について [スポーツ理論・スポーツ批評]

今回は日本代表が参戦することで注目を集めているコパアメリカですが、私、個人的には、ユーロとコパはワールドカップより試合のレベルが平均して高い、面白い大会と位置付けています。

ユーロは「ひとつも弱いチームがない」ということなんですが、コパアメリカは「南米の田舎の国、地元ではすごく強い」大会、というのが、面白いんですね。

田舎の国、というと、すんごい差別発言のようですが、南米の国というのは、ワールドカップでも、主催国・会場が南米(北中米含め)でやる大会は強い、ヨーロッパでやる大会は弱い、という基本傾向があります。

南米の国が、欧州開催のワールドカップで優勝したのは1958年大会のブラジルの一回だけ。あとは全部欧州の国が優勝しています。
逆に、南米の国が、南米開催のワールドカップで優勝を逃したのは、この前のブラジル大会でドイツに優勝されちゃった一回だけ。
USA大会・メキシコ大会、アメリカの属国・日韓大会、優勝はブラジル・アルゼンチン・ブラジル、南米の国なんです。

要するに、南米の国は、欧州では力を発揮しにくい、ということか。

ブラジル、アルゼンチンのような強国でさえそうなので、チリ・パラグアイ・ペルーあたりの中堅国は、ワールドカップでは、なかなか上まではいかない。せいぜいベスト16くらいなわけ。しかし、こうした南米中堅国が、コパアメリカでは強い。ワールドカップ南米予選で、アルゼンチンやブラジルが苦しむことがよくありますが、なるほど、こういうことか、と思います。

南米の国というのは、征服者スペイン人など欧州系の末裔、被征服者インカ帝国住民や原住民の末裔、奴隷として連れてこられたアフリカ系の人の末裔、その混血、という人種民族構成におよそなっている。
 アルゼンチンなんかは、19世紀に「白人国家化」という国家政策がとられ、さらに欧州白人の移民をどんどん入れたので、白人比率が非常に高い、ウルグアイも、白人比率の高い国である。「南米の中の欧州」的意識が高い。
 
 ブラジルの成り立ち、ポルトガルのブラジル植民では、原住民は狩猟採集生活の原住民しかいなかったところを一気に征服したので、インカ帝国を滅ぼされて征服された末裔の国々とは、国民意識のありようが他とずいぶん違うようである。白人黒人原住民の混血が進んでいるし、人種差別もそんなにない。

 サッカーの「内弁慶」度合いで言うと、インカ末裔系の住民比率が高い国の、内弁慶度が高いように思われる。ペルー、チリ、ボリビアあたり。パラグアイはインカ帝国勢力圏外だったけれど、パラグアイも原住民比率は高い。

 南米の歴史の中での、ヨーロッパとの心理的距離が遠い、あるいは「征服-被征服」という歴史的背景が色濃く国民意識に残る国ほど、内弁慶度が高くなるのかなあ、というようなことを、いろいろ考えたりする。

 ブラジル×ボリビア戦の、ボリビア選手を見ながら、そんなことも考えたりします。
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NBAファイナル カズンズとクック、悔しいなあ。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

NBAファイナルの感想を、忘れないうちに書いておこう。

 ラプターズ、ウォリアーズ、どちらもいいチームで、どっちを応援するというのでもない、という気持ちかなあ、と対戦に入るまでは思っていたのだが、いざ始まってみると、やはりここ数年、見続けてきたウォーリアーズの方を自然に応援する気持ちで見ていた。

 ケビン・デュラント(以下KD)加入以降の「ビッグスリーそろい踏み」ウォリアーズは「ちょっと強すぎる」と思っていたので、彼が負傷欠場で、スプラッシュブラザーズ、ステフォン・カリーとクレイ・トンプソンの二人を軸に戦う、「スティブ・カーが初めに作ったウォーリアーズ」原型に戻ったことも、応援する気持ちを加速させたようである。

予想通り、KD抜きのウォーリアーズとラプターズは、戦力的にちょうど互角。いいぞ、と思っていたら、なんとクレイトンプソンが第二戦終盤で負傷。その試合は勝ったものの、第三戦はクレイトンプソン欠場。KDとトンプソン、ビッグスリーのうち二人を怪我で欠いて、第三戦大敗。

第四戦、トンプソンが戻ってきたのに、カワイレナード絶好調で、またも大敗。

1勝3敗と追い詰められたウォリアーズ、第5戦に、なんと、KDが復帰。第1クオーターだけで11点取る。やっぱりKDがいると圧倒的に強いなあ、と思った瞬間(ラブターズファンは、やばいKDがいると、歯が立たないなと思った瞬間)、、、、なんと第1クォーター11分で、KD、 アキレス腱断裂で戦線離脱。ラプターズファンが、怪我をした瞬間、拍手をして大喜びしたことで、後でメディアや選手たちからも批判されたけれど、気持ちはわかる。KDがいたら、絶対勝てないと思わせるほど、わずか11分だけれど、KDはすごかった。

KDがいなくなっても、その11点分のアドバンテージが効いて、なんとか第5戦はウォーリアーズが勝って、2勝3敗。

そして迎えた第六戦。
本拠地オラクルアリーナは、今年で取り壊しが決まっており、47年の歴史、最後の試合になる。けがをしたKDへの思いもある、ということで、ウォーリアーズは、ファンも選手も「絶対負けられない」気持ちで戦いに臨んだ。

この試合、エース、カリーは不調で、前半わずか六点。しかしクレイトンプソンが絶好調で、スリーポイントを次々しずめて、互角の勝負が続く。

第三クオーターも、トンプソンがスリーポイントを立て続けに決めて、リードを奪う。そして、敵のボールをスチールして、トンプソンがリングにドライブをかける。ラプターズのグリーンがブロックしようと後ろから追いかける。

トンプソンは、普段はほとんどダンクをしない。リングにドライブしても、軽くレイアップを決める選手た。
しかし、後ろからグリーンが激しく追いかけてくるのを感じたトンプソンは、ブロックされないように、ダンクを選んだ。これが悲劇を呼ぶ。
空中でグリーンにぶつかられたトンプソンは、着地でバランスを崩して、膝を痛めてしまう。私の見たところ、内腹側靭帯を伸ばした、という感じの怪我。立ち上がれない。スタッフの方の助けを借りてロッカールームに下がっていくトンプソン。
ファールコールが吹かれていたから、フリースローをトンプソンがしなければ、ゲームは再開しないのだ。怪我で出場不可能なら、他の選手がフリースロー。しかしそうすると、トンプソンはもうゲームに戻れない。

 カリーは、遠くに座り込んで、トンプソンが退場するところを見ている。呆然としている、というよりも、頼れる相棒が、第四クォーターにはいないこと、自分がすべてを背負うことを覚悟した表情でトンプソンを見送った。

 しかし、ロッカールームに下がる廊下の途中で、トンプソンが急に反対を向いてコートに戻り始める。
 ひざの靭帯が「切れてはいないが酷く傷んでいる状態」というのは、実は怪我をした後、数分間は、なぜか動けてしまうのだ。(私も柔道で膝靭帯を怪我した後、その試合だけは続けられた、という経験がある。)

トンプソンは、とにかくフリースローだけは打って、第四クォーター行けるかどうかは、そのあと考えよう、と思ったのだ。

トンプソンがコートに戻ると、オラクルアリーナは大歓声。その中、トンプソンはフリースローを、こともなげに二本決める。

 しかし、そのあと、けがの治療に下がったトンプソンは、そのままコートに戻ることは無かった。

 第四クォーター、KDも、クレイトンプソンもいないウォーリアーズ。いまだ調子の戻らない、たつたひとりのエース、カリー。彼を助けようと脇役プレーヤーたちが奮闘する。はじめにNBAチャンピォンになったときに、カリーを差し置いてMVPになったベテランのイグダーラが本領を発揮して、次々と得点を重ねて、なんとか互角の勝負を続ける。

 そんな中、このけが人だらけのシリーズの。、ウォーリアーズの戦いのカギを握った、二人の選手を紹介したい。

一人は。センタープレーヤーのカズンズ。前所属のペリカンズ、サクラメントキングズ、では一試合25点平均を取るチームの中心選手で、期待されて今シーズンからウォリアーズに移籍してきたが、プレーオフ前に怪我で離脱し、ファイナルで復帰して来た。チームメイトが全員健康であれば、このチームではそれほど大きな責任は負わされない存在だったのが、最後の最後に、攻めの中心を担う立場になった。

もうひとりはポイントガードのクイン・クック。2017-18シーズン、カリーが怪我をしたときに大活躍をして、重要なベンチメンバーになっていたのだが、このシリーズは、プレッシャーに負けてか、ほとんどシュートを決められていない。

話は戻って、この第四クォーター終盤、カリーにディフェンスが集中する中、この二人、カズンズとクックがシュートを打つシーンが多くなる。カズンズはなんとか何本か決めるが、クックはとうとう決めることが出来なかった。

試合は、最後、カリーが逆転のスリーを外したところで勝負あった。そのあと、ファール、フリースローと時間をつぶすように試合は続いた後、ラプターズの初優勝が決まった。

 そこに至るところで、第四クォーターの勝負所で、クックのシュートが一本でも決まっていれば、という印象が強かった。

 中心選手がここまで怪我をしてしまっては仕方がない、ともいえるが、もしここで活躍すれば、クックの選手としての評価は、決定的に上がったのに。人生の、ものすごく大きなチャンスを逃してしまう瞬間を見たようで、切ない気持ちになった。

 勝者の、ラプターズ側にも、いろいろなドラマがてんこ盛りであったシリーズなのだが、やはり、ウォリアーズに共感して見ていた気持ちに沿って、忘れないうちに、感想書きました。
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FIFA U20 ニュージーランド×コロンビア PKの新ルールについての感想、考察。 [スポーツ理論・スポーツ批評]

FIFA U20、今大会で僕がいちばん気に行っていたNZ代表が、コロンビアと、延長まで1-1、PK戦も七人目までいく熱戦の末、敗れてしまったのですが。本当に素晴らしい内容の試合でした。
コロンビア相手に、互角以上の素晴らしい戦い。何度も何度も素晴らしい崩しをし、粘り強く守り、本当にいいチームでした。
Jスポーツ解説&実況も言っていた通り、かつての日本の小野世代がこのワールドユースで準優勝し「黄金世代」と言われ、
世界に日本サッカーが認められていく人材を多数輩出したように、このNZ代表は、NZ黄金世代として、活躍していくと思います。

 さて、そのPK戦ですが、今回から新たに採用された「厳密ルール」さえなければ、おそらく、NZが勝っていたと思います。その事件を中心に、
今回、テスト的に採用されている新ルールについて説明したいと思います。
今大会、FIFAは、これから世界のサッカー界に適用を検討している新ルールを、今大会でいくつか試しています。
①ゴールキック時に、ペナルティエリアに味方がいても蹴っていい。その選手にパスしてもいい。
(今まではペナルティエリアから味方が出るまで蹴ってはいけなかった。)→クイックにリスタートでき、バックの選手からボールを展開することも可能になった。
②選手交代時、退出選手は一番近いタッチラインからすぐ出ないといけない・→時間稼ぎ、ゲーム遅滞の防止。
③ハンドの反則において、いったん選手の体、頭などにあたったボールが跳ね返って手に当たったものはハンドとしない。など、細かに規定。

ここまでは、まあいいのだが。

PKの際は、キーパーはキッカーがボールを蹴るまで、少なくとも片方の足をゴールライン上に置いておかないといけない。(前だけでなく、後ろでもいけない。)
これに違反した場合、キーパーにイエローカードが与えられ、PKはやり直しとなる。

これって、PK戦で二回、この違反をすると、イエロー二枚でレッドカード退場になり、キーパーじゃない選手がキーパーをやらなければいけないってことになるのだが。

グループステージはPK戦は無いから、昨日の試合が初めてのPK戦での適用だった。(どの試合化は忘れたけれど、試合中のPKでは、一回、足が動いて取り消し&カードが出た)

NZのキーパー、フル代表経験もあるワウドは絶好調で、二本連続、見事にセーブ。三人目も完璧に止めた。と思ったところ、足が動いたとして、やり直し&イエローカードが提示された。
今までの基準で言えば、全く問題ないタイミングと足の動きだったのに、違反を取られ、カードまでもらったためにワウドは動揺、委縮してしまい、それ以降、全く止められるタイミングで飛べなくなってしまった。

これではPK戦、勝ちようが無い中で、キッカーが踏ん張っていたが、結局、七人目ではNZキッカーが外してしまい、負けてしまいました。

このルールを全年齢全世界で展開した場合、今まで長年やってきたタイミングで飛ぶキーパーは、二回に一回は、イエローカード、もらっちゃうと思います。
そして、厳密に適用すると、キッカーが吹かして外すか、かなり真ん中よりにミスキックしない限り、ほぼ決まっちゃう、セーブの可能性が大きく落ちると思うなあ。
キッカー有利、キーパー不利になり過ぎると思う。
もう少し、よく検討工夫した方がいいと思います。
例えば「キッカーのキックの一歩手前の足が踏み込んだら動いてOK」とか、なんとか。

少なくとも、この反則でのイエローカードはきつすぎる、やり直しだけで十分たと思いました。二回連続したら、イエローカードとか。PK戦の場合は三回目でイエローカートとか。そうでないとキーパーが委縮して、思い切ったセーブができなくなります。
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井上尚弥 ロドリゲス 戦(WBSS準決勝) 超マニアック 技術分析 [スポーツ理論・スポーツ批評]

短い試合だったので、全編をスロー再生して三回見た。ダウンシーンはスロー再生、いくつかのカメラ角度映像で、30回見た。そして分析考察した感想。

論点① 1ラウンドは井上は劣勢だった。WOWOW解説浜田剛史氏、西岡氏ともにロドリゲス10-9井上と採点している。私もその意見に賛成。どう劣勢だったかを細かく分析する。

まっすぐに打つジャブ&ストレートの打ち合いで、ロドリゲスが明確に有利。リーチがロドリゲスの方が長いだけでなく、タイミング的に「先の先」を取るのがロドリゲスはうまい。これは、井上が打とう、という気持ちになった瞬間に、ジャブを先に出して当てる、という技である。「先の先」をとって、ジャブを三回は当てている。ジャブをまっすぐ伸ばした距離で1ラウンド目はほぼ戦ったために、ロドリゲスが有利であった。
 加えて、ジャブが効果的だったために、ジャブのフェイントを右にダッキングした井上に、左ジャブから左フックに切り替えて軽く当てたり、左ジャブに体とガードを開いて左にスウェイして逃げる井上の癖をとらえて、井上の頭が移動する先に右ストレートを予測して打って、軽く当てる、というポイントを稼いだ。ダメージは全くなかったものの、攻撃の主導権をロドリゲスが取ったのは明らかであった。
 井上が主導権、先手を取って攻撃しようとしたリードブローの左ジャブはあたらず、また半分くらいはリードブローを左を、ジャブではなく、フックを打ったが、これは当たらなかった。いきなり右から放つパンチについては、一回、有効打になったものの、力んでストレートともフックともつかないパンチとなり、ほとんどがかわされた。

 ただし、一発目のロドリゲスのジャブをかわして、フックの間合いまで詰め、両者とも腕を90度より鋭角に曲げたままフックを振り合う展開になると、井上が明らかに有利であることを、井上も感知した。これはロドリゲスの方がリーチが長いためだけではない。フックの打ち方の技術的にロドリゲスがフック系のパンチはアウトサイド(相手のガードの外側)からかぶせるようにしか打てないので、井上は用意にブロックやダッキングで防御できるのに対し、井上は、フック系のパンチも相手のインサイド(ガードの腕、グローブの間)からも打てるという、技術の優劣がはっきりあることがわかる。このことが、2Rの、一回目のダウンシーンにつながる。

論点② 初めのダウンの左フックと、井上の際立ったパンチ力の秘密。

2ラウンド立ち上がり、井上はジャブストレートのワンツーを軽くヒットして「機先を制した」後は、フックの間合いにぐんぐんと入って、フック系ショートパンチを放ち合う展開に持ち込むと、一気に井上有利となった。
 はじめのダウンシーンも、フック間合いでの相手のフックをダッキングした後、右ボディをインサイドから当てた返しで、左フックを振った。このダウンを奪った左フックの打ち方が独特で、パンチの初動は肘を深く曲げたフックであるが、するどく相手のインサイドに拳をねじ込むと、肩を返して、インパクトの瞬間は肘が伸び、肩がロックしているストレートのようなインパクトの仕方になっている。
 井上の、階級の常識を超えた強烈なパンチ力については誰もが認めるところだが、その要因を分析したものをあまり読んだことがない。「すごい筋力」とか「石のように拳が硬くて痛い」とかいう幼稚な描写でごまかしているものがほとんどである。私は、井上のパンチインパクトの瞬間の肩、肘といった関節が瞬間的に「剛体化」ロック・ブロッキングして、下半身から加速された力が、相手に伝わって、打った側に戻らないことに、常識はずれのパンチ力の源泉があると考えている。パンチを打っても、関節がインパクトの瞬間にゆるんでいれば、力が自分に戻ってしまって、相手に伝わるエネルギーは小さくなる。陸上競技の走り高跳び選手の踏切や、短距離選手の足の接地の仕方の理論として「ブロッキング理論」というものがあるが、あのような、力を100%伝える瞬間的剛体化の感覚、技術が、井上は際立って優れているために、パンチ力が人並み外れて強いものと考えられる。
 井上はフック系パンチが空振りしたときには、当然インパクトしない=「ロック・ブロッキング」の機会はないので、普通に、軌道に従って「ブン」と空振りするわけだが、当たった時には「クッ」と全身を剛体化、特に肩関節を剛体化することで、全身の力を相手に伝え切り、自分の方に力を戻さないのである。その特徴が強烈に出た、初めの、顔面への左フックであった。

論点③ 二度目のダウン奪取、効いたのは左ボディフックであって、右のボディアッパーではない。

試合後の各新聞。メディアの記事で非常に気になったのが、二度目のダウンを奪ったパンチを、右ボディ(アッパー気味のフック)としているメディアが八割を占めたこと。以下に各メディアの記事をつけておくが、その一個前の左ボディフック(外側からレバーを打っているパンチ)をダウン要因としているのは、日刊スポーツのみ。ベースボールマガジン社は両方のパンチに言及しつつ、(連続写真付き。)どちらがより効いたかは判断していない。
他のすべてのメディアは右ボディーのみがダウン要因と記述している。

 二種類の角度からのダウン映像を、スロービデオで各30回見たが、初めの左ボディが非常に強くインパクトしている。ご存知の通り、左フックのレバーブローは当たってから、1秒ほどの時間差を持って、効く。「当たる」「耐えられるかな、と一瞬思う」「やっぱりものすごく痛い」「倒れる」という効き方をするものである。
 この「一瞬耐えられるかな」と思っているタイミングで、返しの右ボディアッパーが、軽く掠る(かする)ように、みぞおちやや右側からあばらを掠るように当たっている。掠るように当たっても、効くことはあるから、こちらが全く効いていないわけではないと思うが、当たってから倒れるまでのタイミングと決めの強さから見て、
左レバーブローが効く→時間差で激痛が走るタイミングで返しの右ボディが掠る→倒れる、ということが起きたものと思われる。

 二度目のダウンを「右フックで」とのみ書いたメディア、記者の目は節穴ではないか、と私は思う。

 なぜなら、あの苦しみ方は、みぞおちではなく、左フックレバーが効いたときの苦しみ方だから。レバーに打撃や蹴りを食った経験がない人にはわからないと思うし、ネットでいろいろ調べてみても、解説しているページを書いている人自身に、その経験がなさそうなので補足しておく。(私は<
恥ずかしながら、三度ほどある。)
喰った瞬間は「ん、食ったけど耐えられそう」と思った次の瞬間に、激しい痛みともに、下半身の力が抜ける。体をまるめないと耐えられない不快な痛みが広がる。「ううううううう」という声が、全く我慢できずに出続ける。肛門の力も抜けるし、上からも下からもいろいろ出そうになるが、実際には出ない。くの字に体を曲げてのたうちまわるしかない。とにかく激しく痛くて苦しい。
 ということで、あれは、初めの左ボディフックレバー打ちでこの状態になりかけたところに、追いうちの右フックがかすって当たったのである。

論点④二度目のダウンをしながら、鼻血を出しながら、苦し気に首を横に振ったロドリゲスをバカにしてはいけない。
あれが「もうできない、だめだ」という意思表示だとしたら、ロドリゲスは立たなかっただろう。あれは、コーナーに向けて、「タオルを投げるな、まだやるから、試合を止めるな」と伝えている表情と仕草なのだ。ロドリゲスのすごいところは、三度目のダウンをした後でさえ、カウント8で立ち上がって、まっすぐ立って、表情も戻して、まだ戦えるという意志を示していること。レフェリーが止めたが、ロドリゲス自身はギブアップしていない。

 以上のことから、2ラウンドで終わった試合で、井上の強さだけが際立つ試合だったが、ロドリゲスは1ラウンドには見事な戦い方をして主導権を握ったし、2ラウンドは倒されながら、チャンピオンとしてのプライドを見せた。立派な試合だったのである。


参考資料、各メディアの2回目ダウンについの記述

日刊スポーツ
「2回開始すぐにワンツーでのけぞらした井上は「当たれば倒せる」と狙いすませたカウンター気味の左フックで最初のダウンを奪った。鼻血を出したロドリゲスに左ボディーで2度目、さらに起き上がってくる相手にワンツーからの左ボディーで3度目のダウンを奪ってTKO勝ち。」

共同通信
「互角の初回を終えると、2回早々に井上が一気に仕掛ける。リング中央で右ボディーから顔面へ左フックを返すコンビネーションで痛烈なダウンを奪う。再開後、右ボディーですぐにダウンを追加。ロドリゲスはあまりの衝撃に戦意を喪失したかのごとく自身のコーナーへ顔を向けて首を振った。何とか再開に応じたものの、ロープに詰められ左ボディーで3度目のダウン。」

ベースボールマガジン社
「井上尚弥が、またしてもやってくれた。2ラウンド、左フックでロドリゲスをなぎ倒すと、左フック、右アッパーカットと、目にも止まらぬボディブロー2連打でふたたびIBF王者にキャンバスを味わわせた。  
左ボディフックか右ボディアッパーへつなぐと、ロドリゲスは2度目のダウン。「あのボディで勝利を確信した」

サンスポ
「2回だった。まずは左フックでダウンを奪うと、今度は右ボディーで2度目のダウン。最後はワンツーで3度目のダウン。たまらずレフェリーが試合をストップさせる圧勝だった。 」

スポニチ
「2回に豪打が火を吹いた。30秒過ぎに返しの左フックで最初のダウンを奪うと、49秒で右ボディーを突き刺して2度目のダウン。さらに連打から左ボディーで倒すと、レフェリーが試合を止めた。」

THE ANSWER編集部
「2ラウンドだ。開始30秒、左のショートフックでまずダウンを奪うと、右のボディーで2度目のダウン。ロドリゲスも立ってきたが、一気に詰めて3度目のダウン。膝をつかせると、もはや戦う意思は残っていなかった。

東スポ
「2R開始早々、前に出た怪物は強烈な左フックが空振りに終わるや、返しの右ボディーから狙い済ました左フック一閃。顔面にヒットすると、ロドリゲスは腰から崩れるようにダウンした。この一撃で鼻から出血したIBF王者に対し、井上は一気にラッシュ。さらに右のボディーで2度目のダウンを奪って、最後は圧巻の左ボディー。IBF王者を3度ダウンさせて圧勝した。」

ロイター
「井上は1回からキレのある動きを披露。2回の序盤に左フックで初のダウンを奪う。さらに強烈なボディーで2回目のダウン、連打で3回目のダウンを奪ったところでレフェリーが試合を止めた。」

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